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ダニエル・ドノヴァンの証言 2

 サムは手始めに七組のファイルを机上に並べた。ダニエルのものを含め、すべてジョエルの被害者と思われる失踪人のリストからピックアップされたファイルだ。サムはそれぞれのファイルに重ねるように、何十枚もの写真を並べながら話し始めた。 「あなたから向かって右からブライアン・リバー、ケイシー・スミス、ジョナサン・マーティン。中央があなた、ダニエル・ドノヴァン。あなたの左隣がルーファス・ケント、エイドリアン・ボーディ、そしてネイサン・ユリス。彼らは皆三十代から五十代の白人男性であり、関係者の話から全員がゲイで、一度はジョエル・クラウスの診療所に受診歴がありました。ドノヴァンさん、あなた以外は皆、行方不明という扱いになっています。最初の失踪者であるブライアン・リバーが、おそらく最初の被害者だと思われます。今から六年前、クラウスが二十二歳の時の犯行です」  サムは一度写真を並べる手を止め、対面のダニエルに視線を移した。俺の時と同様に心ここにあらずといった雰囲気だ。 「……ドノヴァンさん。これからお見せする写真は、あなたにとってショックを受けるであろう、グロテスクな遺体の写真です。切断面が見えているものもあります。我々としてはこれらの写真を見たあなたの証言が欲しいのですが、気分が悪くなったらすぐに言ってくださいね」  そう断りを挟んだ上で、サムはまた写真を並べ始めた。  ダニエルが逮捕され彼の証言を基に、ジョエルの診療所兼住居が徹底的に捜索された。  ジョエルの両親は彼が幼い頃に離婚し、母方に引き取られたが、ジョエルが大学在学中に病死した、とされている。ジョエルは優等生であったが、幼少期から動物の死骸や骨に魅了されていたと、当時のクラウス家を知る関係者は語った。  よって診療所兼住居はジョエルただひとりのものであり、隠し扉から通ずる階段を降りた先にあった地下室は、連続殺人鬼ジョエル・クラウスのギャラリーと化していた。  俺たちが最初に目にしたものは六枚もの額装された被害者たちの写真。それらはまるでインテリアのように地下室の壁に飾られていた。ダニエルの証言から、彼らは皆絞殺され、その後ジョエルの気が済むまで死姦されたという。  額装された写真はすでに事切れた被害者たちを、ジョエルが死姦しながら撮影されたものだった。  さらに地下室を調べると、まるでカルテのように被害者ひとりひとりのファイルが発見され、中には彼らのバラバラに解体された写真や、生首だけの写真、切り取られた性器の写真などが保存されていた。手口がエスカレートするにつれ、写真だけではなく死姦中や解体中の映像も記録として残されていた。  六番目の被害者とされるネイサン・ユリスのファイルには、パーツごとに解体された遺体が、黒いビニール袋へ袋詰めされるところまでを収めたSDカードが貼り付けてあった。  しかしどれだけ捜索しても、被害者の遺体の一部どころか髪の毛一本、血の一滴すら見つからなかった。

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