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ノンケの彼との付き合い方
「俺、ずっと理人 のこと好きだったんだ……。だから、その……俺と付き合ってください!」
「うん、いいよ」
「急にこんなこと言われても困るだろうけど、でも俺、本気で……って、え? ごめん、なんて言った?」
「うん、いいよって」
「は、え……?」
ぽかんとする遥 に、理人はいつもの優しい笑みを浮かべていた。
遥が理人に告白し、恋人になって二ヶ月が過ぎた。
理人は遥の中学時代にできた友人で、彼との交遊関係は高校生になってもつづいていた。
遥はゲイで、ずっと理人に片思いしていた。理人は顔もよくてスタイルもよくて、勉強もできて運動神経もいい。女子にモテて、それなりに遊んでいた。
告白するつもりはなかったのだ。友達でいられればいいと思っていた。告白なんてしたら、友達ですらいられなくなってしまうから。
でも、だんだん友達でいることも辛くなってきた。
理人の周りの女子が羨ましくて堪らない。彼に抱かれたという女子の話を聞くたびに胸が苦しくて悲しくて、一人になってから何度も泣いた。
このまま友達でいるのは無理なのかもしれないと考えるようになった。いっそ告白してきっぱり振られてしまった方が楽なのかもしれないと思った。
友達だと思っていた同性の同級生に告白されて、理人はどう思うだろう。気持ち悪いと、嫌われるかもしれない。
その覚悟で告白した。
あまりにもあっさりOKをもらえて、遥は戸惑った。振られるのが前提で告白したので、予想外の展開に頭がついていけなかった。
冗談だと思ったのか。「付き合って」って買い物とか遊びとかと勘違いしたのか。もしかして同情か。遥を哀れに思って受け入れてくれたのか。それとも遊び? 女の子に飽きたからちょっと男を味見してやろうとかそういうつもり?
というようなことを、自分から告白したくせに、遥は何度もしつこく理人に確認した。
理人は根気よく全てを否定し、本気で遥と恋人になると言ってくれた。好きだと言って、抱き締めてくれた。
遥は泣くほど嬉しかった。夢みたいで、最初は本当に夢なんじゃないかと思った。
でも夢じゃなくて、理人はちゃんと遥を恋人として接してくれる。デートも何度かした。キスもしてくれる。
それ以上はまだだけれど、でもキスが少しずつ長く深くなっていくのを感じて、もしかしてそろそろ深い関係に進展してしまうのかもなんて考えていた。遥は既に後ろは開発済みだ。理人のことを思い、ディルドを突っ込んで何度もオナニーしている。だからきっとそれほど苦労することなく受け入れられるはずだ。
そんなある日の夜。家でまったりしていた遥のもとに、友達の茉莉 から連絡が入る。彼女は泣いていて、どこにいるのか聞き出し、急いで家を出た。
暗い公園の中のベンチに、茉莉は座っていた。
「茉莉っ」
駆け寄り、彼女の隣に座る。
遥の顔を見て、茉莉の瞳からぶわっと新たな涙が溢れた。
「うわーん、はるはるーっ」
「どうした? なにがあったんだ?」
「彼氏に振られちゃったよぉーっ」
茉莉はわんわんと泣きじゃくる。
遥は彼女の頭を優しく撫で、慰めた。
遥は女友達が多い。たまにこうして呼び出されることがあり、そのときは黙って話を聞いてあげる。
ゲイの遥にとって女子は絶対に恋愛対象にならないので、友達として純粋に付き合えるのだ。そして一切下心を抱かない遥に彼女達も気づいていて、遥を男として意識することなく、女友達と同じように接する。
茉莉は子供のように泣きつづけ、泣くだけ泣いて徐々に気持ちが落ち着いてきたようだ。
「うえっ、う、う……っ」
「少しはすっきりしたか?」
「うん……っ」
「すぐには立ち直れないかもしれないけど、やけ食いでもなんでも付き合ってやるからな、元気出せ」
「ありがとう、はるはるぅーっ」
感激した様子で、茉莉が抱きついてきた。
力いっぱいしがみついてくる茉莉の背中を、ぽんぽんと優しく叩く。
ぎゅうぎゅうと胸が押し付けられる。柔らかくて、甘くていい匂いがした。
可愛い女の子が泣いて抱きついてきたら、男なら誰でもグラッとくるのではないだろうか。もちろん遥はならないけれど。
わかっていたはずなのに、こうして触れて、改めて実感する。
自分は女の子とは全く違うのだと。
顔は昔から可愛いと持て囃されてきた。女顔で小柄で、女装すれば女の子にしか見えないだろうという自信はある。
