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第40話 秘められた真実①
塀の中の城で、陛下の御側で働くことが日常になっていくのを感じる。陛下が紅茶を所望される前に淹れて出すことも勿論だが、書類作成や整理、諸大臣との会議などのスケジュール管理をしたり、ひと月後に控えた披露宴の同盟国からの来賓のリストアップなど、塔で御仕えしていた時には経験しなかった仕事を任されている。
そして度々執務室に遊びに来るロポの相手をしたり。騒がしくなって陛下が咳払いをされることもしばしばだ。
「だってぇ~アルが相手してくれなくて暇だし、だからってリリと仲良くしてたらすっごい機嫌悪くなるんだもん! スウードとしか話せないじゃん!」
頬を膨らませて、不満を訴えるロポに陛下は溜息を吐く。
リリというのはロポの身の回りの世話をしてくれている羊族のΩで、ロポと年も背丈も同じくらいの純白の長い巻毛が印象的な女性だ。生活において困ったことや陛下とのことも親身になってくれているのだそうだ。
しかしある日一日中一緒に過ごしていて、眠くなったのかリリの膝を枕にして寝ているロポを見て陛下があまりいい顔をなされなかったらしい。陛下の立場になって考えたら、Ω同士だから何もないだろうと思っても、相手が魅力的な女性なこともあって心配になってしまったのだと思う。
ロポから言わせたら、陛下の仕事の邪魔にならないようにリリと過ごしていたのに、何で怒るんだという不満があるわけだ。
「いいよ、もう! 庭の噴水で水浴びしてやる!」
前に陛下から絶対にやめろと注意されたことを覚えていたのか、ロポなりの反抗なのだろう。そう言って執務室を飛び出していった。
ロポを追うように陛下が閉じられた扉を見詰めている。陛下も城に戻られてひと月、大臣に委任していた仕事の一部を引き取られ、慣れない仕事を熟しておられるので、忙しい日が続いていた。
ロポと過ごす時間を少しでも早く持てるようにとスケジュールを詰められている。説明されたら良いのにと思うけれど、陛下は御自分のお気持ちをお伝えになるのが不得意だから、このような喧嘩のようなことになってしまった。
不慣れな生活を送っているのはロポも同じだ。陛下を頼りにしているのに、顔を合わせる時間が少ないし、これからの生活を不安に思うのも無理はない。
「……少しの間、席を外す」
「分かりました」
陛下が行かれないなら僕が探しに行くつもりだった。上手くお気持ちを伝えられたら良いが。
陛下が執務室を出られた後、ティーセットを片付けて厨房に向かった。
「あれ、スウードさん! 今日は早いっすね!」
調理係の羊族のβの青年ヤザンが「それ片付けますね」と受け取る。城で働く羊族とは他愛無い会話をする程度には打ち解けてきた。
「何かあったんすか?」
「ええまあ……」
陛下とロポが仲違いして、などと言えるわけもないので苦笑いを返した。そうすると、ヤザンは何か思いついたようにニヤニヤと意味深な笑みを浮かべ、耳を寄せるように手招きするので、僕は屈んで頭を傾けた。
「凹んだ時は花街に行って一発抜いてもらうのオススメっすよ?」
「な、何でそれを……!」
急に飛び出した単語に、まるで今日行くことを知られているようで顔を真っ赤にする。ヤザンは「声が大きいっす」と焦ったように口の前に人差し指を立てた。
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