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第1話

 弱った。  隊長と地下に閉じ込められてしまった。  上は瓦礫で埋まっていて外に出られそうにない。  何より、隊長が大怪我をしていたし、俺は人間への擬態が解けて真の姿を表していた。  人間から変じる姿を見られていないのは僥倖ではあるが……。  俺は狼人間に翼が生えたような化け物である。  当然、人間の隊長は警戒していた。 「無理だろ。無理だろ。無理だろ」  ウロウロと歩き回る。だが、時間がない。  何より、俺は隊長が好きだった。 「何が無理なんや?」  瓦礫によりかかり、荒い息を吐く隊長に問われて、ぐっと俺は言葉に詰まり、観念して喋った。 「貴方はこのままだと死にます。どうにかする薬を持ってますが、それを譲るには俺と貴方の交尾の儀が必要です」 「男同士でもええんか? 種族もちゃうし」 「俺はメスです。見えませんが。見えないのは重々承知ですが。魔法人類の最終形態は必ずメスなんです」 「そか。交尾の儀って、どうするんや?」 「薬……翼を相手となるものに食べてもらいます」  俺は覚悟を決めて、自分の翼を引きちぎって隊長の前に差し出した。 「生で?」 「時間がありません」  恐る恐る、隊長は歯を立てる。コクリ、と滴る血を飲み、目を見開いた。  ガツガツと食べるのを見守り、もう片方の翼を千切り取って料理をする。  翼は力の塊なので、ちぎれるし痛いけど我慢できない痛みではない。体積以上食べても気にしない。  隊長の失っていた手や足が生えて、ぐっぱと手を握っては伸ばしている。  無事、傷が癒えた事にホッとする。 「すみません、交尾の儀の続きをさせて欲しいんですが」 「ああ、救われたからな。なんでもしたるわ。何すればええんや?」 「その、目をつぶっていてください」  精力剤でもある翼を食べて、そそり立った隊長のそれをズボンから引き出し、恐る恐る腰を下ろす。翼を千切った影響で、俺も発情していた。ドMというなかれ。そういう生体なのだ。 「く……くぅん……」 「っ!」  直ぐに隊長が伸し掛かって、夜が過ぎていった。  発情効果が互いに切れた後は、隊長は俺の水魔法で喉を潤し、俺は倒れていた巨大な魔獣の肉と魔石を食べて翼を生やし、体や服を清める。 「翼、また生えるんやな。水も問題なさそうやし、後は、助けが来るまでの空気やな」  俺はコレクションの刀をいくつか出した。 「この中で使えそうなのはありますか?」 「そうやな……コレが一番好きや。使いこなしてみせる」  さすが、一番強いのを秒で選んだな。  俺は次に、衣装を取り出す。 「略式の剣舞を教えるから、覚えて欲しいです。人間が剣を使うためのもので、俺の翼を食った今なら、貴方なら条件を満たすはず」  魔法青年に変身して舞う。短い剣舞だ。 「最終形態じゃなければオスなんか?」 「最終形態じゃなければ、その、場合によります。さあ、舞ってください」  隊長は舞った。そして、一度だけブルリと震えて剣を振るい続ける。  そのまま、ギッと上を睨んだ。  避けるように上の人間たちに急いでテレパシーを放つ。  隊長は空中を歩き、剣を一閃。突風が爆発して、空が見えた。さすが隊長。  そして、俺は適当なところで数日隠れて卵を産み落とし、救出されたふりをして帰投した。 「ということで、魔法人類の交渉・捕獲、及び翼の採取をお願いします。翼が採取できるなら交尾には応じてください」 「翼を喰われて発情するってすげー変な種族ですね」 「マゾい」 「交尾を求められたら応じろって……起つのか?」 「それは問題ない。翼を食った瞬間、色んな意味で肉に見えたわ。多分、翼を喰らいながらヤるのが本来やな、あれは」 「マジすか」 「より強い相手の子孫を残すシステムなんやないかなぁ」  そのとおりです、畜生。人間の対応力が凄すぎて泣きそうです。  翼のサンプル取られているの気が付かなかった。  とにもかくにも、隊長は魔石を摂取できるようになり、スキルが開放された。  超強くなったということだ。  剣舞を継承できたので、基礎のスキルは出来るようになった。 「牙崎、お前はどう思う?」 「あ、俺はそもそも子供が出来るのかが気になりますね」  唐突に俺に話振らないで下さい。そこで、知らせが入る。 「魔法人類の襲撃です!」 『俺のワンちゃんに手出ししやがって! ぜってー許さねー!』 「自分宛てやな」  バーディス……! 出ていこうとする隊長を他の隊の隊長が留める。 「まあ、待て。お前は犬鳥が来た時対応しろ。一夫多妻はいかんだろ」  そして、他の隊の隊長達は出ていった。 『テメーらに用はねぇ! 俺は関西弁ヤローに……はわぁ!?』 『うまっ なるほど、食べるだけで強くなるって意味がわかったぜ』 『次は私が食べる』 『俺にマウント取るなんていい根性してんじゃねーか! 滅多打ちにしてやるわ!』  それから、隊長達とバーディスの戦いが始まった。  結果? 『あーっ ふあ、あっあっ すげっ卵生まれちゃうううううう』  一応、部屋に連れ込んで公開エッチにならないようにはしてくれた。拉致とも言う。でも音は聞こえる。  俺はひたすらオロオロするのみだ。  声の質が変わって、バーディスが魔法青年になったらしい。生む時は魔法青年なのだ。 『あー! あー! うま、生まれちゃうううう! うああああっ』 『魔石食えよ。早く次の翼はやして』 『二人目作ろうか♡』  バーディスがエロ同人みたいな目にあってしまっている……!  すまん、俺は無力だ……。 『らめえぇぇぇぇぇ……も、もう、らめぇ』  人間形態にまで戻ってしまったらしい。  卵もいくつか産まされて、限界が来たのだろう。    俺は絶対にバレないようにしないとな。    雛の世話をしているのをあっさり隊長に見つかるのは、それから一週間後のことだった。

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