けれど遥は、間違いなく男だ。
女の子のように可愛い顔をしていても、体つきが華奢でも、男であることは変わらない。
柔らかい胸もなく、薄い胸板があるだけだ。そんな体に触れて、なにが楽しいのだろう。
理人は女性経験が豊富で、今まで色んな女性をその腕に抱いてきた。何度も触れて、柔らかなその体を堪能してきたのだろう。
そんな理人が、遥の体を見て、触れて、どう思うだろう。
女の子と比べて、がっかりするのではないか。
最中に理人のぺニスが反応しなかったら、遥はもう立ち直れない。
逆に遥は理人に触れられたらきっとすぐに興奮してしまう。ちょっと触られただけですぐに発情し、ぺニスを勃起させたら、不快に思うのではないか。気持ち悪がられ、嫌われてしまうかもしれない。
それは嫌だ。せっかく付き合うことができたのに。好きだと言ってもらえるようになったのに。
この幸せを知ったあとで嫌われるなんて耐えられない。
泣き止んだ茉莉を家まで送り、遥は人のいない夜道を一人で歩く。
理人と恋人になれて喜び舞い上がっていた気持ちが、一気に急降下した。
翌日。遥は同じクラスの男友達に尋ねてみた。
「なあ、もし俺が裸でお前のベッドの上にいて、『抱いてくれ』って言ったらどうする?」
「『帰れ』って言う。そして『服着ろ』って」
「だよな」
いくら女の子と見紛うほど可愛らしくても、男に誘われても嬉しくはないのだ。遥は確信した。
やはり、理人と体の関係を持つのは危険だ。
がっかりされて、別れを切り出される可能性が高い。
もちろん理人は最初から遥が男だとわかっている。男だとわかった上で告白を受け入れてくれた。
でも、実際に裸を見たら、我に返るかもしれない。やっぱり男とは付き合えないと思うかもしれない。
声だって女の子とは違う。遥の声は野太くはない。少し高い方だけれど、女の子と比べてしまえば男の喘ぎ声なんて気持ち悪いだけだろう。
せめて理人が女性経験のない童貞だったら希望はあった。比べられることはないから。でも、そこは今更嘆いてもどうしようもない。なかったことにはできないし、忘れることもできないのだから。
遥は決心した。理人とはセックスはしない。彼と別れないためには、それしかないのだ。
休日。理人が遥の家に遊びにきた。今日は二人で映画を観る約束をしていた。
遥の部屋で、二人並んでベッドに寄りかかる。リモコンを押して、映画を再生した。
内容はホラーだ。遥はホラーが苦手だけれど、感動的な泣けるホラーだと有名で、一人では観れないので理人と一緒に観ることにしたのだ。
感動的なシーンは最後の方なのだろう。そこに至るまでのホラーシーンが怖すぎて遥は怯えきっていた。
画面の中のヒロインが後ろを振り返った瞬間、血みどろの女性がそこに立っていた。
「ひっ……」
ビクッとして、思わず隣の理人にしがみつく。理人がこちらを向いて、目が合った。
ビビりすぎな自分が恥ずかしくなり、遥は真っ赤になって腕を離した。
「ご、ごめんっ」
「謝らなくていいよ」
理人は微笑んで、赤く染まった遥の頬を撫でる。
「真っ赤だ。可愛いね」
理人の言葉にますます赤くなる。
理人はリモコンを操作して映画を止めた。え、と遥が疑問に思った瞬間、唇が重なる。
伝わる唇の感触に、思考が吹き飛んだ。
遥は大好きな理人とのキスが大好きだ。理人としかしたことがないからわからないけれど、きっと好きな人とするからこんなに気持ちいいのだろう。
唇を舐められて、瞳がとろんと蕩ける。
陶然となっていた遥だが、理人の掌が服の裾から侵入し、直接肌を撫でられ我に返る。ただ抱き締めようとしているわけではない。その意味に気づいて、遥は慌てて理人の手を掴んだ。
「ま、待って、だめっ」
遥の強い拒絶に、理人は驚いたようだ。
「ごめん、嫌だった?」
「そ、そういうわけでもないんだけど……」
嫌なわけがない。触ってほしい。全身、余すところなく理人に触れてほしい。
でも、だめだ。決めたのだ。理人とセックスはしないと。
だから、遥はしどろもどろに言い訳する。
「あ、あ、あの、俺達、男同士じゃん……。だ、だから、こういうことは、しない方がいいんじゃないかなって、思ってて……」
「こういうこと?」
「そ、その……え、エッチを……。ほ、ほら、男同士だとなにかと面倒で大変だし、あんまり気持ちよくないかもしれないし……っ」
言いながら、ふと思う。
セックスしない恋人に、理人は満足できるのか。今までそれなりに遊んできた理人が。セックスさせない恋人とこの先も付き合おうと思うだろうか。セックスしないって言ったら、じゃあ別れようということになるのではないか。
