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第200話
雫がぽたりぽたりと便箋に落ちる。
大賀は俺の手を握り、涙を拭ってくれる。
「弟、なんだって?」
俺は大賀に便箋を渡した。
「読んでいい?」
頷くと、大賀が手紙の文字を目で追い始めた。
読み終わった大賀が顔を上げ、俺の肩を抱いた。
「唯希さん、大丈夫?」
「うん。ただこれで良かったのかなって……俺が冬にもっと何かできたんじゃないかって」
冬も俺を傷つけたが、俺も冬を傷つけた。
冬が俺のことを兄と思えなくなった原因の一端は自分にもある気がした。
「俺には今大賀がいるけれど、冬にはきっと誰もいない。こうやって痛みを分け合える相手が」
すすり泣く俺を大賀が抱きしめる。
「冬君もきっと誰かを見つけるよ。俺が唯希さんと出会えたように」
そうかな。そうだといいな。
そう願いながら、俺は大賀に胸板に額を擦り付けた。
大賀を自室に残し、泣きはらした目でリビングに戻ると、母が驚いた。
「ごめん。冬の手紙に感動しちゃって」
母が俺の手にそっと冷えた保冷剤を渡す。
俺はそれを目に当てた。
「中身はもちろん読んでないけど、そんなに泣けるなんて、留学前に冬は今までのお礼でも唯希に伝えたのか?お前たち仲の良い兄弟だもんな」
母の言葉に一層泣けてくる。
俺達が本当に仲の良い兄弟だけの関係だったらどれだけ良かったか。
「冬も留学するし、唯希は大切な人を家に連れて来てくれた。こうやってみんな成長していくんだな」
しんみりとした声で母が言う。
俺は目を閉じたまま母の言葉を黙って聞いていた。
冷やしたせいか俺の目の腫れは父が帰ってきたときにはひいていた。
父にもきっちりと挨拶をした大賀と四人で食卓を囲む。
今日のメインは俺の好物のミートボールスープで後はサラダと買ってきたパンが並んでいる。
大賀はフランス料理のフルコースでもでてくるのかと思っていたと俺にこっそり漏らし、料理を見てあからさまにほっとした表情を浮かべていた。
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