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第25話 気高き羊王と運命の番⑦
気付くと、俺はベッドに伏せていて、尻を突き出しているような恰好になっていた。アルは後ろから俺に覆いかぶさるようにして、もう一度茎を俺の中に突き挿している。
「本当に、私と番になるか?」
「っ……アルの、番に……して……俺と、一緒に……居てっ……」
と、唐突にアルが俺の首の後ろの辺りに痛みが走った。アルが強く噛んだのだ。そして、俺の一番奥に突き立てて、アルは短く息を切るとびくと身体を震わせた、そして中に放たれた精液が、アルの竿が引き抜かれると、腹に収まり切れなかったのか溢れ出る。
「ロポ……我が魂の番……」
朦朧としながら身体を捻って俺の上に覆い被さっているアルを見上げた。アルは俺の頬を優しく指で撫でて、美しい金の瞳で俺を見詰めている。
「……愛している」
気を失う瞬間、そう言った――ような気がした。
風が頬を撫ぜるような感触に、重い瞼をゆっくりと持ち上げる。
「……アル」
俺を見詰めるその美しい生き物は、まるで全てを包み込むような慈愛に満ちた眼差しを向けていた。風だと思ったものは、俺の頬を包むアルの手だった。
外はすっかり明るくなっていて、一日降り続いていた雨も上がっている。
「おはよう」
アルは目を細め、僅かに口角を上げて「おはよう、ロポ」と囁くように言った。
「っ……いっ、た……!」
身体を起こそうと上体を持ち上げた瞬間、下半身に鈍い痛みが走って思わず声が出た。
「ロポ……痛むのか」
そう言って俺の腰の辺りを擦るアルを、俺はぽかんと口を開けて見る。
今まで俺を一度も対等に見たことが無かったのに、俺を労わるなんて。あまりの変化に驚く。
しかし、「番」というのは、きっとそういう関係性であるべきなのだと思う。
「うん……ちょっと痛いけど、平気!」
アルを心配させまいと痛みに耐えながらベッドから降りる。そして足元に落ちていた服を拾い集める。もはやどれが自分のだか、生地や形が似ているので分からない。
と、自分の部屋に走ってくる足音が聞こえたかと思うと、部屋のドアが強くノックされる。
「ロポ! 起きているか? 陛下が何処にも――」
ドアが開いて、ちょうど正面に居た俺と目が合う。そして、その後ベッドの方に視線を向けた瞬間、顔が硬直した。
「……申し訳ございませんでしたッ!」
と物凄い勢いでドアを閉め、スウードの足音は部屋から急速に離れていった。最終的に階段を下りて行ったのか、一切音がしなくなる。
「ぷっ……あはははっ」
顔を真っ赤にしてドアの向こうに消えたスウードを思い出して思わず噴き出してしまう。
「早く服を着て迎えに行ってやらねばな。しばらく戻って来そうにないが」
「ふふっ、そうだね!」
きっと朝食の準備が終わったから呼びに来たのだ。ドアの向こうから、スウードの淹れてくれる薫りのいい紅茶の匂いが漂ってきたから。
身体を拭いて服を着替えた頃、出入り口のドアの向こうに気配がしたので、戻ってきたスウードを広間に招き入れた。
スウードに事情を説明しようとしたけれど、「分かっているから大丈夫だ」と言われてしまった。番になったのだと、彼にはどうしてか分かったらしい。
「今夜、カーニヴァルの閉幕を告げる式典が宮殿で行われますが……報告は、大臣に任せる通例の形で宜しいでしょうか」
食事を終えた後、スウードがカップに紅茶を注ぎ、アルに尋ねた。
「カーニヴァルの最後に何を報告するの?」
「陛下と妃候補が番になったことの報告だ。宮殿の前の広場で行われる式典で、国民はその報告を待っている」
アルは紅茶を口に含んで、スウードの代わりに答える。
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