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相変わらず口はぽかんと開けたまま。どうやら俺の言ってる意味がわかったようだが、それに対する泉からの返事はない。ってか俺、思わず告っちゃったよ。
「……決定的に胸のボリュームが違うんだけど」
「うん。それだけが不満だった。俺、貧乳の方が好きだから」
泉。つまりはお前のことだよ。
業 を煮やした俺は真っ赤な顔でぶつぶつ言っている泉をよそに、おどけたようにそう言って、そのどさくさに紛れて泉の服の中をまさぐった。
「……ちょ、ばっ。やっ、やめっ「ごめん。無理」
ここに来て暴走しかけた気持ちは、制御が効かない。きつく泉を抱きしめ、泉が着ていたTシャツを剥ぎ取った。
つか、俺。なんでこの部屋に来たんだっけ。ふと冷静になって泉を見ると、そのダシに使った傘をしっかりと握っていた。俺からの告白に泉からの返事はなかったけれど、抵抗もせずに俺を受け入れてくれたのが泉からの返事だ。そう勝手に解釈した俺は、泉を抱く腕に力を込める。
「……んっ。んんっ」
泉にキスの雨を浴びせながら、カーテンを開け放った窓の向こうを眺めた。窓の向こうに見えるのは、同じくカーテンを開け放った一番弱い明かりが点った俺の部屋。
もう二度と鎖 されることがない二人だけの道が再び通じたことに喜びを隠せない。これからは、いつでも来たくなったら窓越しにここまで来れる。
泉の声が子猫の鳴き声のような声に変わったのを合図に、俺は長年の思いを遂げたのだった。
さあ、始まりだ。明日からは楽しい毎日が待っている。
2011/03/07/ 第4話完結
※第5話に続きます
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