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「泉。お母さんたちはお話ししてるから、あんたは自分の部屋で壱人くんと遊んでらっしゃい」
「姉ちゃんは?」
「美森 も雪乃 ちゃんたちと自分の部屋に行ったわよ」
うちの三つ上の姉貴と壱人の双子の姉貴が同級生で、姉ちゃんたちは姉貴の部屋へと消えた。残された俺は、緊張しながら壱人を連れて自分の部屋へ。あの頃の壱人の身長は俺より10センチほど小さくて、本当の女の子のようだった。
ところがどうして。話してみれば壱人はとても男らしくて、当時から少しだけ気まぐれな性格も見え隠れしていた。仲良くなるにつれ、部屋も軒伝いにお互いの窓から行き来できる部屋に交換してもらった。小学生の頃は同じクラスになることも多くて、あの頃の壱人は俺の一番の親友だった。
「あれ。壱人、また背が伸びた?」
「ああ。まあな」
それが中学生になって急に壱人の身長が伸び始めて、美形のままにかっこよくなっちゃって。中学二年生の夏に壱人に最初の彼女ができてから、壱人は遠い存在になってしまった。
結局、中学時代は同じクラスになることもなく、修学旅行でも一度も顔を合わせなかった。高校受験で進路を決める時、壱人は家から近いってだけで南高校を受験すると急に言い始めたから俺もこっそり南高校を受験した。
偏差値的にも進学校でもある南高の受験は無謀だとも言われた通り、なんとかぎりぎりで俺も壱人も受かりはしたが待っていたのは赤点と補習のオンパレード。
ただ、この夏休みの補習は受ける人数が少なくて、壱人とは同じクラスで受けることになった。去年もクラスが分かれた壱人とは小学生の頃以来、初めての同じクラスだと言える状態で、実は密かに緊張していたり。
部屋が隣同士だといっても軒伝いに行き来してたのも小学生までだ。現在はと言えば顔を合わせば取り留めのない馬鹿話はするものの、今回のような長時間は本当に久しぶりだったりもする。
「あ、やべ。もうこんな時間」
いつもと同じ時間。いつもの通い慣れた通学路。遅刻しそうな予感に俺は慌てて駆け出した。
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