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第一章・7

 朝、悠は自分の置かれた状況が解らなかった。 「どこ、ここ」  やけに広い、上品な部屋。  いつまででも眠っていられるような、心地よい大きなベッド。  上半身だけ起こしてぼんやりしているうちに、昨晩のことが思い出されてきた。 「……やばい」  ヤクザに身体売る約束してここに来たのに、眠っちゃったんだ! 「あの人、怒ってるかな。大丈夫かなぁ」  ぶかぶかのバスローブのまま、悠はリビングへ行った。  リビングに人は無く、キッチンから良い香りが漂ってきている。  途端に、悠のお腹は鳴った。  そっとキッチンを覗くと、そこには朝食の準備ができている。  そして、コーヒーを飲みながら新聞を読む慎也の姿が。  慎也は新聞から目を離さずに、悠に呼び掛けた。 「何をしている。料理が冷めるぞ」 「え!? あ、お、おはよう」 「おはよう」  そこでようやく慎也は新聞を置くと、悠を見た。 「よく眠れたようだな」 「うん。あの、ごめんなさい」 「いいんだ。さ、食うぞ」 「はい!」  すぐに悠は、柔らかいパンを頬張った。  気持ちの良い朝は、幸先のよさを標しているようだった。

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