30 / 34
27 キャンプ初日
6月初旬にキャンプはやって来た。
以前は夏休みを使って行われていたらしいが、数年前から初夏の平日に変更になったのだという。
3泊4日の日程で組まれているこの合宿中は、文化学部の学科ごとに分けられた4人ずつの班で行動を共にすることになっており、人数の少ない音楽科や美術科などは合同班も作られている。
初日は移動日なので夕食のみ、2・3日目は午前中に講義で午後からプレゼン準備、4日目はこの合宿のまとめとなるプレゼンと、その結果を元にしたディベートという日程になっている。
その間、バーベキューや自由時間等の学生間の交流を深める時間も設けられ、文化学部全体としての大きな行事の1つだった。
昼に大学を出発し夕方頃に着くと、2階建ての綺麗なコテージが班に1つずつ割り当てられた。
「うっひょー!このコテージすっごいじゃん!」
玄関を開けた歩が嬉しそうに声をあげる。
1階は広いリビングダイニングにキッチン、浴室と洗面所、トイレなどが揃っている。
2階は2段ベッドが2つ置かれた寝室と談話コーナー、ベランダなどがついていた。
「ねえねえみんな!すっごく綺麗な施設だよ!」
「すっげー…こんなとこ貸し切るとかうちの学科何なの?先輩から話は聞いてたけど、綺麗過ぎてちょっとびっくりだわ」
「学生が使う設備じゃないよね。…カズちゃんと寝れそう?」
「まあ…ベッドも寝心地はよさそうだから努力はしてみる、かな」
4人それぞれが感想を口にしながらも、わくわくした気分は抑えられないといった表情をしていた。
「今日は各班自由に夕飯でいいらしい。食材は管理棟から取ってこれるし、今日はゆっくり過ごそうか」
「管理棟ってどこなんだっけ」
佑に聞かれ、拓馬は日程表と地図を見ながら管理棟の位置を確認する。
「コテージが建ってる場所から少し離れたところ。歩いて10分くらいかな」
ベッドは上が歩と和樹、下が佑と拓馬に決まり、各自荷物を入れて思い思いの場所で寛いだ。
話し合いの結果、キャンプらしく初日はカレーを作ろうという事に決まり、準備を始めようということになる。
食材は管理棟の横にある食材庫に常備されており、コテージの利用者は自由に使っていいことになっている。
また、食器や調理器具類は全てコテージのキッチンの戸棚に揃っていた。
「管理棟の場所も分かったし、俺食材取りに行ってくるよ。炊飯器も必要だから1人だと大変かもだし、誰か一緒行かない?」
「あ、じゃあ俺行くよ。さっき教えてもらったし」
「じゃあ俺とカズはこっちでお皿洗って準備してるね!」
「おう、よろしく!」
拓馬と佑が食材を取りに、その間歩と和樹はコテージに残り、食器や調理器具類を洗って準備をすることになった。
ともだちにシェアしよう!