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キス
なぁ、今更だけどキス…したいんだ…いいかな?
朝からずっと何かを言いたそうにしていたと思ったら…キスぅ?
キスなんか今までだってずっとしてるし、むしろしていいかなんて聞かれたこともない。
何を今更…
だってそう、今更だろう?了解なんてとった事、一度もなかったくせに。
思い返せば、初めてのキスもいきなりだった。廊下で普通に話してたらいきなり顔が近付いてきた。そんな素振りは全くなかったので俺は、何かゴミでも取ってくれるのかと思ってじっとしていた。
目ぇ、瞑れよ
言われて何の疑いもせずに瞼を閉じた。
だが、俺の顔に触れたのは指ではなくて唇に合わさる唇。
一瞬、頭が思考停止して、俺の時が止まった。
はっとした瞬間に腕で胸を勢いよくどついた。一瞬離れそうになる唇。
しかし腕がにゅっと伸びて俺の背中に回ると力任せに抱き寄せられ、再び唇が合わさった。
しかも今度は唇を舌でくすぐられ、少し開いたところから無理やりそれが侵入して来る始末。
ちょっと待てよ!
俺はこれが人生初のキスなんだ。
それでいきなりそんな舌とか入れられ…たら…たら…あ…気持ちいい…どうしよう…初めてなのに…俺…気持ち良くて…あれ?腰から下の力…抜けちゃう…
かくんと膝がいきなり曲がり、回された腕でぐいっと引っ張り上げられた。
もぅ…立って…らんな…い…
そう言うとニヤっと笑って、俺を肩に担いだ。
担ぐなよ!と暴れる俺に、だったらお姫様抱っこにしようか?とニヤニヤしながら言われ、それは嫌だと大人しくすると、いい子だなと耳元で囁かれた。
それがあまりにもいい声で、耳から脳が痺れ、身体にぞくっと悪寒が走った。
熱いな…それに、当たってる。
身体を密着させていると言う事も手伝って、俺の体は一瞬でカーッと熱くなり、その熱によって滾った血液が、一点に集中していく。
言うな…
それだけ言うのがやっとだった。
寮の部屋に戻ると、ベッドに寝かされ再び唇を合わせた。
そのままなし崩し的に抱かれて、それからは毎晩のように抱かれているが、この関係が何なのかいまだに答えはない。
したかったらいつものようにすればいいじゃないか?!
語尾が強くなる。
別に怒っているわけじゃない。
だけど、今更それを聞くのかと言うイライラしたものが俺の心を棘のようにちくちくと刺して来る。
ちゃんとしたかったから…
しばらくの沈黙の後で絞り出された言葉。
ちゃんとって何?
ちゃんとはちゃんとだよ!
だから、キスしていい?
それって…どう言う意味のキス?
まさかとは思うが聞いてみる。
そんなの聞くなよっ!
顔が真っ赤になって汗が浮かんでいる。
え?!
だって、俺たちってセフレみたいな…ああ言う行為も性欲処理位のもんじゃなかったのか?
ちげーよ!!
俺の初めてのキス…だったんだ。
本当はもっとちゃんと告白してするつもりだった。
でも、廊下で喋っているお前を通り過ぎる奴らがチラチラと見ていって、そいつらの事を見ていたら、もしかしたらこの中から明日、いや今かららお前に告白する奴が出てきて、しかもそれをお前が受け入れるなんて事も…そう考えたら嫌だ、こいつは俺のだ!って言う独占欲に突き動かされていたんだ…ごめん。
それって…じゃあ、お前って俺が好きって事?
お前以外で勃った事ない。
それが答え?
…ダメか?
まったく、そんな言葉で俺がキスしていいよなんて…
いいよ。キス、して。
俺達の心が合わさってする初めてのキス。
今までで一番気持ちいい…
囁く僕に同意するように唇が強く押し付けられた。
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