遥は焦った。このままではどちらにしろ振られてしまう。
焦燥に駆られ、考えもまとまらないうちに口を開いた。
「だ、だから、エッチは女の子とするといいよ!」
「……は?」
「俺に気にせず、じゃんじゃん女の子とエッチしていいから! いちいち誰とエッチするか報告しろなんてうるさいこと言わないし! 俺は全然大丈夫だから!」
「……遥と付き合ってるのに、俺にセフレ作れってこと?」
理人の声が心なしか低く感じる。
怒らせてしまっただろうか。でも、他にどうすればいいのかわからない。
「うん……」
「遥は俺に抱かれたくない?」
そんなわけがない。抱かれたいに決まってる。どれだけ妄想してきたと思っているのだ。今すぐにだって抱かれたい。
本心は押し殺し、遥は頷く。
理人はスッと目を伏せた。
「ふうん、そっか」
数秒の沈黙ののち、理人はいつも通りの笑顔を浮かべる。
「遥がそう言うなら、わかったよ」
「え……」
「じゃ、映画のつづき観ようか」
にっこり笑って、理人は映画を再生した。
自分が言い出したくせに、あっさり承諾されてしまったことにショックを受けている。そんな自分に自己嫌悪する。
なんて自分勝手なのだろう。
泣きそうになって、必死に涙を堪えた。
もう映画の内容なんて頭に入らなくて、せっかく怖いのを我慢して観たのに、ちっとも感動できなかった。
それから数日が過ぎた。
理人の態度は今までとなにも変わらない。優しい恋人として接してくれている。
でも、心の内ではどう思っているのだろう。
理人の気持ちも考えず、早まったことをしてしまったかもしれない。
あんなことを言われて、理人はどう思ったのだろう。傷つけてしまっただろうか。
理人に嫌われたくなくて、別れたくなくて、そんな自分の気持ちしか考えていなかった。
遥はとぼとぼと廊下を歩いていた。
ふと視線を上げると、理人がクラスメイトの紗奈 ととある教室に入っていくのが見えた。
紗奈は一年のときに遥と同じクラスで、仲良くなった女友達の一人だ。今でも交流がある。
理人からは先ほど、用事ができたので今日は一緒に帰れないと連絡がきた。
嫌な予感に心臓が跳ねた。
ひょっとして、用事とは紗奈と会うことなのだろうか。紗奈と二人きりで会うから、遥とは一緒に帰れないということなのか。
そういえば……と思い出す。紗奈は先月、彼氏と別れたと言っていた。
紗奈は元々、縛られるのが嫌いだから彼氏ができてもあまり長続きしない。彼女はもっと軽い付き合いがいいのだと言っていた。
もし、理人にセフレになってほしいと誘われたら、紗奈は断らないのではないだろうか。
遥は血の気が引いていくのを感じた。
ふらふらと、二人が入った教室に近づく。ドアの前で立ち止まり、震える手でドアに触れた。
声は聞こえない。でも、確かに二人はこの中にいる。
ガタッと、微かに物音が聞こえて肩が竦んだ。
目の前が真っ暗になる。
どうしよう。どうしよう。
もし二人が、中で抱き合っていたら。
理人が自分以外の人を抱き締め、キスをして、肌に触れていたら。
想像しただけで胸が痛んで、涙が零れた。
そんなの嫌だ。理人の手が、唇が、他の誰かに触れるなんて。
嫌なのに。でも、遥にそれを止める権利はないのだ。
遥が言ったことだ。だから、理人を止めることなんてできない。
馬鹿なことを言ってしまったと、後悔しても遅い。もう手遅れだ。自分は取り返しのつかないことをしてしまったのだ。
嗚咽が漏れ、鼻を啜る。
そのとき、ガラリとドアが開いた。
「ぎゃあっ」
ドアを開けた紗奈は、目の前に立っていた遥の姿に驚き尻餅をつく。
「な、な、なに……って、遥じゃん! あんたなにやってんの!? 驚かせないでよ! てかなんで号泣してんの!?」
「紗奈……ごめん……」
遥は手を差し出し、紗奈を引っ張って立ち上がらせる。
「どうしたの、なにかあった?」
教室の奥から、理人もやってきた。遥に気づいて、目を丸くする。
「遥? どうしたの? なんで泣いてるの?」
「な、なんでもない……」
ずびっと鼻を啜る遥の頭を理人が優しく撫でる。
「ああ、ハンカチないや。紗奈ちゃん、ハンカチは?」
「ない」
「持っておきなよ、ハンカチくらい」
「持ってないやつに言われたくないんだけど」
「あ、大丈夫、俺持ってるから……」
遥はポケットからハンカチを取り出し、涙を拭った。
