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確定未来

 その日、悠希(はるき)は高校の寮に帰る前に駅で買い物をする予定だった。いつも一緒に行動している友人は都合がつかなかったので、一人で駅に向かっていた。  その途中。道端におじいさんが倒れていた。悠希は慌てて駆け寄る。 「じいちゃん、大丈夫か!?」  揺さぶらないよう、ゆっくりと助け起こす。  おじいさんは目を開き悠希を見た。 「おお、なんて心優しき少年じゃ……。誰もが見て見ぬ振りで通り過ぎていってしまったのに、少年は迷わず私を助けようとしてくれた」 「そんなんいいから! 救急車呼んだ方がいいのか!? それとも家族に連絡するか!?」  赤の他人とはいえ、倒れていたお年寄りを放っておくことなどできない。意識ははっきりしているようで安心した。 「いやいや、それには及ばんよ。少年の優しさに触れて、すっかり元気になったわい」 「はあ!?」  にこにこと微笑むおじいさんに、まさか仮病だったのか、と不審に思う。いや、なんのために?  困惑する悠希に、おじいさんは言った。 「心優しき少年に、是非お礼をさせてくれ」 「え、いや、別に、なにもしてないし……」  悠希はふるふると首を横に振る。  一見無害で優しそうなおじいさんだが、もしかして危ない人なのだろうか。  悠希は詐欺の可能性を疑った。逃げた方がいいのか、でも相手はお年寄りだ。 「遠慮することはない。こう見えてわしは神様なんじゃ。まあ、あまり力を持たない神だがな」 「はあ……」  もしかしたらこのおじいさんは、単に寂しくて話し相手がほしかっただけなのかもしれない。  そう思った悠希は、特に急いでいるわけでもないし、おじいさんの話を聞くことにした。 「そっか、すごいんだな、じいちゃん」 「わしを助けてくれたお礼に、少年には過去か未来、どちらかを見せてあげよう」 「過去か未来?」 「どちらが見たい?」 「うーん……未来かな」  過ぎてしまった過去を見てもどうにもならないし、見れるのならば未来が見たい。  もちろん悠希は本気にしているわけではなかった。過去や未来が見れるはずがない。 「そうかそうか、未来じゃな」  うんうんと頷いて、おじいさんは悠希の手を握った。 「さあ、見ておいで」 「は……?」  次の瞬間、周りの景色ががらりと変わった。 「え、え……!?」  外にいたはずなのに、悠希は見覚えのない部屋の中に立っていた。  恐らくここは寝室なのだろう。なぜなら、大きなベッドが部屋の中央に鎮座しているから。  そしてそのベッドの上には、全裸で絡み合う二人の男。  悠希は目を瞠った。  自分がベッドの上で男に組み敷かれていたのだ。 「は、え……?」  くらくらと眩暈を感じ、悠希はよろけた。  悠希の姿は見えていないのか、ベッドの上の二人はこちらには見向きもしない。  今よりも成長しているが、目の前にいるのは確かに自分だ。  そして、もう一人の男は。 『はあっ、悠希、気持ちいい?』 『あっあっあっ、いいっ、気持ちいいっ』  ベッドの上の悠希は四つん這いになり、もう一人の男はその上に覆い被さっている。  悠希のアナルは、ずっぽりと男の陰茎を咥え込んでいた。  ベッドの軋む音と、粘ついた水音と、肉のぶつかる音が生々しく室内に響いている。  そして、女のような自分のはしたない喘ぎ声も。 『あぁっ、奥、奥、そんなぐりぐりしちゃ、あっあっ』 『悠希、奥、ぐりぐりされるの好きでしょ? っ……ほら、すっごい反応。ぎゅうぎゅう締まって、悦んでる』 『らって、いっちゃ、そんなされたら、あっ、いっちゃ、いく、いくからぁっ』 『いっていいよ。っていうか、もうずっといきっぱなしでしょ、悠希は』 『あっあっ、あっ、~~~~!』  激しい音を立てて突き上げられ、未来の悠希はがくがくと体を震わせている。いく、と言いながら、ぺニスからはなにも出ていない。ただ突き上げられる動きに合わせてぷるぷると揺れ、数滴の雫を零しただけだ。  力が抜けてがくりと上半身が崩れる悠希の腰をしっかりと掴み、男は容赦なく律動を繰り返す。  乱暴にも見えるその行為に、しかし未来の悠希は恍惚とした表情で嬌声を上げつづけていた。  ぴたりと動きを止めた男が、ずるずるーっと肉棒を引き抜いていく。 『あっ、やら、抜いちゃ、やあぁっ、らめ、抜かないでぇ……っ』 『はは、悠希はほんとにおちんぽ大好きだね』 『しゅき、しゅき、おちんぽしゅきなのっ、お願い、入れて、ぇ、ひああぁっ』  ぐぷんっと、また根本まで陰茎を突き入れられ、悠希は涎を垂らして歓喜の悲鳴を上げる。 『あっあっあーっ、はげしっ、おまんこ、壊れちゃ、あっ、ひっ、あぁんっ』 『おまんこ、いっぱいごちゅごちゅされて嬉しい?』 『うれひ、ぃ、あっ、も、うひろから、やらぁっ、顔見たい、ちゅ、したいよぉっ』 『可愛いね、悠希。