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第1話

身体の細い彼は正義がかぶさっていると押し潰されてしまう。圧力をかけて腰を揺らしていると、甘い喘ぎの中に苦しそうな息が漏れて少し可哀想なのだが、歳上で立派な社会人の彼が学生である自分にいいようにされている現状は、最高に興奮する。 彼の方が僅かに早く達した時、その興奮は最高潮を迎える。押し込んだペニスを濡れた粘膜で締め付ける彼は、正義が与える快感だけで射精してしまう。 身動きすら許されない程押さえつけられているのに、小刻みに身体を震わせて長い睫毛を濡らして達するのだ。そんな彼の淫らな表情と肌に煽られて正義も達するのだが、出てしまう直前で腰を引いた。 開かれたままの細い足はまだ震えていて、自身の下腹を濡らす彼のペニスはくたりと柔らかくなっていた。 正義の精液は彼のうえに落とされた。乱れた呼吸のまま混ざり合う液体を見つめていると、掠れた声で「変態」と呟かれた。 「尻だけでイくほど気持ち良かったでしょ」 「ばっ、馬鹿っ。止めろって言ってるのに、お前がいつも無視するからだろっ」 身体を繋げている時は素直なのだが、素面に戻るとすぐにこれだ。もう付き合って何年にもなるのに、彼は未だに年下とは付き合わないというスタンスを貫こうとする時がある。 「…拭けよ」 唇を尖らせる彼は、体力を使い果たしていて動けないと知っている。快感に弱くセックスが好きなところは出会った頃と変わらないのだ。 ティッシュの箱を手繰り寄せて丁寧に拭いながら、二人分の精液の量に腹の底が揺れ動いた。 「じっと見るなよ。もうホント、お前さぁ…。まだ若いのにどうなのそれ…」 「聡太さんが可愛いのが原因なんで、仕方ないですね」 「あーはいはい。それ言えば許されると思ってるんだろ」 「聡太さん」 綺麗になった下腹を撫でた彼は、ころりとベッドの上を転がり正義に背を向けた。 少し不機嫌さを滲ませて名前を呼び、骨ばった肩を掴んで引き寄せると、掴んだそこへ体重をかけて再び乗りあがった。肩に広がる痛みに眉を寄せる彼に顔を近付け視線を合わせると、しまったと言うように逸らされた。 これは少し珍しい。歳下のくせにといつもならば噛み付いてくるはずなのに、汐らしく気まずそうにしている。 「…な、んだよ」 「……何かありましたか?今日は可愛さに拍車がかかってますよ」 強がっている彼も、快感に弱い彼ももちろん好ましい。墓穴を掘ってお仕置という名で抱き潰されて幸せそうにする彼も好きだ。 だが、違和感がある。 「…いつもお前ばっかりずるいんだよ」 「何がでしょう」 「お…俺がイく時じっと見るだろ」 「はい。可愛いんで」 「だから、可愛いはやめろって」 「それがなんですか?今更恥ずかしいとかじゃないでしょ」 「……恥ずかしくないわけじゃないけど、まぁ…それは、うん…」 歯切れの悪い言葉だが、頬が淡い色に染っている。 (…可愛い。抱きたい。話しながら挿れたらさすがに怒らせるか) 知能の低い事を考えていると、無防備な正義の腹に衝撃があった。密着しているせいで勢いがあった訳では無いが、構えていないところに拳を受けると多少は痛い。思わず息を止めて彼から顔を隠しアピールしてみたが、謝罪はなかった。 「お前ばっかり見てるだろって言ってんの」 「イく時に見られるの嫌いじゃないでしょう」 「そういうんじゃなくて…っ。もーいいよ。とりあえず、次はゴムつけろよな」 少し前にコンドームなしでいいと許可されたところなのに、何故そうなるんだろうか。 考えたのは一瞬だった。達するところを見るのが正義だけでズルいと言うのは、自分も正義の痴態を見たいということだ。 (あぁ。ゴムを付けていればわざわざ身体を離す必要は無いからな) 可愛い恋人にそんなおねだりをされるのは幸せな事だ。 「財布の中に一つだけありますよ」 抱き締めて腕の中に閉じ込めると、正義の腕に顔を擦りつけてきた。 「…俺のいやらしい顔見てくれるんでしょ?」 「ぶはっ。なんだよ、それ」 「あれ、違いました?」 「言い方がオヤジくさい」 「……奥まで擦ってあげるから、俺の顔見ながらイって下さい」 耳元に囁くと、彼の肌が期待に震えた。きっと、もう瞳も濡れ始めているだろう。 正義はベッドの下に落ちている鞄の中から財布を取り出す余裕があるだろうかと危惧しながら、恋人の甘い唇に舌を這わした。

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