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今、この世界では色を奪い合ってあちこちで戦争が繰り広げられている。 ある国のお偉いさんが、その辺にある物から色を綺麗に抜き取ってしまう装置の発明に成功した。 それによって様々な国の色が盗まれ、その技術を他の国も一斉に真似するようになり、あちこちから色という色が無くなってしまって…… どの国にも、それぞれその場所特有の色がある。 例えば、僕らの住んでいる処。 小さな村だけど、ここにしか咲かない綺麗な花があった。 名前は〝エリアージュ〟。 真っ赤な色からオレンジ・紫色と、まるで夕焼け色のようにグラデーションする花びらを持つ美しい花。 他に例を見ない色を持つから、その花の色は〝エリアージュ色〟と呼ばれた。 でもーー 僕が生まれた時には、既にその花の色は奪われ今はただモノクロの寂しげな花が咲くのみとなっていた。 こうやって、世界はどんどんカラフルなものから、モノクロへと変わっていってて。 色を奪う対象は、だんだん〝物〟から〝人〟へと変わった。 人の皮膚の色・髪の色・目の色…そういったものが次々と無条件に奪われてきて。 こうして、戦争は起こり始めたのだ。 色を奪われた人たちは〝カラーズ〟と呼ばれている。 カラーズに関して国はまだ研究中で、これから自発的にまた色が蘇るのか、それとももう一生そのままなのか、未だ謎に包まれている。 だから、カラーズの人々は基本的には許可なく外を出歩く事ができない。 もしかしたら、カラーズが健常者に移る可能性があるからだ。 (馬鹿馬鹿しい) この国の人たちはそれを信じ切ってカラーズには近づかないけど、僕は何を言ってるんだろうと思う。 カラーズなんか移るわけがない。 だって、もし移るなら僕は真っ先にアルからカラーズを貰ってる。 この病院や村は、カラーズに関しての迫害が何もない。 だから、僕もアルと同じ病室にされたんだ。 『俺、今までずっと1人部屋だったらすげぇ嬉しい』 アルの母は、カラーズだ。 カラーズの親から生まれた子は、何故かカラーズになる。 これだけは、科学的に証明されているらしい。 だから、アルの家族は色々な病院を転々として迫害を逃れながら、最近この村に来た。 『俺、アルド。アルでいいよ。多分見た目からして俺の方が年上…だよな? 俺19。 お前は?』 『ぼ、僕はエアーシュ。エアーって呼んで。僕は17』 『そっか、よろしくなエアー。ってかお前、その足どうしたんだよ、まさか踏み外したのか?』 『ぁ、そ、そうなんだよねっ。 僕、最近カラーズになっちゃって、まだ慣れなくて…それで……っ!』 咄嗟に嘘をついた。 アルの目には全てが白黒に見えるから、バレる事は無い。 アルは『そうか、大変だったな』と頭を撫でてくれて。 それだけで、胸がキュゥッと鳴った。

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