じゃあほら、抜けないようにこっち向いて』 『んあっあっあっ、ごりごり、こしゅれるぅっ、ひはっ、は、あ、あっ~~っ』 『あは、またいったね』 『ちゅぅ、ちゅーして、お願……っ』 『ふふ、ほんとに可愛い』  二人は向かい合い、貪るように激しいキスを交わす。絡み合う舌が、混ざり合う唾液が、悠希の目にもしっかりと見えた。  キスに酔ったかのように、未来の悠希の瞳がとろんと蕩ける。 『はっ……ん、悠希はキス大好きだね』 『ん、ちゅ……しゅき、きもちいい、んっ、ふぅ……っ』  唇を重ねながら、男の手が未来の悠希の胸に触れた。柔らかくもない胸を揉み、乳輪を撫でる。その刺激に、未来の悠希はぴくぴくっと反応した。 『んむっ……ふ、ぁ……っ』  乳首をかりっと爪で引っ掻かれ、その反応は大きくなる。そのままくにくにと乳首を擦られ、我慢できなくなったのか、未来の悠希は口を離した。 『んはぁっ、あっあっ』 『悠希、気持ちいい?』 『ん、ん、気持ちぃっ、ちくび、しゅきっ』  まるで腫れたように肥大した乳首を二本の指で扱かれ、背中を仰け反らせる。  快感に打ち震えるその様子を見下ろし、男はうっそりと微笑んだ。 『悠希の体は気持ちいいとこばっかりだね』 『らってぇ、好き、だから、あんっ、触られたら全部、気持ちい、あっ、ひぅっ』 『俺が好き?』 『しゅき、しゅき、いっぱい触って、種付けして、孕ましぇて、そこ、そこ、おまんこの奥、子宮にいっぱいせーしかけて、あっあっ、いいっ』  悠希は目の前で繰り広げられる光景から目が離せない。ぎちゅぎちゅと出し入れされる陰茎を、穴が開くほど凝視する。  体が熱い。息が上がる。下半身が熱を持つ。  けれど、どんなに物欲しげに見つめようと、悠希は完全に蚊帳の外だ。 『はあっ、可愛いなぁ、悠希は……。今日もいっぱい中で出してあげるね、赤ちゃん作ろうね』 『うん、あかちゃ、つくぅ、の、は、ひっ、あっ』 『好きだよ、悠希』 『俺も、しゅき、あっあっあっあっ』  キスをし、抱き締め合う二人。  悠希は堪らなく羨ましかった。  思わず無意識に手を伸ばす。  そのとき。 「少年、時間切れじゃよ」 「は……?」  まるで全てをぶち壊すかのように頭に響いた声に、はっとする。 「見たい未来は見れたかの?」 「あ、え……?」 「ではな、少年」 「はっ……」  気づけば、悠希は元の場所に戻っていた。  部屋の中ではなく、もちろん目の前にベッドもない。おじいさんの姿もどこになく、悠希は一人で見慣れた道の端にしゃがみこんでいた。  心臓がどくどくと脈打っている。  状況が飲み込めず、頭の中は真っ白だ。  悠希は暫くその場から動くことができなかった。  結局悠希が動き出したのは日が暮れてからだった。今更買い物をする気にもなれなくて、駅には行かず寮へ帰った。   「悠希、随分遅かったね」  ドアを開けると、ルームメイトの(りつ)が部屋にいた。  彼を見て、悠希の心臓が跳ねる。一気に顔に血が上り、真っ赤に染まるのを感じた。  彼こそが、未来で悠希を抱いていた男だ。ルームメイトで、友達で、そして悠希の片思いの相手。  律の顔をまともに見ることができなかった。  脳裏に蘇る、未来の映像。  思い出すだけで、体温が上がる。  悠希は律が好きだ。でも、自分の気持ちを伝える気はなかった。告白なんてしたら、きっと嫌われる。気持ち悪いと思われる。それならば、友達のままでいいと思っていた。  でも、未来の二人は恋人同士のように体を重ねていた。彼は悠希のことを好きだと言っていた。  つまり、それは、二人は両思いで、告白すれば嫌われることもなくて、恋人になれるということではないか。  じゃあ、今、ここで好きって伝えたら、そうしたら律も好きって言ってくれて、そして、未来の二人のようにキスをして、抱き締めてもらえるのか。キスして抱き締めて、それで、あんな風に──。 「悠希っ、どうしたの!?」 「は……!」  肩を揺さぶられ、意識を引き戻された。  律が心配そうに顔を覗き込んでくる。 「どうしたの、ぼーっとして。顔も赤いし。体調悪い?」 「全然大丈夫! ごめん、歩き回って疲れたみたいだ」 「そうなの? これから食堂行くけど、悠希は?」 「俺はいいや。食べてきたから。風呂行って、もう寝るわ」  律から視線を逸らし、着替えを持ってそそくさと部屋を出た。  なにも食べてはいなかったが、なんだか胸がいっぱいで食欲はなかった。  寮の大浴場で体を洗い、すぐに部屋に戻ってベッドに上がる。  今後のことを冷静に考えたかった。  冷静にならなくてはと思うのに、どうしても胸の高鳴りが治まらない。  頭まで布団を被り、どうにか気持ちを落ち着ける。  告白、してもいいのだろうか。告白すれば、その時点で律の恋人になれるのだろうか。それならば、今すぐにだって告白したい。  でも、と悠希は思い直す。  あの未来は、いつの未来なのだろう。二人は明らかに今よりも成長していた。