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第81話

「先程はすみません、つい。悪気は全くなかったとはいえ」 背筋をピン!と伸ばし、正座する隣の有坂に拓磨は謝罪した。 「ああ、いえ。とんでも御座いません。息子からはしょっちゅうのことで御座います」 「息子さんいらっしゃるんですか?」 向かい側の結月が尋ねると、ええ、と有坂は頷いた。 「男ばかり三兄弟でして。特に一番下の子供は反抗期の真っ只中で御座いますから。しょっちゅう、ジジイだとか」 「3人共に男の子なんですね」 史哉が感心したように目を丸くした。 「ええ、一番上が21歳で会社員を勤めております、次男は18歳で大学に通っておりまして、一番下が中1で13歳で御座います」 「えっ。結月と同級生ですか?」 史哉が尋ねる。 「ああ、いえ、早生まれですし、結月様より1つ下です。それに、結月様は中2で御座います。全く、少しは結月様を見習って欲しいものです」 そう言うとまるで緑茶を嗜むように、両手で持ったコップを傾け、ワインを口に含む。 「...ずっと気になってるんですが、いいですか?」 コップを置き、今度は慎重に拓磨は有坂に切り出した。 「ええ、勿論で御座います」 「気になってるだけなので、気分を害さないでくださいね。...普段もそうして、こう、背筋伸ばして正座して食事とかなされるんです?あと、口調も、なんていうか、御座います、とか丁寧な口調なんですか?」 背筋を伸ばし、正座をし、両手でワインの入ったコップを持ったまま、有坂が口を真一文字にし、固まった。 「そんな訳がないだろう、な、有坂」 穂高が有坂のフォローに回る。 「左様で御座います。ずっと堅苦しい訳では御座いません。さすがの私も私生活までとなると疲れます」 変わらず、姿勢を崩さない、有坂に、 「あー...少しはリラックスしていいぞ、有坂」 隣の穂高が有坂を優しく促した。

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