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第6話*
「や……っ、ああぁあッ!」
苦痛混じりの嬌声が千尋の喉から迸った。そのまま強く身体を揺すぶられ、自然と背中が反り返る。
「やべ、マジ気持ちいい……。これホントに止まらなくなりそ……」
「あっ、あっ、ああぁ……あっ」
「愛してるよ、千尋……」
「……う……」
繋がったまま耳元で愛を囁かれて、つい胸が高鳴った。うつ伏せになっているテーブルの上に、解きかけの赤い薔薇が広がっている。
(拓也くん……そんなにも僕のことを……)
結婚なんてするつもりはなかった。一人の方が気楽でいいと思っていた。
だけど、そんな千尋を拓也は十四年間も一途に想い続けてくれている。こんな自分のために法律まで変えて「結婚しよう」とプロポーズしてくる。これから先、彼以上に自分を想ってくれる人はもう現れないだろう。
「た、拓也くん……」
熱い楔を打ち込まれながら、千尋は切れ切れに口を開いた。
「拓也くんは……本当に、僕でいいの……?」
「当たり前だろ。今更何言ってるんだよ?」
「でも僕……そんな、いい伴侶になれないと思うよ……。家事とか得意じゃない、し……仕事だって、やめるつもりないし……」
そう言ったら、拓也は爽やかな笑みをこぼした。
「そんなの気にしなくていいって。別に俺、お前に家庭に入って欲しいなんて思ってないから。なんならハウスキーパー雇ったっていいんだぜ?」
「でも……」
「俺はさ、お前と一緒に暮らしていければそれで満足なんだ。そういう細かい事情なんてどうでもいいんだよ」
「拓也くん……」
「だから……結婚してくれ、千尋」
ぐっ……と前立腺に向かって突き上げられる。
言葉と肉体の両方で攻められ、千尋の思考はゆっくりと解けていった。
(ああ、もう……しょうがないな……)
これはもう受け入れるしかない。この結婚は十四年も前から決まっていたのだ。
それに――。
「再来年になったらさ、婚姻届……一緒に出しに行こうな」
解けて柔らかくなった肉襞を、拓也が激しく抉ってくる。
千尋は首をひねって、彼に微笑みかけた。
「……わかったよ」
感極まった拓也が覆い被さってきて、乱暴に唇を塞がれた。
千尋はやや苦笑しながら、その熱いキスに応えた。
拓也と一緒なら、結婚生活もきっと楽しくなるに違いない。
だって僕らの相性は、遺伝子レベルで既に決まっているんだから――。
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