恐らく二十歳は越えていた。  あの二人が、いつどうやってあんな関係に進展したのかわからない。  告白は悠希からしたのか、それとも律からしたのか。  悠希は今まで一度も、彼に恋愛的な意味で好かれているだなんて感じたことはない。だからこそ、片思いのままで終わらせようと思っていたのだ。  未来の律は悠希を好きだと言ってくれた。でも、彼はいつから悠希のことを好きなのだろう。既に好きなのか、それともこれから好きになるのか。今後、律が悠希を好きになるような出来事が起きるのか。そのあとで二人は結ばれるのかもしれない。  だとしたら、早まって告白してしまったらうまくいかなくなるのではないか。悠希のことをまだ好きではない律に告白すれば、やっぱり気持ち悪いと思われるのではないか。それとも、悠希が告白することによって悠希を意識してくれるようになるのだろうか。  思考はぐるぐると回りつづける。  あの未来を見たときは、心の底から歓喜した。律の恋人になれるのだと、喜びでいっぱいだった。  でも、あの未来に辿り着くにはどうすればいいのかわからない。悠希からはなにも行動を起こさない方がいいのか。それとも悠希が行動を起こさなければなにも起きずに終わってしまうのか。  悠希は愕然とした。  もしかして、悠希が未来を見たことによって未来が変わってしまうのではないか。それともあの未来の悠希は、未来を見た悠希なのだろうか。  考えすぎて頭がこんがらがってくる。  どうしよう。どうすればいいのだろう。  律は今、悠希のことをどう思っているのだろう。聞けば傷つくだけだと、今まで恋愛の話は一切してこなかった。こんなことなら、好きな人がいるのかどうかくらい訊いておけばよかった。いきなり訊いたら変に思われるだろうか。  でも、知りたい。早く恋人になりたい。あんな風に律に抱かれたい。  未来の二人のセックスは、ぎこちないものではなかった。既に何度も何度も体を重ねている、慣れた触れ合いだった。悠希の体はすっかり律に馴染み、なんの苦痛もなく受け入れていた。あんな風になるまで、何度も何度も抱かれたのだ。  ぞくりと体が震えた。  今まで聞いたことのない低く熱っぽい律の声音を思い出すと、容易く下半身に熱が溜まる。  あの律が。綺麗で優しくて穏やかな、律が。悠希の前で下ネタなんて口にしたことのない律が。いやらしい言葉を囁き、手加減なんて感じられないほどの激しい行為で悠希を抱いていた。  自慰のときに何度か弄ったことのあるアナルが、きゅんと疼いた。  ここに、律のあの大きな陰茎が入ってくるのだと思うと、想像だけで射精してしまいそうなほど興奮した。  根本まで埋められて、出し入れされて、そして、奥にいっぱい彼の精子を注がれるのだ。  悠希はもじもじと腰を揺すった。  すっかり欲情してしまったせいで、その夜はかなり早くに布団に入ったにもかかわらず、なかなか眠ることができなかった。  体を揺すられ、悠希は目を覚ます。 「悠希、もう起きないと遅刻しちゃうよ」 「ん……」  目を開けると、律がこちらを見下ろしていた。 「りつぅ……」  寝惚けた悠希は無意識に彼に手を伸ばす。 「悠希?」  訝しげに名前を呼ばれ、慌てて手を引っ込めた。  妄想と夢と未来と現実がごっちゃになって、危なく律に襲いかかるところだった。 「あ、ご、ごめん」 「悠希、やっぱり体調悪いの? まだ顔赤いよ」 「そ、そうかも、なんか、熱っぽくて……」 「大丈夫?」 「うん、ちょっと熱っぽいだけだから、多分、今日一日寝てれば治ると思う」 「じゃあ、今日は俺も学校休んで傍にいるよ」 「そ、それはダメだ! 律はちゃんと学校行け! ほんと大したことないから! 授業受けて、あとで俺にノート見せて!」  心配してなかなか出て行こうとしない律を、無理やり部屋から追い出した。  律は体調が悪化したりなにかあったらすぐに連絡してと言い含め、飲み物や解熱剤を用意してくれた。  心配してくれる律には申し訳ないが、ただの寝不足と欲求不満だ。昨夜は悶々して殆ど眠れなかった。  だって、同じ部屋で律が寝ているのだ。今までは意識しないようにと努めていたが、あんなものを見たあとでは意識せずにはいられなかった。  もうずっと、下半身がじんじんと疼いている。吐き出せば、この疼きも少しは治まるだろう。  悠希は下着ごとパジャマのズボンをずらし、既に勃ち上がりはじめているぺニスを握った。 「は、ふ……っ」  上下に擦りながら思い出せば、未来の悠希は全くぺニスに触れていなかった。律も見た限りでは一度も触らなかった。  触れられもせずに、何度も絶頂を極め、快楽に溺れていた。  ぺニスへの刺激より、未来のあの光景を思い出すことで快感を得てしまう。  アナルがむずむずして、我慢できなくなった。  ハンドクリームの中身をたっぷりと手に取り、それをひくつく後孔に塗り込める。 「ふぁっ、あっ……」  ゆっくりと指を埋め込んでいく。  