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第33話 新しいチョーカーと面接

「あれ〜 長谷川君、新しいチョーカー?」 まる子が目ざとく僕を見つけてツッコミを入れて来た。 「あ~ うん、そろそろ新しい柄が欲しいかな? って昨日買いに行って来たんだ」 そう言ながらチョーカーに触れ、 もうサファイヤのついたチョーカーではないことを 否応なしに知らしめられた。 そんな僕のチョーカーの事も知らないまる子は、 「うん、うん、こっちの方がポップで長谷川君に似合うよ! 前のサファイヤもどきは綺麗だったけど、 ちょっとアンティーックっぽかったから ファッションに気を付けないと浮いてたからね!」 と褒めてくれたけど、彼女の中では既に 偽物サファイヤ決定で僕には少し複雑だった。 「それはそうと、ゼロには履歴書送ったの? もう締め切り過ぎたでしょう?」 「そうなんだよ~ 実は明日が面接なんだよ~」 と話をしていたのが昨日で、 早くもその日はやって来た。 僕は少し緊張気味で面接会場の椅子に座っていた。 面接には10人程の人が居た。 まる子が言った様に皆んながΩなのかは分からないけど、 もしそうであるのなら、 こんなに一度にΩが揃うのを見るのは初めてだ。 それぞれをチラッと見ると、 皆洗練されたモデルの様な人ばかりで、 “この人達は来るところを間違えてるのでは?” と言う様な感じばかりの人達だった。 逆に言うと、平凡な見てくれの僕は、 この人たちの中に混じると、 逆に目立ってしまった。 もしかしたら僕が場違いだったのかもしれない。 途端に去年の夏に行った沖縄での初めての日を思い出した。 「一人だけ列を乱しちゃって何様のつもりかしらね?」 「彼、本当にここに受かったの? コネ? 何かの間違いじゃないの?」 女性にしてはそんなことをヒソヒソと言われ続けた。 男性陣からは “どんくさい奴が来たな~” “こいつαじゃないな” “こいつ高校生か? まじか? 仕事できるのか?” のような視線でジロジロと見まわされた。 皆よりも出遅れた僕は一人だけ鈍臭さが目立っていた。 だからここでの僕に対する視線は覚えがあった。 “落ちたな……” 周りを見ると、そう思えざるを得なかった。 でも書類審査で受かったのは天晴なもんだ。 そこだけは自分を褒めてやりたい。 そう思っていると、 「長谷川さん、中へお入り下さい」 と面接の順番が回って来た様だった。 「ハイ〜」 と言う裏返った声に、 皆んなの “クスクス” と言う笑い声が聞こえて来た。 僕は真っ赤になってドアの向こうへと入っていった。 今回の面接には一次と二次があり、 一次は個人面接でそれに通ると二次は適正と言うか、 花を使った作品の制作があった。 今はその一次。 僕は部屋に入ると、 深くお辞儀をして席についた。 あまりにもの緊張に殆どの質問にどう答えていたのか分からなかったけど、 一つだけ面接官の反応に手応えがあった部分があった。 それは沖縄でのアルバイトの経験だ。 この職に何の関係があるのか分からないけど、 面接官は、僕のアルバイトの経験について、 かなりの興味を示したのは不思議だった。 ただのランドリー係だったのに、 その面接官は笑みを一杯にして、 “うん、うん” と頷くと、楽しそうに僕の話を聞いてくれた。 そんな緊張した面接も無事に終わり、 二次へ進むのは半分の5名だった。 中休憩の時、 「ねえ、アルバイトの面接の割にはこれってマジじゃない? 正社員の面接並みだよね〜」 と言う声に、 「このバイトって言わば未来の正社員候補の面接みたいよ? 受かれば安泰って訳ね」 と言う返答が聞こえて来た。 僕はその会話を “へ〜” と感心して聞いていた。 皆一体何処からそんな情報を得てくるのだろう? 僕がただ単に疎いだけなのだろうか? それじゃ此処にいるみんなは 就活とみなして来てる? それじゃあ、そんな事も知らずに、 のほほ~んと来た僕は、 皆に取っては目の上のたんこぶだろうな…… そう思っていると、 早くも一次の発表があり、 僕は審査を通ってしまった。 驚いたけど、一次審査に受かった僕よりも, 面接に来ていた他の人達の方が 僕が一次審査に受かった事をもっと驚いていた。 みんな一斉に “何でこんな奴が? 冴えないのに? どんくさそうなのに?” と言う様な目をして僕の事を見た。 何気なしに受けたこのバイトは一瞬、 “此処に受かるにはルックスも必要なのか?” とさえ思わせた瞬間だった。 全く失礼にも程がある。 確かに僕は見た目はパッとしないけど、 自分は割と出来るヤツだと思う。 でも去年の夏の事も言われて見ると、 どうして僕が受かったのか不思議だった。 倍率はかなり高かった筈なのに、 僕は面接に来ていたα達を蹴落として あの夏のバイトを手に入れた。 それも高校生だったのに…… 確かに高校生も応募資格があったにもかかわらず、 あのバイトに受かった高校生は僕と矢野君のみだった。 でも矢野君はあのホテルの経営者の息子…… それを考えると、高校生で受かったのは僕一人だけだった事になる。 それもαの中で、ただ一人のΩとして…… “ツキが回って来てる? それともただの偶然? イヤイヤ、きっとこれも僕の実力…… って事は絶対無いよな…… それともΩは落とせない決まりがあるのかな? きっと面接官は出来る僕の事をよく見ていてくれたのだ!” そう自分に言い聞かせた。 そして一次審査に通った僕達5人は 落とされた人達の嫉妬と妬みの視線の中、 次の審査のドアへと入っていった。

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