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番外SS⑩ 対面キッチンの悲劇
ある晩の、陽介宅のキッチンです。
陽介(俺は料理に詳しくないから、キッチンの間取りは適当に考えたんだが。対面キッチンというのは、なかなかいいものだな。ダイニングから、料理している蘭の姿が見える……。ふふ、一生懸命で可愛いな)
蘭(あーっ。サラダ作らなきゃだけど、千切りってめんどくせーっ)
陽介(しかし、欠点が一つあるぞ。料理している新妻を、不意打ちでバッグハグ……。あれができないじゃないか。後ろに回ったら、気づかれそうだし……)
蘭(何だか、不ぞろいだなあ。あっちこっち、野菜のカケラが散らばるし……。あっ、指まで切った。もーっ、本格的にイラついてきたんだけど!)
陽介(何やら熱中しているな。今のうちなら、気づかれないんじゃないか? 物音を立てずに、そっと背後に忍びよって、と……)
蘭(調理スペースが狭いのが悪いんだよ! そうだ、このスープの大鍋をどけりゃいいじゃん。よいしょっと!)
くるっ。バッシャーン。
陽介「熱ーっ!」
※哀れ、陽介。ちなみに陽介宅のキッチンは決して狭くありません。蘭が不器用なだけです。
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