未来では指ではなく、律の肉棒がずぼずぼと抜き差しされていた。  想像して、内壁が指を締め付ける。  欲しいのは指じゃない。もっと太くて大きいものを、もっともっと深くまで捩じ込まれたい。  無意識に指を増やし、綻んだ後孔をくちゅくちゅとまさぐる。  そういえば、未来では乳首も愛撫されていた。  今まで自慰のときにそこに触れたことはなかった。  でも未来の悠希は律に弄られ、気持ちいいと快感に声を上げていた。  律の触り方を思い出して、見よう見まねで乳首を捏ねる。 「あっあっ、りつ、りつぅ……っ」  後ろをぐちゅぐちゅに掻き混ぜながら乳首を擦り、悠希の口から甘えるような嬌声が漏れた。  すっかり忘れ去られたぺニスは、触らずとも完全に勃起し蜜をたらたらと零している。  乳首をかりっと引っ掻くと、快感が全身を走り抜けた。  「ひうぅっ」  見悶えた拍子に胎内に埋め込んだ指が前立腺を押し潰し、悠希は目を見開いて絶頂を迎えた。ぺニスから、びゅくぴゅくと精液が吐き出される。 「あっ、あっ……」  後ろと乳首の刺激で達したことに、悠希自身呆然とする。  そして精を放ったにもかかわらず、体の熱は未だに冷めていなかった。  あんな衝撃的な光景を見たあとでは、自慰だけではあまりにも物足りない。どれだけ指で後ろを弄っても、もどかしくて満たされない。 「ふぅっ……んん、律、りつ、好き……っ」  ここにいない律の名前を何度も呼んだ。 『好きだよ、悠希』  耳元に吹き込まれるように律の囁きが蘇り、ぶるっと体が震えた。 「好き、俺も好き、大好き、りつぅ……っ」  夢中になってアナルを穿る。  未来の二人はゴムもしないでセックスしていた。壊れるくらい激しく中を突かれて、悠希は涎を垂らしてよがり声を上げつづけていた。  完全に、律の女にされていた。雌の体になっていた。  ぞくぞくっと快感が走り抜ける。 「律、好き、して、俺を律のものにして……」  どれだけ律が恋しくても、今は自分で慰める以外にどうしようもない。  切ない気持ちを抱えながら、悠希は涙を零して自慰に耽った。  満足はできなかったが、溜まったものを吐き出せたので随分すっきりした。自慰で疲れ果ててぐっすり眠ることもできた。  夜には、律と一緒に食堂へ行ってご飯も食べた。食欲も回復し、もりもり食べる悠希の様子に律も安心したようだった。  しかし、悠希はずっと律の顔を見ることができなかった。いつも通りの態度を装いつつも、律の顔を見てしまえば、どうしても体が反応してしまう。  だから、食事のあといつものように律にお風呂に行こうと誘われても、悠希はそれを断らざるを得なかった。今、律の裸を見て正気でいられる自信がなかったのだ。全裸の律に襲いかかる自分を容易に想像できた。  だから悠希は適当な理由をつけて律と入浴の時間をずらした。律は不審に思っていたようだが、追及してくることはなかった。  それぞれ入浴を済ませてからは、課題をしたりゲームをしたり他愛ない会話をしながら過ごし、そして二人は同じ時間に就寝する。  電気を消し暗闇に包まれた室内で、しかし悠希は全く眠れなかった。やはりどうしても律の存在を意識してしまう。ちょっと顔を向ければ、視界に入る範囲に律がいるのだ。無防備に眠る律の姿がそこにあるのだ。暗いし距離はそれなりに離れているので寝顔までは見えないが、それでも同じ空間に律がいる。  昼間あれだけ吐き出したのに、もう体が火照りムラムラしてきた。  悶々としている間に時間は経過し、漸くうとうとしてきたら、今度は不安に襲われた。  もし律の夢を見て、寝惚けて現実の律に襲いかかったらどうしよう、と。万が一、そんなことが起こらないとは限らない。寧ろ自分はやりそうな気がする。  そう考えると、今度は眠るのが怖くなった。自分で自分が全く信用できない。  そして結局、その夜悠希は一睡もできなかったのだった。  翌日。悠希は当然寝不足だった。でも眠気を我慢して登校した。  授業を受けながら、なんとかしなくては、と頭を悩ませる。このままでは悠希はいつか寝不足で倒れてしまう。もう既に眠くて意識を失いそうだ。  うとうとしながらも、悠希は懸命に対策を考えた。 「今日から一週間、鈴木(すずき)の部屋に泊まることにしたから」  授業を終えて寮に帰り、部屋に入ると悠希はそう律に告げた。  鈴木は同じクラスの友人だ。彼のルームメイトだった生徒は退寮したので、今は一人で部屋を使っている。泊まらせてほしいと頼めば、鈴木は特に嫌がることなく了承してくれた。  唐突な話に、律は僅かに顔を顰める。   「一週間? 泊まるって……どうして、急に……?」 「鈴木に勉強教わりたくてさ。来月テストだから」 「勉強なら、いつも俺が教えてるのに?」 「ほら、律に頼りっぱなしで申し訳ないなって思って!」 「そんなの、俺は別に……」 「俺が気になるっつーか……毎回毎回テストのたびに律にわかんないとこ聞きまくって、邪魔だよなって思っちゃって」 「邪魔、なんて、俺は、そんなこと……」 「わかってる。