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第26話 プロポーズ?

僕たちは泥だらけになりながら愛し合った。 初めて外でするセックスは凄くドキドキした。 目の中に泥が入らないようにパチパチと瞬きをして、 横に寝転がる矢野君を見て大笑いした。 「矢野君、凄い泥まみれ。 これじゃ誰だか分からないね」 矢野君は僕を見ると、 「お前もな」 そう言って笑みを浮かべた。 「僕アオカンなんて初めて! 凄いドキドキしたね! あっもしかして矢野君は初めてじゃない?!」 僕の本心としては、ただ単に嫉妬心から探りを入れたかっただけだ。 だから、何でもないようにさりげなく尋ねたつもりだった。 「お前、身も蓋も無い聞き様だな〜 ヤキモチ焼きのお前の事だから俺の過去が気になるんだろが お前とまだ会っていない時だぞ? それは仕方ないだろ?」 矢野君にそう言われるとやっぱりグサグサと心に突き刺さる。 勿論僕と会ってなかった前の事を グチグチと言われる矢野君にはたまったもんじゃ無いかもしれないけど、 やっぱり気になるものは気になる。 “矢野君はどっちのシチュエーションが良かった? むこうの方がロマンチックだった?” そんな事を考えてはどうしても自分と比べてしまう。 僕は自分がこんな面倒くさい重い奴だなんて思いもし無かった。 “これが恋というものか……” 恋愛初心者の僕には感情のコントロールが難しい。 矢野君は僕の事をチラッと見ると、 「心配するな。 外でやるのは初めてだ」 そう言ってニヤッと不敵な笑みを浮かべた。 その瞬間僕の顔が緩んだ。 “そうなんだ! そうなんだ! 矢野君はアオカンは僕が初めてなんだ〜” そんな僕の態度を見て、 矢野君は更にニヤニヤしだした。 「あー!矢野君! 僕の反応見て楽しんでるでしょ! ヒドイなあもう! 僕は人生初の嫉妬を経験してる所なのに、 もうちょっと愛をくれても〜」 そう言うと、矢野君はブハッと大声を出して笑った。 そしてもう一度僕に覆い被さって来た。 「フ〜」 僕は一息つくと、 更にグチャグチャになった矢野君に目をやった。 「矢野君、グチャグチャでもカッコいいね。 僕、矢野君が泥被ってて誰かわからなくっても、 直ぐに君だって分かるかもしれない……」 「そうか?」 「うん、あのね、矢野君は気付いてないかもしれないけど、 僅かにね、αのフェロモンの匂いがするんだよ」 そう言うと彼はガバッと起きて僕の肩をがっしりと掴んだ。 「それ本当なのか?」 彼は必死な顔をして尋ねた。 「矢野君、痛い、痛い! 先ずは肩を掴んだ手を緩めてよ」 そう言うと、彼は 「あ……ついスマン」 そう言って僕の肩から手を離した。 「それで……本当に俺から匂いがするのか?」 「うん、間違い無いよ。 その匂いが僕に火をつけるんだ。 だから君、完全にαの機能を失ってる訳じゃ無いと思うよ?」 そう言うと矢野君はまた僕に抱きついて来た。 「ありがとう陽向! お前のおかげだよ!」 「え? え? 僕、何にもして無いけど……」 「お前に出会わなかったら、 お前がお前じゃ無かったら、 俺は未だ暗闇の中を彷徨ったままだったかもしれない。 お前が、お前として俺に接して、愛…… 愛…… 愛して……愛……?」 「プフッ…… 何それ? ほんと矢野君ってツンデレなんだから〜 改めて愛って言葉使うの恥ずかしいの〜?」 僕がそう言って笑うと、 彼は真っ赤になって僕に抱きついて来た。 「なあ陽向、今はまだ口約束しかできないけど、 俺達がもっと大人になって、 俺がお前を自分の力で支えられる様になったら結婚しような」 その告白は思いがけもしない事だった。 「僕で良いの?  本当に僕で良いの? 矢野君、御曹司だよ? そう言ったのって家柄の結婚とかがあるんじゃないの?」 矢野君は優しく僕に微笑むと、 「お前以外、俺の事を扱える人間がいると思うか? 俺は素直じゃ無いし、爆弾も抱えている。 お前はそんな俺を笑顔で受け入れ、 受け止めてくれる。 俺が安心して俺らしくあれるのは お前の前でだけなんだ」 その言葉は僕に爆弾となって落ちてきた。 「うわ〜ん、矢野く〜ん! 大好き〜 それって最高の告白だよ〜」 そう言うと、僕は矢野君にピョーンと飛びかっかった。 彼はヒョイっと僕をだきあげると、 そのまま湖に入って行き、 滝のところまで来ると僕をそこに下ろして体を洗い始めた。 「あのな、家柄での結婚はするなって俺に教えてくれたのは 一花大叔母さんなんだ」 「そうなの?」 「家ってさ、ずっと恋愛結婚の傾向にあったみたいなんだけど、 やっぱり世間ではまだまだ色んなしがらみの風習が残っててさ、 やっぱり俺は直系の長男の長男だから色々とあるわけだよ。 でも一花大叔母さんが、絶対家の犠牲にはなるなって 教えてくれて…… 必ず好きな人と結婚するようにって…… 俺は彼女の考え方が大好きだった」 そう言って矢野君は僕の顔に付いた泥を拭きとってくれた。

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