早とちりしてしまった恥ずかしさと、勘違いだったことへの安堵と、他にも色々な感情が混ざって頭の中はぐちゃぐちゃだ。
それでも理人の優しい眼差しと、触れる手の温かさに、徐々に気持ちが落ち着いてくる。
紗奈は心配そうに遥の顔を覗き込んだ。
「遥、ホントに大丈夫なの? どっか痛いとかじゃないの?」
「ううん、ほんとになんでもないんだ。驚かせてごめんな、紗奈」
「まあ、なんでもないならいいけどさー。ところで今ヒマ?」
「え? うん、暇かな」
「じゃあさ、あたしの代わりに資料の整理してよ」
「資料の整理?」
「あたしと理人、今日日直でさー、担任に資料の整理押し付けられたの。でもあたし、約束あってもう行かなきゃダメなんだよね。だから、あたしの代わりに残りの作業手伝ってくんない?」
「それは、いいけど……」
「ホント!? 助かる! 今度お礼するから。あとよろしく、じゃあねー」
紗奈は颯爽と去っていった。
遥は理人へと顔を向ける。
「そういうことで、手伝うよ」
「遥、無理しなくていいんだよ? 体調が悪いなら、早く帰って休んだ方がいい」
「大丈夫! ほんとのほんとになんともないから!」
「無理してない?」
「うん、全然。だから手伝わせて」
「わかったよ。ありがとう、遥」
頼み込む遥に、理人は苦笑する。
それから、二人で他愛ない会話をしながら作業した。理人と過ごす時間は楽しくて、あっという間に過ぎていく。
最後の資料を片付け、作業が終わってしまうことを遥は残念に思った。もっと、理人と一緒にいたかった。
無意識に、じっと彼を見つめてしまう。
気づいた理人が首を傾げる。
「どうしたの?」
「好きだなって、思って……」
思ったままを口にしてしまい、遥は赤面した。
「あ、ごめん、変なこと言って……っ」
「どうして謝るの? 変なことじゃないでしょ」
「で、でも……」
狼狽する遥に、理人は穏やかに微笑む。
「遥、抱き締めてもいい?」
「え、あ、うん……」
真っ赤になって頷くと、ふわりと抱き締められた。
理人の匂いと体温に心臓がドキドキして、でも彼の腕の中はとても心地よい。
「キスはしてもいい?」
「う、うん……」
ぎゅっと目を瞑ると、唇が重なった。唇の感触を楽しむように、何度も啄まれる。
ぬるりと唇を舐められ、薄く開くと、舌が差し込まれた。
「ふぅ……んっ」
一気に体の熱が上がる。
理人の舌で舌を擦られ、ぷるりと背筋が震えた。
丁寧に舌を舐め、上顎をなぞり、余すところなく口内を貪られる。
こんなに激しいキスははじめてで、遥は送り込まれる唾液を必死に飲み下す。
キスが気持ちよくて頭がぼうっとして、だんだんなにも考えられなくなる。
ぴちゃぴちゃと響く水音に煽られ、体が火照ってきた。下半身に熱が集まる。
「ん、んんっ……あ、ん、んんぅっ」
足が震え、遥は理人にしがみついた。
角度を変え、舌を絡ませ、深く口づける。
動き回る舌に翻弄され、くらくらした。
瞳が潤んで、息も乱れ、遥はただ彼のキスに溺れるだけだ。
ガクッと遥の膝が折れた。すかさず理人が体を支えてくれる。けれどその拍子に唇は離れてしまった。
荒い息を吐きながら、遥は濡れた理人の唇を物欲しげにじっと見つめる。
もっとしたい。もっともっとキスしてほしい。
熱に浮かされた状態の遥を見て、理人は微笑む。
「気づいてる、遥?」
「は……え……?」
「さっきからずっと、俺の脚に擦り付けてるの」
「……っあ」
言われて気づいた。自分が理人の太股に股間を擦り付けていたことに。
「うわぁっ……!!」
慌てて理人から離れる。足に力が入らなくて、床にくずおれた。
「ごごごめん、気持ち悪いことして!!」
遥は必死に謝る。
無意識に勃起したぺニスを擦り付けてしまった。エッチはしないとか言いながら、なんてことをしてしまったのだろう。
ショックで瞬時に萎えてくれたのはよかったが、とんでもない失態を犯してしまった。
「謝らなくていいよ。全然気持ち悪くないし」
理人は笑って許してくれたが、遥は深く反省した。
「じゃあ帰ろうか。手伝ってくれてありがとう、遥」
「う、うんっ」
そのまま二人で一緒に帰った。
帰り道、理人のキスを思い出してはドキドキして体が熱くなって、考えてはだめだと自分を律し、それでも頭から離れず、遥はずっと挙動不審だった。
それから、二人きりになると理人はいつもキスをしてくるようになった。まるでセックスのような濃厚なキスを。
遥はキスは拒めない。キスまで拒んでしまったら、本当に振られてしまうかもしれない。それに、遥も理人とキスがしたい。