こんなこと、多分今回だけだよ」  まだ律が納得できていないのはわかっていたが、悠希は荷物を纏め、努めて明るい態度で部屋を出た。  これは悠希の問題で、律は関係ない。だから気にしないでほしかった。なんでもないことなのだと伝えたくて、敢えて神妙にならないよう明るく振る舞った。  部屋に行くと、鈴木は「どうぞ」と迎え入れてくれた。  いきなり「今日から一週間泊まり込みで勉強を教えてほしい」という頼みを、すんなり受け入れてくれた鈴木に深く感謝する。  勉強は律と離れるための建前ではあったが、ちゃんと教わるつもりで来た。律には及ばないが、鈴木も常に成績上位なのだ。  早速みっちり勉強したあと、休憩がてら雑談する。  悠希はふと思い付いて鈴木に尋ねた。 「鈴木って、好きな子とかいるのか?」 「いないけど」 「じゃあさ、もし今鈴木に片思いの相手がいるとして」 「うん」 「数年後、その片思いの相手とラブラブな恋人になれる未来が確定しているとしてそれを知ることができたら、鈴木は今すぐその好きな人に告白するか?」 「しないけど」 「なんでっ?」 「恋人になれる未来が確定してるなら、告白しなくても恋人になれるってことだろ。なら俺は自分からはなにもしない」 「そ、そうなんだ……。じゃあじゃあ、未来が確定してなかったら? 恋人になれる未来も確実にあるけど、そうじゃない未来もあるとしたら?」 「それなら、告白するかな。自分からなにもしないで、ほんとになにもしないまま終わったら嫌だし」 「そっか……」  果たして、悠希の見たあの未来は確定されたものだったのだろうか。これから悠希がどんな行動を起こそうと、確実に訪れる未来なのか。  それがわかれば、こんなに悩むこともなかったのに。ちゃんとあのおじいさん──神様に確認しておけばよかった。でもあのときは、衝撃が大きすぎてそんな余裕などなかったのだ。 「それってなに? ゲームの話?」 「そんな感じ」  首を傾げる鈴木に、曖昧に頷く。  相談しても信じてもらえないだろう。それに下手に相談して、悠希が律を好きだということが知られてしまうのも怖かった。  自分がどうすればいいのかわからないまま、時間は過ぎていった。  この一週間、律とはあまり顔を合わせなかった。学校でも、休み時間は勉強を教わるからと鈴木と過ごした。  寮でも、時間が合えば食堂で一緒に食事をしたが、入浴時間は絶対に被らないよう細心の注意を払っていた。人目のある大浴場で律の裸を見て勃起なんてしたら、悠希はもう退学するしかない。  そうして律と距離を置いたことにより、悠希の気持ちも随分落ち着いた。  そして思ったのだ。あれは、自分の願望が作り上げた白昼夢のようなものだったのではないかと。  嬉しくて舞い上がってしまって冷静な判断もできなくなっていたけど、今思えばあんなことあるはずがない。おじいさんが道端に倒れていて、助け起こしたらそのおじいさんは神様で、助けてくれたお礼と言って未来を見せてくれるなんて。  そんなこと現実に起こるわけがない。  あの未来はただの妄想だ。願望の塊なのだ。  そう考えると、もう、そうとしか思えなくなった。  一人で妄想して、その妄想に振り回されるなんて滑稽すぎる。  自嘲しながら、悠希は一週間ぶりに自室に戻った。 「律、ただいま」 「悠希……」  部屋に入ると、律はなぜか驚いたように僅かに目を見開いた。 「戻ってきてくれたの?」  掠れた声でそんなことを言われ、悠希は首を傾げる。 「当たり前じゃん。一週間だけって言っただろ」 「もう、戻ってこないかと思った」 「そんなわけないだろ。俺の部屋はここなんだし」  大袈裟に言われ、戸惑った。思った以上に律は悠希が部屋を空けたことを気にしてしまったようだ。自分の行動が彼を傷つけてしまったのかもしれないと思うと胸が痛む。自分の妄想が原因でこんなことになってしまって、非常に申し訳ない気持ちになった。 「ごめんな、律」 「どうして謝るの?」 「そ、それは……」  言い淀む悠希の腕を律が掴んだ。 「律……?」  ぐいっと腕を引かれ、悠希は彼のベッドの上に乱暴に突き飛ばされた。  呆然としている間に手首を紐で縛られ、頭上でベッドに繋がれた。  悠希はなにが起きたのかわからない。  律はいつも優しくて、彼にこんな風に乱暴に扱われるのははじめてだった。  呆けたように律を見上げる。 「律、なに、どうしたんだよ……?」  律は今まで見たことがない冷ややかな双眸でこちらを見下ろしていた。  心臓がぎゅっと締め付けられる。  まさか嫌われたのだろうか。  そう考えて、頭が真っ白になる。  反射的に、縋るように声を上げていた。 「律、ごめん、律、謝るから……っ」  嫌いにならないで、という言葉は遮られて口にできなかった。 「ごめんって、なにが?」 