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第18話 私は運命を信じたい。
今日は杉原先輩と私、笹倉 叶は原宿でデートをします。
夏休みに入ってからの原宿のデートは人酔いする私には危険だと杉原先輩は言うのですが、どうしても行きたい場所があるんです。
そこは少し前まで女の子の可愛いブランドのお洋服屋さんだったらしいのですが、不景気で倒産してしまったらしく、今は球体関節人形を扱うお店があるらしく…。
夏休みに入る少し前に、クラスメイトが『杉原先輩に似ている人形がいた』と聞いて、一目見たくて私が我が儘を言って杉原先輩にお願いしたんです。
……ですが杉原先輩に似ている人形があるのは先輩には内緒です!!
なんか恥ずかしくて…言う気にはなれませんでした。
『男』らしくないなんて思われたら恥ずかしいです!!
「叶おはよ!!今日は待たせちゃったね」
杉原先輩が原宿の表参道口に迎えに来てくれました。「我が儘言ってしまってごめんなさい!!」
私は杉原先輩に謝りました。
「叶が行きたい所なら俺は喜んで行くよ」
先輩はいつも優しいです。
この優しさを独り占めしたいと思ったら罰が当たりますね…。
「叶が行きたいところ、実は場所だけ下見してたんだ」
杉原先輩が私より先に来てくれていたのはなんとなく知っていましたが、まさか場所の下見をしてくれていたなんて……!!
「先輩!!有り難う御座います」
「でもなんで球体関節人形?」
……まさか『先輩に似た人形が見たいんです』なんて恥ずかしくて言えないので、
「…調べたら綺麗だったんです!!」
「ふ〜ん、まぁ綺麗だよね」
ということは先輩も調べてくれたのでしょう。
「竹下通りから行くほうが建物が綺麗に見えるんだけど、裏道のほうが人が少なかったから裏道から行こう」
はい、と手を出されたので…戸惑ってしまいましたが、
「迷子になると困っちゃうよ」
と先輩が言うので、繋ぎました。
ですが……繋いだほうがいいですね。
この人混みは流石です……!!
こんなに人混みの凄いところにこんな素敵な場所があるなんて、私には想像出来ませんでした。
杉原先輩に連れて行ってもらって細い小道に入りました。
「凄いですね、一気に人が少なくなりました」
私が素直に感想を言うと、杉原先輩は
「実は俺この道知ってたんだ。でもまさかこんな店があるなんて知らなかったよ」
先輩はこじんまりとした小さな洋館を指差して、
「ここだよ」
「なんか随分と可愛いですね!!」
私はワクワクしてしまいました。
早く杉原先輩に似た人形が見たくて…お店に一歩足を踏み入れました。
そこには『人』のような綺麗な球体関節人形が沢山いました。
「……綺麗です」
あまりの綺麗さに私は感動してしまいました。
瞳は硝子で出来ているのでしょうか、とても素敵でまるで何かを訴えかけているように微笑みかけています。
「あ、そうです!!」
杉原先輩に似た人形を探さなくては…!!
私はお店をくるくる回って探しました。
「居ました!!」
見つけた場所は、綺麗なショーケースし入って…和服のような素敵な衣装を着ていました。
「…本当です、杉原先輩に似ていますね……」
「俺がどうかしたわけ?」
隣に杉原先輩が私を覗き込んでいました!!
「わわわっ!!なんでもないです……」
するとすぐ近くにいた店員さんが話しかけてくれました。
「なんだかこのドールくんはお兄さんに似ていますね」」
と。
やはりそう思いますよね。
「えー、俺こんなイケメンじゃないよ」
私は嬉しくなってしまって、
「ですよね…実は私この子を見たくて、今日ここに来たんです」
つい杉原先輩がいるのに白状してしまいました。
「叶、なんで言わないの」
「……恥ずかしいじゃないですか。『好き』な人に似ている人形を見に行きたいなんて、私には言えません!!」
「言ってるよ、叶」
先輩は困ったように笑っていました。
店員さんは杉原先輩と私のやり取りを見ていて、急に
「宜しかったらセレモニーに参加されますか?」
セレモニー?
「ドールをお迎えする方の式です。自由参加なので、ご覧になって行かれますか?」
「参加したいです!!」
私は先輩の意見など聞かずに即答していました。
「では、あと10分で始まりますから、地下へどうぞ」
案内された場所は地下です。
祭壇があり、綺麗な球体関節人形が寝かされていました。
「セレモニーってなんだか…」
杉原先輩の言いたいことは分かります、何かの怪しい儀式のようでした。
先輩と二人で後ろの席に座りました。
セレモニーに緊張しながら始まりました。
ですが予想に反して何か怪しい儀式というより神聖な式……まるで結婚式のようでした。
私は何だか感動してしまいました。
なので、帰りに私は店員さんに声をかけていました。
「あの、……あの子をお迎えしたいのですが、何かチャンスはありませんか」
私はそのお店の会員になり、杉原先輩に似た人形に票を入れて原宿をあとにしました。
どうやらあの子を入手するには抽選しかないようです。
「叶、決断早いね……」
「お迎えしたいんです!!」
少しだけ杉原先輩は呆れているようでしたが、わたしはあの子を入手する運命を信じたいです。
「叶、もしあいつが手に入っても浮気しないでね?」
続く?
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