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第184話
昼休み、城崎と一緒に食堂で飯を食った。
何故いつものカフェレストランじゃなく食堂かというと、俺の業務が少し押して社外へ行くには時間が厳しかったから。
でも場所を間違えたと後悔しているところだ。
「城崎くん、彼女いるって本当?」
「いい感じなの?いつから?」
「誕生日は何頂いたんですかぁ〜?」
城崎は若い女性社員たちに囲まれて、質問の嵐に会っている。
流石に無視するわけにはいかずに適当に相槌を打っているようだ。
「にしても、すごいな……。」
「本当にねぇ〜。」
「ち、千紗?!」
千紗がミニランチセットを持って、さりげなく俺の隣に腰掛けた。
目の前で質問攻めにあう城崎を見ながら苦笑している。
「いつしたの?城崎くんの交際発表。」
「今朝。朝礼前くらいに城崎がプレゼント断る口実に…」
「じゃあ一瞬で情報回ってきたんだ。もうみんな知ってるよ?今まで敢えて恋人を作らないんだと思われてた城崎くんに彼女ができたって聞いて、みんな次の彼女の座を狙って必死なわけ。」
「へ、へぇ……。」
「綾人、絶対にバレちゃ駄目だよ。殺される。」
「見ればわかる…。」
城崎はうどんを買っていたけど、このままじゃ伸びるなぁと、俺は自分の天丼と城崎のうどんを交換して先に食べ始める。
俺が女だったら目敏い女の子達は俺を睨みそうなもんだけど、さすがに男同士だから何とも思われなかったようだ。
「優しいね。」
「伸びたうどんなんか食いたくねぇじゃん。」
「綾人のそういう気が利くとこ、人気あるんだよ?」
「へ〜。」
「何その間延びした返事。前までなら食いついてたくせに。ま、今はそれだけ城崎くんに夢中ってことだもんね。」
千紗はニヤニヤ笑って俺を小突く。
元カノに現恋人との仲を弄られるのは、なんか複雑な気持ちだ。
「綾人は何あげたの?」
「教えない。」
「じゃあヒントちょうだい。今、城崎くん身に付けてる?」
「どうだか。」
「もぉ〜。」
千紗は城崎をジッと観察する。
そして分かったのか、目をキラキラさせて俺を見た。
「分かった!時計でしょ?」
「…………なんで?」
「綾人の好みっぽい。」
「城崎っぽくないかな…?」
「似合ってるけど、綾人の趣味でしょ。」
「そんなに?」
「これでも2年付き合ってたんだから、好みくらい把握してるつもりだけど?」
涼真にも当てられたし、千紗にも当てられた。
俺ってそんな分かりやすいのか?
仲が良いからって思いたい…。
「腕時計って…。昔の綾人じゃ考えられないよね。こんな重いプレゼント。」
「そうか?」
「んー。ネックレスとかくれたけど、そんな深い意味考えてなかったでしょ?」
「まぁ…。」
「やっぱりね。綾人はあんまり束縛するタイプじゃなかったし。でも城崎くんに腕時計あげたのには意味があるんでしょ?」
「うん……。」
「いい意味で変わったよ、綾人。あ、もうこんな時間だ。じゃあね。」
千紗は「御馳走様。」と早々に食べ終えて食堂から去って行った。
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