「お、俺……ごめ、許して……」  青ざめた悠希を見る律の顔は無表情だ。いつもの穏やかな笑顔が嘘のように、なんの感情も浮かんでいない。 「許して? やっぱり、俺から離れる気だったんだ?」 「え? なに、なに言って……」 「俺から逃げようとしてるんでしょ?」  平坦な声で告げられる言葉の意味を理解できない。 「逃げる、なんて……そんなわけないだろ。俺が、律から離れるなんて、そんなこと……」 「じゃあ、どうして俺を避けてたの?」 「そ、それは……」  口籠る悠希に、律は唇の端を吊り上げる。 「ほら、やっぱり逃げようとしてたんだ」 「ち、違、違う……」 「でもだめだよ。俺から離れるなんて許さない。絶対逃がさないから」 「え……?」  のし掛かってくる律。近づく二人の距離。そして、唇が重なった。  悠希は瞠目する。  はじめて感じる律の唇の感触に、じわじわと体温が上がっていった。  ぴったりと重なった唇は、呆気に取られている間に離れてしまった。  真上から悠希の顔を覗き込み、律は笑う。 「顔真っ赤だよ、悠希。可愛いね。はじめてだった?」  律の言葉に、更に顔が赤くなる。その反応に、律はクスクスと笑みを零した。 「律、どうして、こんなこと……」 「悠希が好きだから」 「は、え……?」 「悠希が逃げようとするなら、俺から離れられないようにしてあげる」 「え、ま、待っ……んんっ」  再び口付けられる。先程の重ねるだけのものとは違う、深いキスに初心者の悠希は翻弄された。  ちょっと待ってほしい。今、好きって言ったのか。好きって言われたのか。冷静に考えたいのに、貪るような濃厚なキスに思考が蕩けていく。  侵入してきた舌が、口腔内を蹂躙する。上顎を擽られ、ぞくぞくっと背筋が震えた。 「ふぅ、んんっ……はっ……」  息継ぎも許さないほど、執拗に嬲られる。  律とのキスに興奮して、息苦しささえどうでもよくなっていた。必死に舌を絡め、流し込まれる唾液を夢中で飲み干す。  ちゅうっと吸い付く悠希の口内から、律がねっとりと舌を引き抜く。離れていく舌を、名残惜しげに見つめた。 「ふぁっ……律ぅ……」 「ふふ、可愛い。そうやって媚びて、許してもらおうとしてるの?」 「ち、が……」  蕩けた脳内に、そういえばどうしてこんなことになってるんだっけ、という疑問が浮かぶ。  考えなくてはいけない。律と話をしなくてはいけない。そう思うのに、うまく頭が働かない。  律が服を捲り上げ、悠希の肌を露にする。晒された胸元に、律の手が触れた。敏感になった肌は、そっと撫でられただけで震えるほどの快感をもたらした。 「は、はあっ……ん……」 「悠希の可愛い乳首、ずっと触りたいって思ってたんだよね」  言いながら、律の指が乳輪を撫でる。くるくると円を描き、乳首には触れようとしない。  焦れったさに、悠希は身を捩る。 「ほんと、律……俺の、触りたいって、思ってたの……?」 「気づいてたんでしょ、悠希。だから俺から逃げようとしたんだよね?」 「そんな、知らない……逃げない……っ」  ゆるゆると首を横に振るが、律が信じていないのは顔を見ればわかった。 「俺に触られて、どんな気分?」 「嬉し……うれひぃ、律……っ」 「逃げようとしてたくせに触られて嬉しいなんて、悠希は淫乱なんだね」  律は一向に乳首に触れてこない。ただ乳輪だけを撫でつづけた。  触られてないのに乳首はぷくっと尖り、刺激されるのを健気に待っている。  もう淫乱でもなんでもいい。早く触ってほしくて、それしか考えられなくなる。  悠希はねだるように胸を突き出した。 「お願い、律……ちくび、乳首触ってぇ……ひあぁっ」  きゅうっと乳首を摘ままれ、悠希は快感に背を仰け反らせる。 「あっあっ、りつぅ……っ」 「悠希、なんでそんなに乳首で気持ちよくなってるの? いつそんなの覚えたの? まさか鈴木に触らせたの?」 「ひっ、やっ、違……っ」  指で挟まれた乳首を強く引っ張られ、ぐりぐりと捏ねられる。 「じゃあなんでこんなことされて悦んでるの? こんなの誰に教わったの? 誰が悠希を乳首をいじめられて気持ちよくなるような体にしたの?」 「あ、ひっ、ちが、違うから、あっ、ひんんっ」 「違わないでしょ。ねえ、ずっと腰動いてるよ。気持ちよさそうに可愛く喘いで、なにが違うの?」 「そ、じゃ、なくて、んっ、あっ」  違うと説明したいのに、与えられる刺激にまともに言葉を紡ぐこともできない。発情した体は強く律を求めていて、このままでは快楽に流されてしまう。  感じてしまえば余計に誤解を深める。わかっていても体は快楽に素直に反応し、がくがくと腰が浮く。ズボンの中のぺニスはすっかり熱を持ち、股間を膨らませていた。 「んあっ、律が触るからぁ、だから、気持ちぃのっ」 「そうやって可愛いこと言って。でも許してあげないよ。俺なしじゃいられない体にして、逃げられないように監禁するからね」 「はぅん、んっ、かん、きん……?」  監禁? 律に監禁してもらえる?  