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撮影会(1)

3度めのリハの日は、撮影会を兼ねていた。 僕が加入したので、新たにアー写を撮ろうというわけだ。 いつもの店に、いつものメンバーに加えて 知らない2人がやってきた。 1人はメイク担当のハルト。 バイトしながら美術系の専門に通ってるらしい。 もう1人は、駆け出しのカメラマンのショウヤ。 近所の老舗写真館の、一応2代目らしい。 「カオル、顔小ちゃくてかわいいね。塗り甲斐ありそうだわ」 ハルトがキャピキャピしながら僕に話しかけてきた。 なんでメイクとか衣装とか担当する人って オカマっぽいイメージなんだろなー ちなみに彼は、短髪にちょい顎髭っていう… いかにもゲイっぽい様相をしていた。 一方のショウヤは… 厨二がかった細面のイケメンで、口数も少なく… 時々一眼レフを構えては、シャッターを切っていた。 とりあえず、演奏を見て聴いてから、 それぞれイメージを固めたいとの事だったので… 僕らはいつものように、準備を始めていた。 「何か飲む?」 一足先にセッティングを終えたカイが、皆に訊いた。 「ハイボール」 「俺も」 「あ、僕もそれで…」 「ハイネケン」 「レモンサワー」 それぞれの手にアルコールが渡ったところで、 カイが改めて言った。 「じゃあ、カオルのプレお披露目に…乾杯〜」 「よろしくお願いします…」 「にゃ〜」 カチャ、カチャッ… あちこちでグラスの当たる音が響いた。 そして一通り飲んでから… カイは、ドラムに戻った。 「じゃあ、やりましょか」 パチパチパチパチ… ハルトが手を叩いた。 ショウヤはカメラを構えた。 僕は…少し緊張した… そして、カイのカウントで、演奏が始まった。 一気にその場は、大音響に包まれた。 …やっぱり気持ちいいな。 3人の息の合った… いや、合っていない風に複雑に絡み合うリフなのに… キメの部分はバシッと決まるっていう… 何とも心地よいイントロを背中に聴いているだけで 僕の身体はズンズン昂められていった。 そして…感じるまま、歌詞を伝えるように、歌う。 声は、背中で押して出す。 その、自分の声が… 演奏に上手く乗れているなと感じると、 それがまた…愛撫されているような心地よさを生む。 で、またどんどん、その歌詞の… その曲の世界にのめり込んでいく… まさに目の前に、その世界の映像が見えてくる… 僕は、観客でも、照明でもなく… その映像を見ながら歌う。 そしてその世界の中で… ギターとベースとドラムの音に… 愛撫され、挿入されてる気持ちに… やっぱりなってしまうのだった。 1曲めが終わり、間髪を入れずに… 次の曲のベースのフレーズが始まった。 んんん…シルクの、気持ちいい… そしてドラムとギターが一気に被さる。 その瞬間もたまらない。 そしてまた、違う曲の世界の違う映像が、 僕の目の前に広がった。 僕はそれを歌っている間… 彼らの愛撫によって、目の前の異世界に転生する… 大袈裟な言い方かもしれないが… それが僕にとっての『歌う』という行為なのだ。 そんな感じで… 5〜6曲、飛ばして歌い終えた僕は… やっぱり、そのままへたり込んでしまった。 パチパチパチパチ… ハルトが勢いよく手を叩いた。 「すごいっ…すーっごい! すごくいい!」 ショウヤも小さな声で言った。 「うん…良い画でしたね…」 カイは、ドラムから立ち上がり、僕の側にきた。 そして、へたり込んだ僕の肩を抱いて言った。 「お疲れ〜お前ホント、すっげーいいわ」 「…そう…ですか…?」 僕は半ばボーッと、カイの目を見た。 カイは、うっかり…そのまま僕に口付けた。 カシャッ…カシャッ… シャッターを切る音が響いた。 ショウヤがその瞬間を見逃さなかった。 「…んっ…ん…」 「…姦りたいな…」 くちびるを離れたカイが、トロンとした僕の顔を見て呟いた。 いやいや…だって… これから撮影会なんじゃないんですか…? 「ダメーっ!」 ハルトが叫んだ。 「お願いだから、撮影終わるまで我慢してー」 …ありがとうハルトさん… 「そーだった…」 カイは、僕の肩をしっかり掴んだまま、 もの凄く残念そうに、下を向いた。 「俺もチューしたい〜」 ギターを下ろしたサエゾウが、 そう言いながら僕の腕を掴んで、カイから離した。 そして、僕の顎を持ち上げ…くちびるを重ねてきた。 「ん…」 カシャッ…カシャッ。 またシャッターの音がした。 散々僕の口の中を舐め回して、 やっと離れたサエゾウは、今度はシルクに言った。 「お前もしとく?」 「うん」 シルクは即答した。 サエゾウから僕の身体を受け取ると、両手で僕の顔を押さえて僕に口付けた。 「…んんっ…」 カシャッ…カシャッ… 以下同文。 カウンターに戻ったカイは、皆のドリンクのおかわりを出した。 ハルトが興奮冷めやらぬ勢いで、カイに言った。 「ホントに良かった!すっごい良い子見つけたねー」 「…だろ?」 「早く塗りたーい。絶対映えるよ、凄い楽しみ…」 「そーですね…」 ショウヤも、口数少ないなりに、テンション上がっている風に見えた。 僕は、この後の撮影会とやらに、 一抹の不安を抱かずにはいられなかった… だってなんか、オカシイ人が増殖してるし…

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