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第180話
最後の方は諦めモードだった。
遅い時もあるけど、でも今日は多分…逃げるみたいに帰った俺が居るコンビニには寄らないだろうなって。
少しの希望に縋って残業してオーナー手伝って、急いで帰らなきゃ補導される時間が迫ってんだから笑っちゃう。
店の制服を鞄に押し込んで自転車に足を掛けた。
スマホを見ても、そもそも向こうから連絡くれる事なんて無かったんだから来てる訳なくて。
せめて仲良くありたいと思うのなら俺から動くしか方法はない。そう、わかっているのに…竹内さんのアイコンに触れる事が出来ない。
仕方なく、既読もつけていなかった前の学校のダチから来ていた『時間出来たら電話して』に応える事にした。
『もっしー、伊織?』
「んー。なに?」
『久しぶりだなあ!つか煩くね?』
「あーイヤホンしてチャリ漕いでる。」
今の高校もなかなか緩めだけど、前はそれ以上だった。俺が青くして、こいつが赤くして、合わせてキキララだとかイキった髪色にしていたお陰で今も毛先はキッシキシだ。
まあそんな事はどうだっていい。今は一人で長い道のり走ってるより、誰かと話していたかった。
『伊織土日どっちかあいてるー?』
「日曜日ならバイトねえよ。」
本当は明日も、休みたかったらいいよってオーナーに言われてるんだけど。
三日月ヤローが買って行った煙草の量じゃあの人は週末越せない事くらい知ってんだ。だからほんの少しでも望みをかけて、待っていたいんだ。
『久々にこっち来ねえ?』
「はあ?遠いじゃんお前が来いよ。」
『いやコラボカフェやってるんだって!キキララの!』
「キキララのカフェ行きたいの?wwwウケる。」
馬鹿みたいにド派手な髪で、帰宅部の俺と違って本気で陸上やってたそいつは見た目もなかなかいかつい。そんな奴がキキララの為に俺の予定聞くとかマジで面白すぎて転ぶかと思った。
そういうのはその辺の女捕まえて行けよって言うと、多分本気で怒られる。不良やってる男ほど女関係大事にしてたりするから。あとは単純に冗談が通じない。
『なーぁマジで頼むって!俺来週誕生日だし!』
「……ったくしょうがねえなあ。行ってやるよ。」
『よっしゃ!じゃあお前髪青くしてこいよ!俺赤くしとくわ!』
「勝手すぎんだろwwwカラーワックスで許してくんね?」
悪いけど今俺黒髪にハマってんの。竹内さんと同じ色。まあ、あの人のは俺と違って天然の黒髪だろうし無理やり黒染めした不自然なのよりずっとずっと綺麗なんだけど。
かつての友人と話すのはやっぱり楽しくて、家に着くまであっという間だった。
平日なのに竹内さんと会えなかった寂しさを埋めるように続けたそれは、日付を跨いでも繋がっている。
明日は部活の大会だというそいつに適当なエールを送り、ベッドに潜った。
通話履歴に表示される竹内さんの通話時間とじゃ比べ物にならない2時間半を見て、少し悲しくなりながら。
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