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第28話※
「……はぁ、ヨゾラ……大丈夫?」
快感の波が少しひいてきて、ナナトはヨゾラの乱れた髪を整える。その刺激にピクリとヨゾラの眉が動く。
「……あ、ナナト……」
掠れた声でかろうじてヨゾラが応じる。
「ごめんね、興奮して中に出しちゃった。一緒にお風呂行こ」
「待って、ナナト」
腰を引こうとするナナトをヨゾラは制止する。
「……しばらくこのまま、ぎゅってして欲しいです」
「……うん」
ナナトがヨゾラの上に覆い被さるようにして抱きつくと、ヨゾラもナナトの背に手を回し、抱きしめる。
ナナトはヨゾラの首筋に顔を埋める。大型犬のような仕草に、ヨゾラは微かに笑って、ナナトの背に回した手で優しく背中を撫でる。
「んんっ……」
突然、ヨゾラが顔を顰め、くぐもった声を出す。
「あ! 抜けたかも。ごめん、ほんとにめっちゃ出た」
ナナトは思わず顔を上げてヨゾラに謝る。
「ふふ、そのようですね」
内股の濡れた感触は少し不快だったが、ヨゾラは楽しそうに笑う。
「……僕は貴方があの家から連れ出してくれた時から、ずっと貴方の事が好きでした。だけど、貴方はそのうち恋人ができて、結婚して、子どもができるかもしれない。だから僕の思いは秘めておこう……貴方の幸せの邪魔はしないでおこうと思っていました。でも不思議ですね……」
ヨゾラはにかりと口角を上げる。
ギラギラと光る瞳はナナトを捉えて離さない。
「今は貴方を誰にも渡したくない。貴方は僕の居場所だから。なくなってしまっては困ります。貴方の未来の幸せを摘み取ってでも、僕は貴方の隣にいたい」
ナナトもにやりと笑い、口角を吊り上げる。
「すげー殺し文句だね、それ、プロポーズ?」
「ええ、貴方に僕の全てを捧げますよ。病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで」
すらすらと紡がれる誓いの言葉をナナトは引き継ぐ。
「愛し慈しみ貞操を守る事を誓います……ってこれ、プロポーズじゃなくて、結婚してるじゃん!!」
「ふふっ」
「あはは」
二人は体を起こし、見つめ合って笑う。久しぶりに、とても愉快で爽快な気分だと二人は思う。ぴったりと型にはまったような、しっくりくる感じは、とても心地良い。
「ねーヨゾラ、誓いの言葉を言ったんだからさ」
「ええナナト」
二人の目線が絡み合う。言いたい事は言わなくても伝わってくる。
「「誓いのキスを」」
最初は唇が触れ合うだけだったそれは、だんだんと大胆に、激しさを増していく。
ぽたぽたと飲み込みきれない唾液が二人の間からこぼれ落ち、シーツに吸い込まれていく。
「は、ふぁ……ヨゾラ、もっかい、したい……」
ぐりっ、と硬く立ち上がったペニスの先をヨゾラの腹に押し当てる。
「ここに、入れたい……お願い……」
ナナトの熱く掠れた声にヨゾラも煽られる。
「はい、ナナト……奥まで貴方で満たして」
何度も何度も交わされた行為は果てしなく続き、気がつけば空は白み始めていた。
時々水分や食事をとっては、またベッドで、浴室で愛を交わす。
「ヨゾラ……」
返事はなく、代わりに規則的な寝息が聞こえてくる。
何度も絶頂を極め、ついには潮まで吹き、気絶するように寝てしまったヨゾラの頬をナナトは優しく撫でる。
「……無理させてごめんね」
ナナトがヨゾラを家から連れ出したあの時。
家を出る決心をして、ナナトの手を取ったヨゾラの凛とした強さを垣間見たあの時。
ナナトもまた、恋に落ちていた。
「恋はするものじゃなくて、落ちるものだ……って、すごい名言だね」
「……ふ、意外とロマンチストですね、貴方」
ヨゾラが含み笑いとともに目を開ける。独り言をしっかり聞かれていたようで、ナナトはいたたまれない気持ちになる。
「……起きてたんなら言ってよ」
「今まさに起きた所ですよ? ……ん」
ナナトがヨゾラの横に寝転がって、ヨゾラの唇を人差し指で押さえる。
「嘘つき。俺、嘘つかれるの、嫌い。嘘つきのヨゾラ君にはお仕置きが必要じゃない?」
にやにやとするナナトに、ヨゾラは鼻で笑う。
「は、お仕置きですか。立てない僕にこれ以上の苦痛を強いるとでも?」
「苦痛じゃないよ、えっちなお仕置きだから気持ちいいやつだよ」
「これ以上したら僕、使い物にならなくなるかも」
「そしたら、俺がずっと飼ってあげるから大丈夫だよ」
ナナトが顔を寄せて、ヨゾラの耳を甘噛みする。
「ねぇ、お願い。ヨゾラの顔見てたら、ムラムラしてきたんだもん。責任とってよ」
耳元で囁きながら、ヨゾラの片側の胸の先を軽く摘むと、「んっ」と甘い声が聞こえてくる。
「ほら、ヨゾラのヨゾラはヤる気満々じゃん」
胸を触りながら、膝で半ば反応しているペニスを擦ってやると、みるみる内に硬さを増し、立ち上がる。
「……まったく、貴方みたいなのを絶倫っていうんですよ」
「ははっ、俺達、一卵性の双子だからヨゾラも絶倫って事になるね。……嫌じゃないクセに」
少し強めに胸をつまみ上げ、ペニスの括れに指を引っ掛けてやると、ナナトの手に擦り付けるようにヨゾラの腰が動く。
「ほら、何て言うの? ヨゾラ」
目元を赤く染めて、ヨゾラはナナトの求める答えを躊躇いなく口にする。ナナトはきっとヨゾラが求めているものを与えてくれる。ヨゾラは、この先に起こる事への期待と喜びで自然と頬が緩んでしまう。
「嘘をついて、ごめんなさい。お仕置き、してください」
「いいよ、ヨゾラがちゃんとごめんなさい、できたから、ご褒美をあげるね」
二人は絡まるように抱きしめ合い、ベッドの海に沈む。
「愛しているよ、ヨゾラ。もう誰にも渡さないから」
「愛しています、ナナト。貴方はもう僕のものです」
愛の言葉とともに唇を合わせ、お互いに貪り合う。
けして離さないように、離れないように。
二人は手を絡め、静かに額を合わせた。
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