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第1話
-今日は4月1日、始業式ー
待ちに待った、クラス替え当日。僕以外は。
「(あそこ行くの、やだなー)」
新学期初日から、見つかれば即アウトなスカート丈の女子生徒が色めきながら張り紙の前で屯している。
今の僕のミッションは、あそこの人混みを難なくくぐり抜け、速やかに張り紙に書かれている、クラス番号を確認することだ。
「(うわ、全然通してくれない。女子の自我強すぎ)」
何故たかが学校にそこまで気合いをいれてくるのか。そんなにクラスが重要か?
とりあえず僕は、平穏で平凡な学校生活が送れれば、それでいい。
「(えーと、僕のクラスは……あ、あった)」
2-B 宮本 裕汰
人混みに流されながら、やっとの思いで見つけたそれ。
そそくさと騒がしいその場を後にし、新しい教室へ向かう。
ガラリ
既に喧騒に包まれた教室に入り、自分の番号の席に着く。早くも各自グループができているみたいだ。
興味が無いと言わんばかりに、おもむろに本を取り出した。
本は好きだ、その世界に入れば、何にも邪魔されず、没頭できる。つまらない僕の日常の中で、唯一愉悦を感じられるものだ。
ガラリ
既に喧騒に包まれた教室に入り、自分の番号の席に着く。早くも各自グループができているみたいだ。
興味が無いと言わんばかりに、おもむろに本を取り出した。
本は好きだ、その世界に入れば、何にも邪魔されず、没頭できる。つまらない僕の日常の中で、唯一愉悦を感じられるものだ。
本の世界に入り込もうとしたその時、耳を劈くような大きな声が教室に響いた。
「おおおおお!柊真ー!」
頭に響くその声量に思わず顔を顰める。
声の主は、グループで一際目立っていたピンクブラウンのパーマの男に、思い切り抱きついた。
「また同じクラスじゃん!ラッキー!」
「いった!力加減考えてよ、筋肉バカ!」
騒がしかったクラスが、刈り上げの茶髪の男の登場でより一層騒音に包まれる。
「(せっかくの人の癒しの時間を…誰だよ)」
横目で盗み見ると、ずば抜けた美形ふたりがじゃれ合っていた。
「(柄、悪そ。茶髪ピアスまであいてるし…)」
住む世界が違うんだ、僕とは。
早々に関心を本に逸らし、またそこに入り込もうとした
ガラララッ
が、僕の思いは虚しく散る。
勢いよく扉を開けた人物は、これまた美形の男。
「よし、みんな席つけー。まずホームルーム始めるぞ。」
「うわー!ヒラケイも一緒かよ!チェンジ!」
「残念。担任ガチャはリセマラ不可なんです~」
僕もチェンジしたいんですが。
冒頭で望んだ、平穏で平凡な学校生活送れる保証、見当たりません。
「1限目はお互いの事を知ってもらうために
自己紹介をしよう。まずは、俺からな。俺の名前は知ってるやつも多いと思うが、平田 慧俉だ。さっきそこの茶髪が言ったように、よく平慧って呼ばれてる。担当教科は数学で、軽音部の顧問です。あ、そうだ俺はおまえらのこと、名前で呼ぶから、俺のことも気軽に呼んでくれよな(*`∀´*)ニカッ」
人好きのする笑顔だ。生徒受けするんだろう。前の席の女子がひそひそと頬を染めて話す声が、耳につく。
「じゃあ次はお前らのばんだぞー!1番に言いたいやついるか?いないなら出席番号1番から言ってけー」
先生がそう言うと1番の人が席を離れて、教卓の前に立つ。順番に聞こえてくる自己紹介の声。一人一人の緊張が声を通して伝わってくる。
「(他のやつの紹介なんて興味無いよ。早く終、わんないかな…)」
既に僕の意識は、さっき読み損ねた本の続きに向いていた。
そう思っていた矢先、元気で自信満々な声が、教室の緊張した空気を切り裂く。
「おれの名前は 堤大陽でーす!幼い頃からサッカーやっててさ、高校もサッカー部!あ、誰か俺らのマネージャやらねー?やりたいやついたら、なってくれたら嬉しいっす!可愛い子、ぼしゅーちゅー!」
呆けていた僕の耳に入ってきたのは、さっき聞いたあの騒がしい嫌いな声。やっと前に目を向けると、あの茶髪ピアスがいた。
堤 大陽。どこかで聞いたことがある名前だ。
だめだ、全然思い出せない。僕が聞いたことあって、しかも覚えてるってことは、割と知れ渡ってるはず、だと思うんだけど。
自分の他人への興味のなさを、改めて実感した。
彼はなんと言っていたか。名前の他の情報は、たしかサッカー部。
そう言えば去年、サッカーで表彰されてたやつが、そんな名前だったような気がする。
1回じゃ忘れてるだろうが、何度も表彰されてた。聞き覚えがあるはずだ。
でも、僕には確証はない。
そうこう考えてるうちに、僕の番が来てしまった。誰も俺には興味無いだろうし、適当に済ましておこう。
「僕の名前は宮本 裕汰です。よろしくお願いします」
シンとした空気の中、クラスメイトの拍手だけが聞こえた。
僕が席に戻るとき、次の人とすれ違う。さっきの、茶髪の片割れのピンク頭だ。
「俺は山口 柊真です!軽音部で、弾き語りとかしてます。良かったら、暇な時に俺の歌ら聴きに来てねっ?」
目の前の女子が、平田先生の時には隠せていた悲鳴をあげた。イケメンの微笑みの殺傷力、さすがだな。どこか他人事に思いながら、無事済んだ自己紹介に心做しかほっとした。
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