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第22話

随分遠くまで来たものだ。 例え晴れていてもそこそこ時間を要したであろうこの距離。 この辺りは駅から遠い上にバスの最終も20時だったか、21時だったか…そのくらい。 佐々木のように自転車でどこまでも走っていける活発な野郎でなければ、引きこもり生産地区と言っても過言じゃないだろう。 まあ俺は車を持っていても、仕事以外に外出する事なんて有り得ないのだが。 「雨マジやばいっすね…。停電とかありますかねーこれ。」 「……あぁ。」 今一体どれだけ雨が強いのかと言われれば、そうだな…忙しなく動くワイパーがもはや邪魔で仕方なくなって、Uターンした辺りからは遂に動かす事も辞めてしまう程だった。 遠くの方でぼんやりと光っていただけの雷は、徐々にこちらに近づいてきているのか稲妻の形をくっきりと見せて地面の底を響かせる。 こんな最悪の天気の中、今までまともに話した事のない男子高校生を …独り暮らしの自宅に連れ込もうとしている俺。 ……………え?誘拐犯? いや、この場合は人助け。 しかし、考えてみろ。そもそも佐々木は帰れなければコンビニで寝泊まりすると言って着替えも持ってきていたのだ。 それを送ると見せかけて自宅に連れ込む、のは……。 だめだ。 良い言い訳を探したが、どう足掻いても俺は犯罪者だ。 俺のこの葛藤に気付く筈もない佐々木は、窓の外を眺めたり、おにぎりの空袋を器用に折って五角形にしてみたり。 なんて呑気なことでしょう。 こちとら赤ライトの恐怖で夜も眠れなくなりそうだ。 「あ、竹内さん!」 「…あ?」 「俺、佐々木っていうんすよ!よろしくお願いします!」 美しい五角形を稲光にかざし、背景には真夏の太陽が似合うであろう屈託の無い笑みを浮かべて。 何を言うかと思えば急すぎる自己紹介だ。 今それかよ。 あと、知ってる。

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