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52.可愛さが隠せない
夢野の神がかった優しさに感動して過剰なぐらいに礼を言ったら「これぐらい友達なら当然だよ」と笑顔で返された。
かっこいい! 可愛い上に優しくてかっこいいってこの主人公はどれだけハイスペックなんだ。
そして更に驚く事に、もう先輩のクラスが分かった。
なんでも、猫野の部活の先輩が知っていたらしく、そこからクラスが判明したんだとか。
てっきり夢野は先輩と接触があると思っていたから夢野に訊いたのだが、なるほど部活に入っている猫野に訊けば良かったのか。
しかし行動の早さには驚かされる。
やはり日頃から連絡を取り合うほど仲が良いのだろう。そうなると今一番夢野と親しいのは猫野なのだろうか。
「それで、いつその白伊先輩? って人の教室に一緒に行くかなんだけど……」
「うん、あのさ、さっきは出来ればアリスに付いて来て欲しいって言ったけど、無理しなくて良いよ? アリスだって忙しいだろうし先輩のクラスが分かったから俺一人でも……」
「いや絶対に一緒に行くからねっ!」
「あ、ありがと……」
コチラとしては有り難いが、本当に夢野は良いのだろうか。
俺と一緒に居たらまた夢野まで変な目で見られてしまうんじゃないかと不安になる。
しかし、自分一人で二年生の教室まで行き、知らない先輩に声をかけて白伊先輩を呼び出してもらう……想像しただけで心が折れたので申し訳ないが夢野を頼ることにした。ごめん夢野。
「で、話の続きだけど……今度オープンキャンパスがあるの知ってる?」
「もぉあるの!? 早くない?」
普通オープンキャンパスは夏や秋あたりではなかっただろうか。
「噂だけどずっと前の生徒会長が遊び人でね、外部の女の子を招き入れる口実の為にオープンキャンパスを増やしたって話が……まぁそこはどうでも良いんだけど、とにかくそのオープンキャンパスが狙い目だと思うんだ」
「オープンキャンパスが狙い目? どう言う事?」
言っている意味が分からず頭の中でクエスチョンマークが飛び交う俺に、夢野がにっこりと笑みを深くする。
「僕に任せて!」
「うん………」
何を任せるの? と訊けぬまま休み時間は過ぎていった。
後に、しっかり尋ねておけば良かったと後悔する。
※ ※ ※
さて、やってきましたオープンキャンパス。
学校には学ランを着た学生で溢れかえって……無かった。
いや、もちろん学ラン姿の学生もちらほら見受けられるが、それより多いのが女の子。
何故男子高のオープンキャンパスに女の子が? と思うが、どうやら男しか居ないむさ苦しい空間に女の子を招き入れる口実に使われているのは本当らしく、弟の代わりに見に来た、弟の付き添いだ、とでも言えば簡単に入れてしまうらしい。なんて緩い学園だ。
そして、そしてだ!
もうオープンキャンパスが出会いの場として使われるのも、学園側がそれを黙認しているのもどうでも良い。
だが、なぜ俺はこんな格好をしているのだろう。
「ねぇ、何で?」
感情を殺して(殺さないと発狂してしまいそうだ)俺にこんな格好をさせた二人、夢野と猫野に尋ねた。
「……なるべく地味にしたのに溢れ出る神秘的オーラ……」
「……可愛さが隠せない……」
「意味が分からないから脱いでいいこれ?」
「「駄目っ!!」」
俺は、何故かスカートを履いていた。
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