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第5話
あれから5ヶ月の月日が経ち、互いに新しい生活にも慣れて彼は定休日にリハビリへ通うようになった。
まだ自力で起きたりは出来ないものの、僅かに指先を動かせるまでに回復してきている。
そんな些細な良い事が続いたある日、風呂から上がり寝室へ戻るとスマホ片手に真っ青な顔をしてガタガタと震える姿があった。
「どうしました..?」
「父が..自殺したって..」
「え?」
「僕の、せいだ..」
パニックを起こし気絶してしまった彼からスマホを取り上げ詳しく話を聞くと、彼を刺して以来ずっと行方をくらませていた父親が自宅のリビングで首を吊っていたという警察からの連絡だった。
何故そんなことをする必要があった?
まさか罪悪感とでも言うのだろうか。
「大丈夫ですか..?」
「..おと、さん。」
目を覚まし此方をしっかり確認してからふにゃりと笑い、確かに彼はお父さんと言った。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
やっと少しずつ二人の幸せを手に入れ始めていたというのに。
暴力を振るわれても、殺されかけても、それでも愛し続けた最愛の父親を失くしたショックのせいだと分かっていても、彼の中から俺の存在が消えてしまったことが哀しくてボロボロと涙が零れ落ちた。
「うう..っひ、っく..」
「お父さん..?どうしたの?」
「..っなんでも、ないよ。」
「泣かないで。僕が居るよ。」
心配そうにそっと頬に添えられた手を取り、父親として傍に居続けることを決意した。
彼の幸せの為なら、何だってしよう。
例えそれが、二人にとって悪い事だったとしても。
「..紫苑。」
「なぁに、お父さん。」
ーーー嗚呼、壊れていく。
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