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第10話 -ホワイトツリーに捧ぐアリア-

『X'masの0時に地図指定の場所に来て下さい』 X'mas前日にいきなしこんな変な手紙が届いた。 差出人は無し……こんな手紙が何でうちの郵便受けに入っていんのかワケ分かんなかった。 イタズラか何か……? ひょっとして去年のケンカ売りのリベンジが今になって届いたとか…? こーんなの誰が行くか……と思って俺はゴミ箱に丸めて投げ入れた。 俺は『杉原先輩』。 まぁ、あんまし突っ込んで聞かないで。 どうせ名乗るほどのヤツじゃないし、俺の『好き』なその子がそう呼んでいるから『杉原先輩』という事で。 さっきもらった『果たし状』は去年の今頃まで俺が荒れていた日常を過ごしていたせいなんだろうねぇ? とにかく俺は『サイテーな男』だ。 その『サイテーな男』の俺はホントにサイテーで、去年の10月に『恋』に落ちた。 相手は義弟が『虐め』をしていた相手。 俺は義弟に騙されてその子に『加害者』扱いされたとケンカでリベンジしようと半年間ケンカを売りまくって強くなった。 元々身体も割とデカいし運動も好きだったし、すぐに俺の身体に身についた。 でも…その相手を見たら……俺は魅入られてしまった。 しかも相手は『綺麗』だけど『男』なのに。 でも義弟がどうしてその『男の子』を『虐め』ていたのかすぐに理由が分かった。 今の俺と同じように魅入られてしまったのだ。 義弟と俺は『腹違い』で見た目は似ていなくても『好み』はそっくりだった。 でも俺はね、反省して坊主のように静まった。 荒れる前からしていたサイテーな行為の『オンナ遊び』も止めた。 …その子を『虐め返す一心』で強くなった俺はこの『想い』を伝えてはいけない。 『虐め』をした俺の義弟が悪いのだ。 (兄弟でサイテーってちょーウケる) でーも真面目になった俺はもうケンカを買うのも止めて払うようになって……ズタボロ状態。 今年の夏休みで全て払った気になってたけど、俺はまだその子を『虐め返す』代償は払いきれていなかったのか。 (ヤだなー…その子と明日パーティーする予定なのに) そんなズタボロの状態でパーティーなんて行ったら、ぜーったいに心配される。 でも腹いっぱいいなかったのなら俺の罪だ。 サイテーな男でも意地はある。 俺はその子を『恋人』にしたから。 俺は指定された道のりを歩いて行くことにした。 別に電車はまだ走ってるけど、何となく歩きたかった。 どうせボコられりゃ熱くなる。 荷物も…少なくて済むし…。 帰りのことを考えて一応Suicaだけ持っていくか。 寒空をただ歩いて行くと、星がちょー綺麗に見える。 Xmasのイルミネーションより遥かに綺麗だけど……その子の純粋さに比べたら…星もイルミネーションも負けるかな。 (あーホント俺、メロメロだな…) でも俺をここまで夢中にしてくてた子を『虐め返そう』とした罪は重い……と言い聞かせて2時間かけて指定された場所を歩いてた。 ……指定された場所はビル街の間の水辺のある公園。 ………Xmas前なのに何かそこは可笑しかった。 ビル街なのに星が見えて綺麗だけど、イルミネーションも無ければ人も見当たらない。 こんな綺麗な公園なのにカップル一組もいない。 (……ひょっとして…人払いとか?) そしたら俺ちょーズタボロじゃん…。 「杉原先輩?」 ……え? 「……叶?何でここに?!」 そこにいたのは俺の『恋人』の『叶』だった。 「え?!ちょっと待って……俺今の状況分かんないんだけど…」 俺が意味も訳も分からずに狼狽えていると叶は、 「この手紙…杉原先輩からじゃなかったんですか?!」 叶が持っていた手紙は、俺の家の郵便受けに入っていた手紙とおんなじものだった。 「え?…何で叶もその手紙持ってるの?」 「……てっきり私は杉原先輩からの秘密の手紙だと思って、家の誰にも言わずに内緒で出てきてしまいました…」 ホントに叶もこの手紙の差出人には見に覚えが無いようで……俺は一人で焦っていると……ふと背後から綺麗な光で煌めいた純白の羽が宙を舞っていた。 その羽が舞っていた背後を見ると水色をした……X'masツリー。 〈X'masに現れる純白の羽で出来た水色のX'masツリーを最愛の恋人と一緒に見ることが出来ると、末永く幸せが続く〉 この辺りで聞いたことのある話で……俺は都市伝説だと思っていたことが、俺と叶の前で……起こった。 「先輩……凄く綺麗ですね!!このツリーを一緒に見たくて誘ってくださったんですか?!」 叶は俺の袖の裾を掴んで感動したように言う。 「……杉原先輩…?」 叶が茫然としている俺を見て、心配そうな顔をしている。 「……俺はカミサマなんて信じてないし…けど今だけなら信じたいかも」 不覚にも感動のあまり……俺の頬に一筋の涙が伝った。                               終わり

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