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これは 何 なのか

手が、綺麗だと思った。 次に、浮き出た血管、骨格、声。 アイツから醸し出される空気。 ひとつ綺麗だと思ったら、全て。 お前をまとう全てが、綺麗にみえた。 魅入ってしまった。 僕は、おかしいんだ。 いや、おかしくなってしまった。 アイツを、アイツのことを 喰いたい。 そう、思ってしまった。 それから自分が怖くなった。 なんだ、なんなんだ。喰いたいって。 怖すぎる。何を考えているんだ、僕は。 アイツを見かけるたびに、頭の中で想像してしまう。 眼球を舐めたい。 舐めて、舐めて、くり抜いて口に含んだら、甘い?それとも、しょっぱい? 頭からバリバリ喰おうか。頭蓋骨を割って脳みそを。それともあの白い腕や首筋に浮き出た血管から血を、空っぽになるまで吸い取ってそこから肉を、 ダメだダメだダメだ。 僕は、何を考えているんだ。 こんなこと、こんなことを考えているんなんて知られたら、気付かれたら。 僕は きっと死んでしまう。 これほどまでに、自分のことを嫌悪したことがあるだろうか。 僕は、僕が怖い。 たいして話したこともないアイツ。 認識されているかも分からないアイツ。 何もかもが綺麗なアイツ。 喰いたいと思ってしまったアイツ。 でも、 多分、きっと。 アイツは甘い。 -END-

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