けれど、脳を犯されるような深く長いキスは遥には刺激が強すぎる。どうしても下半身が疼いてしまうのだ。それでも股間を擦り付けないよう必死に耐えている。
今日もまた、二人きりになるとキスをされた。
唇を甘噛みされ、ちゅっと吸われる。
深いキスを求め、遥は催促するかのように自然と自分から口を開いてしまうようになっていた。
けれどいつものように舌が入ってきてくれなくて、焦れた遥が舌を伸ばせば、理人の口内に引き込まれちゅるちゅると舌を吸われる。
「ふぅっ、ン……っ」
舌をねぶられる感触にうっとりしていると、腰に手を回された。理人の大きな掌が、遥の細い腰を撫でる。
「んんっ……ぁ……ふ、ぅ……っ」
腰を撫でる手つきは焦れったくなるほど僅かなもので、けれど腰から臀部にかけての際どい箇所を撫でられ、ぞくぞくと体が震えた。
唇は離さないまま、焦らすような動きで腰を撫でられ、遥の体はじりじりと体温を上げていく。下腹に熱が集まり、ぺニスに触れたくて、触れてほしくて堪らなくなる。
ギリギリまで熱を高められた状態で、理人の唇と手は離れていった。
思わず縋りついてしまいそうになるが、なけなしの理性でそれを押しとどめた。
そして翌日もまた、二人きりになるとキスをされた。
もう、唇が少し触れ合っただけでも期待で体が火照ってしまう。
理人は色んな角度から唇を重ね、はむはむと食み、舐めて遥の唇を味わう。唇だけを執拗に愛撫され、口内も味わってほしくて、遥はねだるように舌を伸ばして理人の唇を舐めた。舐めるだけでなくちゅうちゅうと唇に吸い付く。
必死になってキスをねだる遥に、理人は少しだけ意地悪な笑みを浮かべた。
艶を帯びた彼の瞳に、ぞくりとする。
「舌を出してごらん」
「ん……」
遥は素直に舌を伸ばす。
伸ばした舌に理人の舌が触れ、絡み合う。
遥は夢中になって彼の舌を舐めた。
理人の手が遥の頬に添えられ、そのままするりとずれて、耳に触れた。
「ふぁっ……」
舌を触れ合わせたまま、耳朶を優しく揉まれる。そっと、もどかしくなるほどの強さで耳を撫でられ、そのもどかしさに遥は煽られていく。
「ぁん……っ」
爪の先でかりっと耳の内側を柔らかく掻かれ、遥は思わず舌を引っ込めてしまう。
「だめだよ、遥。ちゃんと舌を出して」
「ご、め……」
思考が蕩けている遥は、なにも考えず言われるままにもう一度舌を伸ばした。
ただ理人のキスが気持ちよくて。触られるとぞくぞくして。
それだけで頭がいっぱいになって、もっともっとと体が求めていた。
でも、理人がしてくれるのはキスだけだ。
遥の体はもうとっくに、それだけでは物足りなくなっている。
耐えきれず、遥は夜、自室で自慰に耽る日々を送っていた。
理人とのキスを思い出しながら、後孔にディルドを突っ込んでぺニスを擦る。
けれど、何度精を吐き出しても、満たされることはなかった。
心も体も、求めているのはこれじゃないと訴えている。
満たされず、熱は蓄積していく一方だった。
理人に触れたい。触れてほしい。その欲求はどんどん高まっていった。
そんな状態がつづいたある日の放課後。遥は理人と一緒に図書室にいた。並んで席に座り、苦手な英語の課題を理人に手伝ってもらっていた。
隣に座った理人が、耳元で囁くように説明してくれる。
彼の甘い声音を聞いているだけで、遥の体はじわじわと熱を持ちはじめる。息が上がり、頬が紅潮するのを感じた。
「遥? 聞いてる?」
「っ……う、うん」
耳に僅かに唇が触れ、びくりと肩が跳ねた。
せっかく理人が教えてくれているのだから集中しなくてはならないのに、彼の声に、匂いに、どうしても体が熱を帯びていく。周りには他の生徒もいる。そんな状況だというのに、下半身がむずむずと疼いた。
「じゃあ、次の問題ね」
理人は手に持ったペンで、プリントの問題を指す。
もう片方の彼の手が、遥の太股に置かれた。
「っ……」
ただ置かれただけで、遥は過剰に反応してしまう。
理人の体温が、布越しに伝わってくる。それを感じて、更に体の熱が上がった。
理人はプリントに視線を落として、問題の説明をしてくれている。
彼の声を聞きながら、太股に置かれた手に意識が集中する。
僅かに、撫でるように指が動いた。
「っ、っ……!」
遥は必死に声を押し殺す。そうしなければ、あられもない声を上げてしまいそうだった。
欲情した体は、手を動かしてくれることを望んでいる。そのまま撫でて、ぺニスに触れて、扱いてほしい。ともすれば自分から腰を突き出してしまいそうなほど、体が刺激に飢えていた。
