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第18話
白亜を空気の部屋に入れたマーメはニコニコしながら鼻歌交じりに白亜の足をマッサージする様になでていた。
「お兄さんに立場を奪われそうって聞いたけど…… 大丈夫?」
白亜は聞こうかどうか迷った口を開く。
自分とは逆だが、同じような目にあったばかりで白亜の気も重たくなる。
出来れば忘れてしまいたい。もう全て忘れてただのハクとして生きて行きたい。
王とは孤独なものだった。
戻りたいとも思っていない。
家臣も民も、すべてが自分を崇め、大事にしてくれたが、白亜は神ではなく、人なのだ。それが孤独で寂しかった。
だから唯一血のつながった弟を可愛がって心の拠り所にしてたのかもしれない。
だからきっと疎まれてしまったのだ。
裏柳とて同じ事である。乳兄弟であった裏柳は自分を王子としてではなく、ただ一人の人間として見てくれていた気がする。
それであれ程までに欲しがってしまったのだろう。
結局、僕は一人ぼっちだ。
今はマーメイにきっと依存してしまっている。
僕は寂しがりで、一人ぼっちは嫌なのに。
きっとマーメイも僕を疎く思って、いつかは立ち去ってしまうのだ。
だから拠り所にしてはいけない。
白亜はそう思っていた。
「え? 兄さんが? 蛸が言った? 何か勘違いしてるね」
クスっと苦笑し見せるマーメイ。
「私の事、心配してくれて有難う。でも大丈夫。だからそんな顔しないで、笑って」
マーメイは、ハクの顔が曇っているのは自分を心配しているのだろうと思い、頭を撫でる。
「兄さんは私を心配してくれているんだよ。兄さんは元々αで、私が産まれたせいでΩに変わってしまったんだけど、政略の為に他所の種族のαに嫁いでしまって、嫌な思いもしてるだろうね。だから私は兄さんを取り戻したい。多分、蛸もそう思っているんだ。蛸は兄さんが好きだったみたいだから。兄さんはどうか知らないけどね」
困った様に微笑むマーメイ。
白亜はそれでもマーメイが心配だ。
自分も弟に騙され船から突き落とされるあの瞬間まで、弟にあそこまで恨まれ邪魔に思われていると思わなかった。
そこまで王位が欲しかったのなら譲ってあげたのに……
僕だって気づいていなかったのだから、きっとマーメイもお兄さんに恨まれているのを気づいて無いのかも知れない。
「こんな話はもうやめて、楽しい話しをしよ。一人暮らしはどうだった?」
フフフっと笑うマーメイは話題を変えて、白亜の話を聞きたがる。
「料理が楽しい事に気づいた。マーメイは普通の人間が食べる料理は食べられるの?」
「私は生の魚貝しか食べられないんだよ」
「そうなんだ……」
いつも出してくれていた料理はどうやら白亜の為に作ってくれていたらしい。
折角作れるようになったのに、食べて貰えないのか……
白亜は少し残念だ。
「ハクが可愛い洋服を着ている姿を見るの楽しみにしてたんだけど、明日見せてね」
マーメイは漆黒が可愛い洋服を揃えたと手紙を貰ってから、どんな服なんだろう、きっと可愛い服はハクに似合うだろうなと、思っていたのだ。
拾った時も綺麗な洋服を着ていた。
昆布を身に着けているのも露出が多くてセクシーではあるが、何方かと言えば露出してない方が逆にセクシーなんではないかと考えるマーメイ。
あー、駄目駄目。
私、急にどうしたんだろう。
繁殖期なのかな?
最近、そんな事ばかり考えてしまう。
ハクは人間だし、Ωでも無いと言うのに、私はハクに発情し、ハクと子づくりしたいと思ってしまう。
どうかしているのだ。
「僕よりマーメイに似合いそうな服だよ」
クスクス笑うハク。
ハクには私がどう映っているのか、少し気になるマーメイだった。
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