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再会
あの日からまた忙殺されていた。
バーBitterに行きたいと思いながら、いつもいるのだろうか?と考えたりしていると、時間だけが過ぎていく。
こうしていても埒があかない。
結婚して妊娠して幸せなはずだ。
でも夜バーでアルバイトをしている。
それとも転職?
もう知りたいことだらけになっていた。
21時に仕事が終わる日に、意を決して一人で行ってみる事にした。
だが、その日は大河はいなかった。
代わりにマスターと話ができた。
俺が、大河の大学の後輩だと言うと、来店したことを伝えようと言うので、それはサプライズにして欲しいから、出勤する曜日を教えてくれと尋ねた。
マスターはすっかり信じてくれて、大河の出勤曜日を教えてくれた。やはりアルバイトなのだ。
俺はその曜日に出直す事にした。
言われた曜日、俺は23時まで仕事をしていたが、その足で、Bitterに向かう。
ドアを開けると、カウンターに大河が立っていた。
俺はカウンターの大河の前に座った。
マスターが気がついてくれて、会釈をする。
「いらっしゃいませ・・・」
「ジントニックをください」
俺はそう答えた。
マスターに言われて、大河が飲み物を作る。
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ・・・」
そう言って下がろうとする。
それでは俺の目的が達成されない。
「あの、一緒にどうですか?
お好きなもの飲んでください」
そう咄嗟に言っていた。
ちょっと離れてみているマスターが大河に目配せをする。
「はい・・。ありがとうございます」
客の勧める飲み物を断れるわけがない。
本当は色々聞きたかったが、なかなかこの空間では聞きにくかった。俺はたわいもない俺の仕事の話を一方的にした。どうにか忙しくしている事。
女に振られてばっかりなこと(本当は振っているのだが・・・と言うより興味がない)
時間が24時になろうとしていた。
大河がご馳走様ですと言う。
どうやら上がりのようだ。
俺も会計をし、しばらく店の外で待った。
きっと大河が出てくるはずだ。
店の裏口らしいドアが開いた。
「お疲れ様でしたー」
大河の声がする。
後ろから追っかけた。
大河は走って逃げようとする。
俺は腕を引っ張って、路地に引っ張り込んだ。
強引に口づけをする。
大河は暴れた。
だが、俺と大河の体格は俺の方が少しいいくらいだ。力尽くで抑え込んだ。
そのまま唇を奪い続ける。舌を強引に入れる。
大河の舌に開けたピアスが俺の舌に絡まった。
一気に大河の力が抜ける。
「治・・。ごめん。本当にごめん・・・」
そう言って涙を浮かべている。
俺はもうそれ以上何も言えなかった。
ただ、路地裏で抱きしめた。
「治、明日時間ある?もしあったら、
昼の15時に済世会病院に来てくれくれないか?」
そう言われた。
「済世会病院?わかった。
明日の昼15時だな。いくよ」
不思議には思ったが、久しぶりに会った大河がそう言うのだ、何かあるのだろう。
ちょうど昼15時ならいける。
明日は夜に用があるだけだ。
「またじゃあ明日」
そう大河は言ってタクシーで帰っていった。
泣いていた・・・。
でもまだピアスしてくれていた・・・。
それだけで、この日Bitterに来た甲斐があったと思った。
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