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1 俺で満たせよ!
「ねぇ、責任もってゆうが俺のセフレになってね…?」
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「よしっ!!今日はみんなで飲みに行くか!」
そう提案したのはサークルの部長だった。
「お、いいねぇ」「ぜひ参加します〜!」「俺も!」
先輩や同い年の仲間たちが口々に発した。
最近実家から引っ越したばかりで先輩どころか同い年のメンバーとも関われていなかった俺にとって、これは交流を深める絶好のチャンスだ。
「悠介(ゆうすけ)、お前もいくだろ?」
もちろん「はい!」と威勢よく返した。
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飲み屋に来てから時間も経ち、酒を入れたからかサークル内の人とも結構打ち解けていった。
同じ学部の女子からも連絡先を尋ねられたりなかなかいいスタートをきれたのではないか?
そんなことを思いながら酒を飲んでいると、ふと見知った顔が部屋の外へ行こうとしたのが視界にうつった。
(ん?あれって…。)
間違いない。想太(そうた)だ。
想太は幼馴染で、家が近所だったこともあって小さい頃から良く遊んでいて仲が良かった。
高校で疎遠になってしまったが、まさかこんな所でまた会えるとは。
部屋の外から出た幼馴染に声をかけようと自分も席を外す。
部屋から出て少ししたところで想太に追いつく。
「なぁ、想太、だよな?」
久々に呼ぶ名前に少し緊張感を持ちつつも声をかける。
高身長ながらも少し幼い顔をした男が振り返り、「え?」と驚いた声を出す。
「おれおれ!悠介だよ!」
ぱあっと顔が明るくなり想太は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「え!悠介!?すごい久しぶりだね!」
声をかけた相手が自分の知ってた幼馴染だったことに安心し、俺も笑みを浮かべる。
「ほんとだよなぁ!お前も進学してたんだな」
「うん、親が行け行けってうるさかったからさ」
確かにこいつの家の親は少し厳しかった思い出がある。
宿題をせずに俺と遊んでいると母親が怒鳴りながら部屋に押しかけてきた時は俺も泣きそうになっていた。
しかし、あの頃から何も変わっていない幼馴染を見て安心感がわいた。
「俺、今大学のサークルで飲みに来てるんだけどもう少ししたらお開きにするらしいからその後一緒に飲まない?」
俺の誘いに想太は満面の笑みでOKの返事をくれた。
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想太と2軒目で飲んでから2時間は経っただろうか。
お互い会えていなかった時間を埋めるように今まであったことや、幼い頃の思い出を語っているとあっという間に時間は過ぎていた。
ピロンと、想太のスマホに通知が来た。
気にせず飲んでいると想太が口を開いた。
「あー僕、セフレの所行ってくるね。」
「は?!えっ?ングッげっほげほ…。」
思いがけないセリフに思わずむせてしまった。
「せ、セフレ?!」
大きな声を出しすぎた。周りの人の視線が一気に俺の元へ集まった。
「ちょっと、大丈夫?声でかすぎ笑」
そりゃ声もでかくなる。
想太の顔はかっこよさはあるものの少し可愛げがあり少年っぽさが感じられる。
そんな想太の口からセフレなんて言葉が出るとは思っていなかった。
「ま、とりあえず行くね。お金ここに置いとくから払っといて。」
「なっ、ちょっ…待てよ!!」
思わず腕を握りしめてしまった。
「なに?もしかしてお金足りなかった?」
子犬のように想太は軽く首をかしげる。
「いや、違くて。なんでセフレなんかいんだよ。」
少し荒い声が出てしまった。
だが、もしかしたら幼馴染が何か危ない事にあってるのではないかと思うと気が気でいられなかった。
「なんでって…んー満たされるためかな?」
「なっ…」
思わず言葉を失ってしまった。
満たされるため?そのためにセフレなんか作ってるのか?
「もういい?そろそろ行かないと怒られちゃう。」
少し不機嫌そうな想太は手を振り払おうとした。
しかし俺はさらにグッと握り
「いや、行かせない。」と言った。
想太はさらに困った顔をして足を出口の方へ向かわせようとしていた。
「そんなに行きたいなら俺で満たせよ!」
気づくと、俺はそんな言葉を口走っていた…。
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