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よく見る夢がある。 とある少年の夢だ。 銀色に輝く長い髪にスラリと伸びた手足、品のある整った顔立ち。中でも印象的なのは瞳だ。深い緑のようでいて青のような、光の角度で色を変えるそれは宝石のように美しく、その魅力に惹き付けられてしまえば、もう目が離せなくなる。 彼は、人なのだろうか。透き通るような肌は血が通っていないような、まるで彫刻のようにも思える。その美しさから、もし人でないならどこかの神様だろうかと、現実離れした事ばかり頭を過る。 彼は一体何者だろう。 好奇心にかられて手を伸ばし、驚く。この手は誰のものだろう、自分の年齢と見合わずとても小さい。まじまじと自身の両手を見て、そこでようやく、自分が子供の姿をしている事に気づいた。 あぁ、そうだ、きっとこれは夢だ。なら、あの美しい少年も幻だ。だってここは、現実ではない夢の中なのだから。 一つ疑問が片付いて、気分が軽くなる。どこか晴れやかな気持ちで顔を上げると、あの美しい少年は途端に顔を歪めた。怯えと焦りに満ちた表情に、何があったのかと不安にかられ口を開く。しかし、その問いかけは声にならず呑み込まれてしまった。突然、洪水のような大量の水が押し寄せて、あっという間にこの体は水の中へと飲み込まれてしまった。 夢だ、ここは夢の中だ。自分の頭の中の出来事なら、この世界の決定権は自分にある。水の中に居ようが、苦しくないと思えば息は出来る筈だ。だが、いくら願っても、この息苦しさから逃れる事は出来無かった。本当に水の中で溺れているかのように苦しくて、危険を知らせるようにドクドクと心臓の音が大きく聞こえてくる。どうにか空気を吸いたくて口を開けば、その口から零れた空気が泡となり消え、口内を満たす水に更に苦しさが増す。 どうして、これは夢なのに、夢の中の筈なのに。 幼い手を目一杯伸ばした。体は鉛のように重く、どんどん水の中へと吸い込まれていく。 助けて、助けて、誰か、誰か。 伸ばした指先が温もりに触れて、暗く落ちる意識の側に、あの美しい少年が居た。彼は悲しそうに顔を歪めている。泣かないでと伝えたかったが、この状況では伝える術もなく、意識はだんだんと遠退いていく。暗闇のような、眩い光のような視界の中、少年の唇が自分のそれと重なった。空気が流れてくる、ふわりと穏やかな腕の中、消えかけた意識の片隅で、少年の声が聞こえた気がした。 大丈夫、俺が絶対守るから。 そして、夢は突然終わりを告げる。

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