そんな嬉しいことはない。歓喜する心と連動して、体も一層律を求めて疼きだす。  陶然となる悠希のズボンを、律は下着ごと一気に引き下ろした。ぷるっとぺニスが飛び出す。 「もうこんなに大きくして。乳首弄られてこんなになるなんて、やっぱり誰かに開発されたの?」  つうっと裏筋を指で撫でられ、悠希の体がびくんと跳ねる。 「ひぁっ、あっ、違う、してない、誰にも、触らせてない、から……っ」 「ほんとかなぁ?」 「はひんっ」  蜜を漏らす鈴口をにちゅにちゅと擦られる。 「あっ、だめ、それ、も、いっちゃ……っ」 「もう? 扱いてもないのに? それじゃあ誰にも触らせてないなんて、信用できないよ?」 「ひ、だって、だってぇっ」  このままでは、律に尻軽の淫乱だと誤解されてしまう。否定したいのに、律に触られているというだけで高揚し、体が言うことを聞かないのだ。  我慢しなくてはと思うのに、敏感な先端を執拗に撫でられ、すぐに限界が訪れる。はしたなく腰が浮き、羞恥に涙が滲んだ。 「らめ、いく、いく、も、出ちゃう、あっあっ、がまん、できな、んっ、あっ、だめっ」 「一生懸命腰振って、いやらしいね、悠希」 「ごめ、なひゃ、あっ、いく、律、りつ、あっあっあっ、っ~~~~!」  律の視線にさらされながら、悠希は絶頂を迎えた。びくびくと震え、ぺニスから精液を吐き出す。 「いっちゃったね、悠希」 「ご、め……ごめん、なさ……っ」 「どうして謝るの? やっぱり嘘ついたの?」 「ちが、違う、嘘、じゃな……」  懸命に首を振るが、こうなってしまってはまるで説得力がない。  律の冷たい視線が突き刺さる。  嫌だ。律にだけは、嫌われたくない。  怯える悠希の脚を、律は大きく広げた。  近くに用意してあったボトルを取り、律は中身を自分の手に出した。とろとろと滴るそれは、ローションだろう。 「ねえ、こっちも触らせたの?」  律の指がアナルに触れる。するときゅっとそこが締まった。その反応に、律の纏う空気が更に不穏なものになる。 「ねえ、誰? 誰に触らせたの?」 「してな、誰にも……っ」 「嘘ばっかり」 「ひぅんっ」  ローションに濡れた指を、一気に根本まで埋め込まれた。 「ほら、こんなに簡単に飲み込んで……。誰? 誰にこうされたの? 鈴木? 勉強なんて嘘ついて、ほんとは鈴木とこんなことしてたの?」 「は、あっ、うそ、じゃな、してない、あっあっ」  内部を広げるようにぐるりと指を回される。悦び、綻んだアナルは、すぐに二本目の指もすんなりと受け入れた。  ぐちゅぐちゅと濡れた音を立てながら、探るように指が動き回る。 「あっあっあっ、ひっ、ああぁっ」 「ここ、気持ちいいの?」 「あっ、いい、そこ、あっあっ、気持ちいいっ」 「鈴木にもいっぱい擦ってもらった? 鈴木にもそんなやらしい顔見せたの? 可愛い声でねだった?」 「しな、しない、んっ、りつだけ、あっ、ひぁっ」  前立腺をぐりぐりと擦られ、悠希は首を振り立てて快感に悶えた。  三本目の指を挿入され、ひくひく蠢く肉筒をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられる。 「お尻の中、おまんこみたいにぐちゅぐちゅにされて嬉しそうだね。あんあん喘いで、ちんぽ膨らませて、悠希がこんなに淫乱だなんて知らなかった」 「ひっあっあっあっ」 「鈴木のちんぽ咥えたの? 悠希の処女、鈴木が奪ったの? それとも他の誰か? いつ? どこで?」 「ち、あっ、してな、てぇっ、んあぁっ」 「どうして教えてくれないの? もしかして相手の男庇ってるの? そいつが好きなの?」 「ひあっ、待っ、はなし、聞い、あっはっ、んひっ」 「今すぐ忘れさせてあげる。悠希は俺のものだから。まずはしっかり体に覚えさせるからね」  そう言って、律は自身の性器を取り出した。  それを目に映し、悠希の体が期待に震える。  今からあれを入れてもらえるのだ。未来でされていたように、いっぱい犯してもらえる。  引き抜かれた指の代わりに陰茎を押し付けられ、アナルがぱくぱくと口を開けた。 「んひぃぃ……!」  一気に捩じ込まれ、悲鳴を上げる。  指で解されていたとはいえ、指とは比べものにならないくらい太くて大きいもので貫かれ、苦しくてぽろぽろと涙が零れた。  浅い呼吸を繰り返しながら、律を見つめる。  大好きな律。  額に汗を浮かべて、情欲の滲む瞳で悠希を見下ろしている。  ずっと好きだった律に、自分は抱かれているのだ。  嬉しくて、腹を圧迫する苦しさなど吹き飛んだ。  痛くても苦しくてもどうでもいい。  彼にめちゃくちゃに犯されたい。 「あっ、はっ、律、りつぅ」 「奥、きっつい……処女みたい。ちんぽはあんまり入れてなかったの?」 「あっあっ、律、お願い、んんっ、手、ほどいて」 「だめだよ、逃がさない」 「逃げない、好き、律、律、律が好き、大好き、律だけ、律にしか触らせない、俺もぉ律のものだから、律の好きにして、監禁して、好き、りつぅ」 「ずるいよ、悠希。