太股に置かれた理人の指が、少しだけ内側へ動く。ぺニスに触れるギリギリのところで止まり、それ以上は動かない。
触れてほしくて、もうそれしか考えられなくなる。
「ねぇ、遥?」
耳元で囁かれ、顔を向けると理人が遥を見ていた。
いつもと変わらない穏やかで優しげな瞳。
けれどその瞳の奥に、確かな欲を孕んだ理人の雄を感じた。
心臓が跳ね、はあはあと激しく息が乱れる。アナルが疼いて、きゅんと締まった。
「そんな物欲しそうな顔をしてたら、遥が発情してるのバレちゃうよ?」
「っ……」
遥にだけ聞こえる声で、理人は言った。
彼の言葉通り、遥は確かに発情していた。
「ねえ、遥の発情した顔、誰かに見られてもいいの?」
「や……」
助けを求めるように理人の制服を掴んだ。
理人は極上の笑みを浮かべる。
「俺の家に行く?」
遥は躊躇することなく頷いた。
理人に後孔を穿られたい。それだけで頭がいっぱいだった。
促されるまま立ち上がり、図書室を出て学校を後にする。
歩いている間は人目も気にせずずっと手を繋いでいて、電車の中でもぴったりと寄り添われ、体の熱が冷めることはなかった。
理人の家に着いて、部屋に連れ込まれ、ドアを閉めると同時にキスされた。
「んんっ、ふ、ん……っ」
貪られるような激しいキスに、身も心もとろとろに溶かされる。
がくがくと膝が震え、力の入らなくなった遥の体はベッドへと運ばれた。
キスをしながら、手際よく衣服を脱がされる。気づけば一糸纏わぬ姿になっていた。
理人とはセックスしないという決意も、どうしてそんな決意を抱いたのかという理由も、既に遥の頭にはなかった。
「ふぁっ……あ、りひと……」
唇が離れ、だらしなく開いた口の端から涎が垂れた。
散々に吸われた唇は、唾液にまみれてじんじんと熱い。
瞳は蕩けたように潤み、頬は赤く色づいている。遥の恍惚とした表情に、理人は満足げに微笑んだ。
理人の視線にぞくぞくして、ぶるりと体が震える。指一本触れていないのに、ぺニスは勃ち上がって鈴口から蜜を滲ませていた。
理人は遥の胸に顔を埋め、小さな突起を舐め上げる。
「ひぁんっ」
途端に、甘い悲鳴が口から漏れる。
ぷくっと尖った乳首を擦るように舐められ、快感にびくびくと身悶えた。
「あっ、あっ、あんっ」
「気持ちい? 遥」
「いい、きもちぃ、あんっ、あっ、あぁっ」
口と指で両方の乳首を愛撫され、ひっきりなしに喘ぎ声が上がる。
こんな声、理人に聞かせちゃだめなのに……と、頭の片隅でそんな考えが過る。
でも、どうして聞かせちゃだめなのだろう。
「遥の可愛い声、もっと聞かせて」
理人に言われて、そんな考えは掻き消えた。
だって、大好きな理人が聞きたいと言ってくれているのだ。ならば、声を我慢する理由なんてない。
「あぁんっ、あっ、りひと、気持ちいい……っ」
「じゃあもっと弄ってあげるね」
素直に声を出す遥を誉めるように、理人は快楽を与えてくれた。
遥はただ、与えられる快楽に溺れる。
「あっ、すき、ちくびすき、きもちぃよぉっ」
「たくさん弄ったから、こりこりに固くなったね。色も濃くなって、すごくいやらしいよ、遥の乳首」
「ふぁっ、あっ、あんっ」
指で弾かれ、びくんっと腰が跳ねた。勃起したぺニスがぷるっと揺れる。
「ああ、おちんちんももう固くなってるね。まだ触ってないのに、もうぬるぬるだ」
「ひんっ」
ぺニスを掌に包まれる。先端は先走りで濡れそぼち、擦られるとくちゅくちゅとぬめった音が耳に届いた。
数回扱かれただけで、すぐに限界がやってくる。
「あんっ、あんっ、もういく、いく、りひと、いっちゃうっ」
「いいよ、一回出してごらん」
「あっ……っ~~~~!」
擦る手の動きが速くなり、遥はあっさりと絶頂を迎えた。ぴゅくぴゅくと精液が遥の体に飛び散る。
「気持ちよかった?」
「ん……りひとの、手、気持ちよかった……」
「イッてるときの遥の顔、すごくエロくて可愛かったよ。イッたあとのぼんやりしてる顔も可愛いね」
褒められて、嬉しくなる。理人に可愛いと言ってもらえるなら、どんな顔だって見せられる。
「遥、腰上げて」
素直に腰を上げるとその下にタオルを敷かれた。
それだけでアナルが期待に蠢き、自ら脚を広げてそこを晒してしまう。
理人が喉の奥で笑った。
「待ちきれないって顔してるね。ここも、早く欲しいってぱくぱくしてる」
「あんっ」
アナルを撫でられ、僅かな刺激にさえ過敏に反応してしまう。
