442 / 856

第448話◇

「玲央さあ? すっげえ盛大なノロケだって気付いて喋ってる?」 「……ノロケ?」  ただの事実だと思って話してたけど。……ノロケてたか?  オレの声に出てない疑問がちゃんと分かったらしい2人は、ものすごく苦笑い。 「思い切り、ノロケだよー。優月の事が大好きで、すげー変わったって言ってるんだよね」  クスクス笑う勇紀。 「まあ、玲央が変わったのはもー今更なんだけど……なんか、改めて、すげーな。玲央が朝飯食べるっつーだけでもなんかおかしーのに作ってるんだもんな。どーせ、世話焼いてるんだろ?」  甲斐までそう言いながらオレに、愉快そうな視線を向けてくる。 「んー、まあ、盛大にのろけられたところで、授業いこーっと。じゃーねー」 「そうだな……じゃあな」 「あ、夏休みの事はまた後で決めよーね」  最後に勇紀が振り返りそう言う。二人はなんだかすごく楽し気に笑いながら、それぞれ自分の向かう教室の方へ散っていった。オレもゆっくりと歩き出しながら、少し考える。  ――――……ノロケか。  ……まあ言われてみれば、そうなのか?  でも、別に優月が可愛いとか、そういう事言ってノロケてるわけじゃねえよな。ちょっと生活変わったっていう話で……。  …………可愛いとこ、言いまくってたら、ノロケなんだろうけど。  今のってノロケに入んのか? よく分かんねえな。  ……つか。可愛いといったら――――……。  ……今朝の優月。  すげー、可愛かったな。 『玲央と、して寝ると……ものすごいぐっすり眠れるかも』  ……あんなセリフ。あんなに真っ赤な顔をして言うとか。  なんなのアレ。  はー……。  マジで、最後まで襲わなかったオレをほめてやりたい。  めちゃくちゃキスしたけど。  よくあそこで耐えたよな。   ――――……って、この話してたら、ノロケどころじゃねえのかな。  何て言われれるのか……。  まあ、あんな可愛いとこ、絶対ぇ誰にも、言わねえけど。  オレ、気持ちを煽られるとか、好きじゃなかった、気がする。  したい時はするし。したくねえ時に、煽られても面倒くせえだけだし。  だから、何でこんなに、優月にはその気にさせられるんだろうと、不思議でならない。しかも、本人にその気、ねえのに。  ――――……と、そこでふと気づく。  ……ああ、本人に、その気がねえからか。  優月に、オレをその気にさせようなんて気は――――……。  かけらもねえもんな……。  だから、嫌じゃないのか。    つかオレって。つくづく、めんどくせえよな……。  ……その気にさせられるとか、嫌だとか。  ――――……優月はその気がないから、嫌じゃないとか。 「――――……」  …………あれ、でも。  優月がオレを、その気にさせようとしてくるなら、  それはそれで、絶対すげえ可愛いかも。と思ってしまう。つーことは。  優月なら、別になんでもいいっつー事なのかもしれない。 「――――……」  これこそ、口に出したら、最大のノロケなんじゃねーのか?  ……ほんと、どーかしてんな、オレ。   苦笑いが口元に浮かんでしまいそうになりつつ。  授業の校舎へと、足を速めた。

ともだちにシェアしよう!