そんなこと言われたら、絆されちゃうでしょ」  苦笑する律に、ただ純粋に言葉を重ねる。 「好き、信じて、ふぅっ、んん……俺、律だけ、律が好き」 「俺も好きだよ。だから、逃げたら許さない。絶対に逃がしてあげないからね」  冗談ではない声音で囁き、律は悠希の手首を縛っていた紐をほどいた。  腕が自由になった途端、悠希は律にしがみつく。 「律、好き、好き、ちゅーして、りつ」  舌足らずにねだれば、すぐに唇が重ねられた。  口の中を舐め回され、悠希も同じようにしたくて舌を伸ばせば、ちゅくちゅくと音を立てて吸い上げられる。 「んふぅっ、ふ、んんっ」  激しいキスを交わしながら、律はゆっくりと腰を動かした。馴染ませるように襞に肉棒を擦り付ける。直腸が綻んでくると徐々に動きを大きくし、抽挿をはじめた。  内壁を擦られる快感に、悠希は我慢できずに嬌声を上げる。 「んんぁっ、あっあっ、ひあっ」 「悠希、気持ちいい? おまんこきゅうきゅうしてるね」 「あっあっ、いい、おま、こぉ、気持ちいい、んっ、律のおちんぽで、擦られるの、すきぃっ」 「ふ、可愛い。じゃあ悠希の好きなところいっぱい擦ってあげるね」 「あっあっあっあっ、そん、そんな、そこばっかり、あっあっ、ひぁんっ」  前立腺を亀頭で擦られ、断続的に与えられる強烈な快感に身悶える。 「りつ、もぉらめ、しょこ、らめ、ん、あっ、ぐりぐり、しちゃ、あっあっ」 「だめじゃないでしょ? おまんこうねって悦んでるよ」 「いく、いっちゃうから、あっ、もういくっ」 「いいよ、いってごらん、悠希」 「ひうぅっ」  ごりごりと前立腺を抉られ、悠希は全身を痙攣させた。きゅうっと爪先を丸めて絶頂に達する。腸壁が収縮し、律は僅かに眉を寄せた。 「はあっ、あっ、りつぅ……」 「あれ、いったのにちんぽからはなにも出なかったね」 「あ、俺、おまんこで、いっちゃったの……?」  勃起したままぴくぴくと震えるぺニスを、ぼんやりと見つめる。  自分だけが気持ちよくなってしまい、律も同じように気持ちよくなってほしくて、彼に縋った。 「律、律もいって、俺の体で気持ちよくなって、中にいっぱい出して」 「中に出していいの? 中に出したら赤ちゃんできちゃうよ?」 「いい、して、律のあかちゃ、孕むぅ……っ」 「じゃあ溢れるくらい種付けしなくちゃね」  律は抽挿を再開させた。じゅぽじゅぽと肉筒を掻き回し、内奥を突き上げる。 「はひっ、ひっ、ああっ、あっあっあっ」  何度も奥を貫き、不意に律が悠希の片足を持ち上げた。ぐりぃっと直腸を擦られる。 「ひぃっ、あ、ひっ……」  悠希の片足を跨ぎ、律は更に深く陰茎を突き入れた。これ以上ないと思っていた更に奥を貫かれ、悠希の全身ががくがくと震える。そこを抉られると、目も眩むような快楽に襲われた。 「ひあぁっ、らめ、しょこ、ずんずん、らめぇっ」 「でも、ここ、悠希の子宮に種付けしないと、赤ちゃんできないよ?」 「んひうぅっ、らめ、らめなの、きもちよしゅぎて、おかひくなるぅっ」  首を振り、律の腕にしがみつく。強すぎる快楽に、正気を失ってしまいそうだった。  泣きじゃくる悠希を、律はうっとりと見下ろす。 「おかしくなってもいいよ。だって悠希は俺に監禁されるんだから」 「ほんと? 俺がおかしくなっても捨てない? ちんぽ狂いの淫乱になって、毎日りつに種付けおねだりしても嫌わない? 毎日ちんぽ嵌めてくれる?」 「俺が悠希を捨てるわけないよ。悠希が望まなくても毎日たっぷり種付けしてあげる。大好きだよ、悠希」 「俺も、しゅき、りつ、しゅきぃっ」  律の言葉に陥落させられた悠希は、自ら腰を押し付けた。 「して、おく、しきゅーに種付け、いっぱい……っ」 「孕むまでいーっぱいしてあげる」  艶然と微笑んだ律が、激しく奥を突き上げた。  ぐぽっぐぽっと何度も穿たれ、悠希はそのたびに絶頂に上り詰め、狂うほどの快楽に耽溺した。 「あっあっあっ、りつ、りつ、しゅき、あっ、りつ、ふぅっ、んんっ」 「必死になって俺の名前呼んで、可愛いね、悠希」 「しゅき、りつ、りつぅっ」 「そろそろ、出すよ。種付けするからね」 「して、出して、あっ、あっ、ああぁっ」  ごちゅんっと捩じ込まれた最奥に、熱い精液を注がれる。 「はひっ……出てる、律のせーし、うれひぃ……っ」  腹の奥に大好きな律の子種を吐き出されるのを感じ、悠希は悦楽に浸る。  心地よさに呆けていると、ふと未来の映像が脳裏に浮かんだ。  寝室で激しく体を重ねていた悠希と律。見ていたときは気づかなかった。でも、今思い出した。  未来の自分の首に、首輪が嵌められていたことを。  あの未来は、いつか訪れる未来なのだ。  それを確信して、悠希はうっとりと目を閉じた。

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