14 / 105
第一章・6
「……ダメ?」
キスしちゃダメなのか、と訊いているんだ。要人は。
「駄目に決まってるだろう!」
「どうして?」
すねたような、要人の顔。
ドキリとした。
初めて見る、表情。
初めて見る、要人の顔。
「そんな……、付き合い始めてすぐ……、キスだなんて」
「付き合いは、子どもの頃からあるだろ?」
「とにかく、ダメなものはダメだ!」
ちぇッ、と唇を尖らせながら、要人は再び歩き始めた。
優希も並んで歩いたが、頬の火照りが治まらない。
昨日と違う、昨日までと違う要人が確かに僕の隣にいるんだ。
ともだちにシェアしよう!