理人はジェルを手に取り、解すように後孔に塗りつける。
遥は無意識に腰を突き出し、自分から指を迎え入れた。
「ひぁっ、あっ」
「遥ってば、自分から入れちゃうの? そんなにほしかった?」
「んあぁっ、ほしかった、あっ、あぁっ」
「すごいね、どんどん飲み込んでく。指一本じゃ全然足りないね」
「ひゃんっ」
ずぶっ、ずぶっと、二本、三本と指が差し込まれる。遥の後孔は喜んでそれを受け入れた。
「遥のここ、おまんこみたいに蕩けて俺の指に吸い付いてくるね。こんなになるまで自分で弄ってたの?」
「あっ、あっ、ひっ」
「ねぇ、遥? 自分でおまんこにしたの?」
「ひうぅっ」
前立腺を強く擦られ、遥は悲鳴を上げた。
「遥?」
「あっ、した、自分でした、自分で弄っておまんこにした、あっ、んんっ」
「へぇ、どんな風に?」
「ん、りひとの、こと、考えながら、んあっ、あんっ、おもちゃ、入れた……っ」
「自分で玩具ずぼずぼしたの? どれくらい?」
「したの、ずぼずぼ、ひっ、う……たくさん、んっ」
じゅぽじゅぽと、三本の指が何度も出し入れされる。溢れるほどジェルを塗り込まれ、腸壁はもうぐずぐずに蕩けていた。
快楽に乱れる遥の姿から、理人はずっと目を離さない。
「そっか。じゃあ、なんで俺とエッチしないって言ったの?」
「んんっ……?」
思考が溶けて、うまくものを考えられない。
どうして理人とセックスしないって決めたんだっけ?
「遥? どうして?」
「んあぁっ、あっ、待っ……」
「教えて、遥」
「ひああぁっ」
前立腺を揉み込むように擦られ、強烈な快感に全身が痙攣する。
「らめ、らめ、それやめっ、ひっ、ひっ、ああぁっ」
「じゃあちゃんと答えて」
「あっ、待って、待って、ひんっ」
「ほら、頑張って」
「っ~~~~!」
快楽に犯されながら、必死に理由を思い出す。
そして思い出したまま口に出した。
「俺、おれ、おんなのこじゃないからぁ……っ」
「うん?」
「りひとが、おんなのこと、比べて、がっかりして、あっ、俺のこと、嫌いになっちゃうかもって、思って……っ」
前立腺を嬲っていた動きが止まり、遥はふうふうと荒い呼吸を繰り返す。
「ふぅん、そんなこと考えてたんだ」
「んぁんっ」
にゅぽっと指が引き抜かれる。
理人はズボンからぺニスを取り出した。
反り返った肉棒は、細身の理人に似合わず太くて長い。浅黒く、血管が浮かび上がるその見た目はとても卑猥だった。
遥はその肉塊から目が離せなくなる。
「りひとの、おちんぽ……」
ずっとほしかったものを目の前にして、遥の瞳は情欲に濡れる。
硬い亀頭をアナルに押し付けられ、期待に体が震えた。
待ちきれず腰を浮かせれば、離れていってしまう。
「あっ、やぁ……っ」
「だめだよ、遥」
「や、どぉして……?」
「遥は俺とエッチしたくないんだよね?」
「ふぇっ……?」
「だったら、これはいらないよね?」
理人が見せつけるように自身の陰茎を擦る。
差し出された大好物を口の前で取り上げられた気分だ。
切なくて、遥は涙を零して懇願する。
「やぁ……ごめんなさい、お願い、ほしいの、りひとのおちんぽほしいよぉっ」
「これが欲しいの?」
「ごめん、ごめんなさい、お願い、入れて、りひとのおちんぽで、おまんこずぽずぽしてぇ」
「じゃあ、もう俺とエッチしないなんて言わない?」
「言わない、言わないからぁ」
泣いて許しを請うが、理人は根に持っているのかなかなか許してくれない。
アナルを亀頭で擦りながら、泣きじゃくる遥を意地悪く見下ろす。
「ごめんなさいぃ、お願い、許して……っ」
「これだけ欲しがってるくせに、よくエッチしないなんて言えたね」
「だって、だってぇ、りひとに嫌われたくなかったんだもん……りひとのこと好きだから、嫌われるかもって思ったら怖くて……ふ、うぅ……っ」
「そんなに俺が好き?」
「好き、大好き、ずっと、りひとだけが、好き」
まっすぐに思いを伝えれば、理人は嬉しそうに微笑んだ。
「俺も好きだよ、遥。遥が思ってるよりずっと好き。嫌いになったりしないよ」
「……許してくれる?」
「まあ、今回のことは俺の今までの行いが原因でもあるだろうしね」
苦笑し、理人は遥の両脚を広げて抱えた。
「俺の気持ちがどれだけ重いのか、これからじっくり教えてあげないとね」
「ひ、あっ」
ずぷっと、アナルに亀頭がめり込む。そのまま、ずぶずぶずぶっと奥まで押し込まれた。
「あっ、あ──ッ!」
