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第155話

「本当は俺の気持ちとしては弟を警察につきだしたいくらいなんですが」 「警察なんてだめだ」  俺の顔が青ざめる。 「そう言うと思ってました」  大賀がため息をつく。 「いいですか?勝手にあんたを好きになって薬を盛って犯そうとした。これはれっきとした犯罪行為です。分かりますよね」 「冬は俺と半分しか血が繋がっていないのを知っていたそうだ。だからきっとこんなこと」  俺は唇を噛みしめた。 「半分しか血が繋がっていないからって無理やり犯していい理由にはならないでしょ?ああ、もう、本当に」  大賀が目を閉じ、首を振る。 「大賀ごめんな。怒ってるよな?」  大賀が目を剥いて俺を見る。 「怒っているかですって?ええ、もうそりゃ怒りまくってますよ。あの抱き枕をボコボコに殴ってしまいたいくらいにね」 「それは止めて欲しい」  ニャンダの抱き枕を指さされ、泣きそうになる。  そんな俺の表情を見て、大賀がぷっと吹き出した。 「冗談ですよ。唯希さんが大切にしている物を壊すわけないでしょ?あと、怒っているって言ったけど、唯希さんにじゃないですよ。簡単にあんたに騙された自分自身と唯希さんの性格を知っているくせに、ああいう行動にでた弟に腹をたてているだけですから」 「俺の性格?」  大賀が頷く。 「唯希さんは優しくて、こんな目にあっても弟を庇うだけじゃなく、自分のことを責めてしまう。弟だって、唯希さんのそういう性格を長年一緒に育っていれば知っていたはずでしょ。こんなことをしたら唯希さんがどれだけ傷つくか、少し考えれば分かるはずなのに」 「大賀」  心の中ではまだ自分を責める声と冬を庇う声が入り乱れていた。  俺が半分しか血が繋がっていないから。  俺がキスを簡単に受け入れたから。  冬もきっと留学の件で追いつめられてあんなことを。  でもそんな声は自分が傷ついているのを大賀に言いあてられた瞬間、全て消え、俺の体から力が抜けた。

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