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4 商談~KoBa商事
社長が出て行かれて10分が経った頃、内線で受付から連絡が入る。
20分後に商談予定のKoBa(コバ)商事の代表取締役、小林社長が、もう1階の受付に着いたという。
すぐに向かうと返事をし、仕事用の携帯電話で社長へと電話を掛けた。
「社長、時間には少し早いですが、KoBa商事の小林様がお見えだそうです」
『分かった。総務部にいるからすぐに向かう。会議室にお通しして珈琲をお出しして』
「畏まりました」
小走りで受付へと向かうと、小林様が受付のソファに座り待っている後ろ姿が見えた。
軽く貧乏揺すりをしている足下を見るからして、少し苛立っている様子だ。
「小林様、お待たせ致しました。社長秘書の本郷と申します。会議室へ御案内致します」
「いや、私の方が早く着きすぎてしまったからね。すまないね」
先程の長谷川社長がとても穏やかな印象があったからか、眼光が鋭く笑みも見せずに椅子に座ったままそう言う小林様に妙に冷たい印象を受けてしまう。
この方は本当に今日商談のために来ているのだろうか…そんな印象すらも持ってしまう、あまりにも丁寧さのない対応だ。
しかしここで怯んではならないと思い直し、努めて平静を保ったままで名刺交換を終え、会議室へと案内した。
「社長の大楠がすぐ参りますので、こちらでお待ち下さい」
珈琲と洋菓子を出し、小林様がカップに一口口を付けたところで、戸がノックされる音がして社長が入って来た。
「失礼いたします。代表取締役の大楠理人と申します。お待たせして申し訳ありません」
「小林だ、よろしく頼むよ」
長谷川社長との商談と同じように、名刺交換を終えて話し始める2人。
KoBa商事は、弊社の新しい社内業務用のプログラムの導入を検討している会社で、大楠グループだけでなく幾多の会社の重役と商談を繰り返しているという情報がある。
恐らく競合他社のプログラムをいくつも見比べて、どの会社のものを導入するか品定めをしているのだろう。
社長もそれを知ってか、先程とは違い、商談は少しピリピリとした緊張感のある空気だ。
話が始まるとすぐに、社長からちらりと目配せをされる。
ハセガワとの商談と同じく、ここからは1対1でじっくり話をしたいということだろう。
正直小林様との商談は上手くいくのか心配になってしまうが、俺が社長の心配をしたところで何かできるかというと、そういう訳でもない。
俺はすぐに一礼すると会議室を出、きっと疲れて帰ってくるであろう社長のために珈琲を淹れる準備をしようと思ったのだった。
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