腸壁を一気に擦り上げられ、意識することなく体が勝手に射精していた。噴き出した精液が、胸元にまで飛んだ。
射精の余韻に浸る余裕もなく、腰を掴まれ、がつがつと内奥を突き上げられる。
「はひっ、ひ、あっ、あんっ」
射精したばかりで前立腺を抉るように擦られ、辛いはずなのに体は悦んで快楽を貪る。待ち詫びたものを漸く与えられ、どんな刺激さえも貪欲に受け入れてしまう。
「ひぃっ、あっ、あっ、あっ」
「どう? あんなに欲しがってた俺のちんぽは?」
「あんっ、しゅごい、りひとのおちんぽきもちぃっ」
「玩具とどっちが気持ちいい?」
「りひと、りひとのおちんぽっ、ひんっ、りひとのおちんぽがすき、すきぃ、あっ、あんんっ」
「好きなのは俺のちんぽ?」
「りひと、りひとがしゅきなのっ、ひぅっ、しゅき、あぁっ」
絡み付く腸壁を、ぐちゅぐちゅと掻き混ぜられる。
未開通の最奥まで犯され、遥は狂うほどの快感によがりつづけた。射精もしてないのに絶頂に達し、そこから下りてこられなくなる。
「ひっ、いって、いってる、あぁっ、もぉいったのに、ずっといって、止まらな、あっ、あぁっ、あ──っ」
「すっごいね、遥のおまんこ。ずーっと痙攣しておちんぽ美味しそうにおしゃぶりしてるよ」
「あんっ、きもちい? はるかの、おまんこきもちいい?」
「うん、このままずっと中に入れてたいくらいだよ」
「うれひぃ、もっと、あっ、はるかのおまんこで、きもちよくなって、ひんっ、あっあぁっ」
ぬちゅぬちゅとジェルの粘つく音とぱんぱんと肉のぶつかる音が、どんどん激しくなる。
「遥、中に出すからね。遥のおまんこに精液いっぱい出すよ」
「あぅっ、出して、いっぱい、りひとのせーしほひぃっ」
腕を伸ばして強く理人にしがみつく。
びゅるるっと、最奥に熱い体液を注がれるのを感じた。胎内を温かいもので満たされ、幸福感に包まれた。
体が弛緩し、腕がシーツの上に落ちる。
乱れた呼吸を整えながら、とろんと瞼が下りていく。心地よい充足感に、このまま眠りに落ちてしまいそうだ。
けれどそれを阻むように、強く乳首を引っ張られた。
「ひんっ」
「だめだよ、遥。遥のおまんこが俺のちんぽの形を覚えるまで、まだまだいっぱいおまんこぐちょぐちょにするんだからね」
「ひ、あっ、あぁんっ」
「遥ももっと、俺の精子でおまんこいっぱいにしたいよね?」
「は、はひぃ……おまんこ、いっぱいにしてぇっ」
完全に理性の飛んだ遥は、求められるまま彼の欲を享受し、身も心も溢れるほどに満たされた。
「もう、俺にセフレ作れなんて言わないよね?」
「……すみませんでした」
めちゃくちゃセックスしたあと、お風呂に入れられ、シーツを取り替えたベッドに再び寝かされた。
ぐったり寝そべる遥は、自分の発言を深く反省させられていた。よくよく考えた上での発言だったが、恋人二人の問題を一人で悩んで解決しようとするのはよくないのだと学んだ。
ベッドの横に立っている理人が、遥にスマホを差し出してくる。
「今日は外泊するって、家に連絡して」
「え……?」
「今日、俺の親いないから」
「で、でも……」
もう外は暗いが、帰れない時間ではない。
躊躇う遥に、理人はにっこりと笑う。
「言っておくけど、まだ終わってないからね。遥が二度とおかしなこと考えないように、しっかり教え込むから」
「……え?」
「帰らないよね?」
「う、うん……っ」
顔を赤くしたり青くしたりしながら、遥は母親に連絡した。
明日は学校も休みなので問題はない。ひょっとして、それを見越して家に連れてきたのだろうか。
だとしたら図書室でのあれはわざとで、遥を家に連れてくるためにあんなことをしたのか。でも図書室での行為も、その前のキスがそもそもの引き金となっている。ということは、何度も繰り返されたあのキスは遥を追い詰めるものだったのだろうか。
そこまで考えたところで、理人にスマホを取り上げられた。
「だめでしょ、遥。俺と一緒にいるのに考え事なんて」
「あ……」
「まずはご飯を食べようか。立てる?」
「う、うん」
「ご飯のあとに、またたくさんおまんこずぽずぽしてあげるからね」
「うん……」
経緯はもうどうでもよかった。
理人に嫌われることはなかったし、自分が思っているよりも理人は遥を好きでいてくれるのだと知ることができたのだから。
遥は羞恥と期待に頬を真っ赤にしながら、差し出された理人の手を取った。
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