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第1話

 午後九時より少し前。  大学生である一ノ瀬晴(いちのせはる)スマホで無料トークアプリを起動させた。相手は遠距離に居る彼氏への定期連絡だ。  遠距離恋愛あるある光景だろう――――この辺りまでは。  出張中の彼氏は晴より年上で、世間一般的には外資系企業のエリートコースを邁進するサラリーマンだった。  バイト先で彼に出会ったのは今から半年前で、相思相愛となった今、本来ならばどろどろネチョネチョな蜜月期間なのだが、エリートサラリーマンである彼氏は現在出張中で、学生の身ではおいそれと会うことができないのである。  健全な肉体に不健全な精神を宿す晴にとってもはや地獄。  やりたい盛りの時期に強制お預けとか、なにそれ若く奔放な下半身が爆発してしまう。  ごく親しい友人の間で優しげな容姿の晴は、ロールキャベツ男子と呼ばれていた。もしくはサヨリ。  柔らかな癖のある栗毛に、白い肌。垂目がちの瞳に泣き黒子という、ほんわりした中性的な見た目に反し、晴は草食系に擬態したガッツリ獰猛肉食系男子なのは疑う余地がない。さらに魚のサヨリのように表面は銀色美しいのに腹の中は真っ黒なのである。  ああ、早く会いたい。  会って抱きしめて、キスして、可愛がって、首輪をつけて引きずり回してヒィヒィ泣かせたい……晴の心は遠く離れた彼氏のことでいっぱいだった。  いっぱいの内訳約八割が首輪の件であることが残念な部分だったが。  その悲しみを癒すようにスマホにハンズフリー型のイヤホンマイクを同期させる。両手はフリー。男の子にこれは大事。  おそらく彼氏も同じようにイヤホンマイクを着けているだろう。    今日の約束は午後九時。  この前ネットショップを経由して送り付けたプレゼントも届いているだろうと、わくわくしながら彼氏に声をかけた。  ちなみにプレゼントのセレクトは天啓を受けた晴の趣味だが、その支払いは彼氏持ちである。  彼氏は学生である晴に負担を強いない男だ。性的負担は強いられているが。さ  逸る気持ちを抑え、努めて興味なさそうな口調で語りかける。 「ねえ、僕にご挨拶は? 挨拶もできない子なの、僕の可愛いドMちゃん?」  舌なめずりしそうな晴の声が届いたのか、数秒間の沈黙の後にイヤホンから途切れがちの低い声が鼓膜に届く。 『……こんばん……は……、ご主人、さま……ッ』  低い声だ。普段の彼氏の声は重低音で色っぽいのだ。  イヤホンのおかげで、まるでじかに耳元で囁かれたような声に晴のスイッチが入った。 「返事が遅くない? なに、僕と話したくないの? だったら今日はやめよっか? 別に僕はどうでもいいし」  わざとらしい冷淡な声で吐き捨てる。それが嘘なのは、ご主人様と呼ばれただけで股座が熱くなり、ベッドに仰向けに寝転がって股間に手を伸ばしている事でわかるというもの。  ただしビデオ電話ではなく、普通のトーク電話のために晴の様子は向こうに分からないだろう。 『いや、です……っ、ご主人様ッ!』 「じゃあなんで返事が遅れたの? ねえ僕が相手してあげてるのにふざけてる?」  普段は低音で落ち着きのある声が慌てふためく様子に、可愛いねと心で呟いて満足そうにしながら、作った声は冷淡なまま。  言葉を躊躇えば怒りに触れるとわかってるのか、今度の返事は早かった。 『ご、ご主人さ、まの……贈りものを着けていて……ッ』 「へえ? ちゃんと着けたんだ? 偉い偉い。じゃあその自撮り画像を見せてよ。ちゃんと似合うか確かめないとね?」 『は、はい……』  何を贈ったか、それを選んだ晴は当然知っていた。晴が選んだ荷物のパッケージをどんな気持ちで破き、それを見たときの顔はどうだったのか。彼氏の表情が拝めなかった事が本当に悔やまれる。  あの生真面目そうな顔をどんな風に歪めたと想像するだけで、一発は抜ける自信があった。  相手の顔を想像するだけで股間が張り詰め、送られる画像が楽しみで楽しみで堪らない。  固くなりつつある股間を撫でさするうち、軽快な着信が響く。急いでスマホを見て画像を確認し――後悔した。  画像にあるのはいかにも仕事ができそうな怜悧な顔つきの三十路前の男。彼氏である各務圭樹(かがみけいじゅ)の普段はきっちり整えた髪が少し乱れ、一重の切れ長の目じりは赤く染まっている。  尻と背中をカメラ側に向け、振り向きざまに見せる表情は羞恥と肉欲に塗れていて。  その蕩けかかった表情に相応しく、カメラに向けられる引き締まった尻からは、毒々しいピンク色の捻じれた物体がぶりゅんと食み出している。  ぐりぐりと螺旋を描くそれは、豚の尻尾を模した、アニマルテール型のアナルプラグだった。  ――しまった。失敗した。  その引き締まった豚の尻尾付きの尻を強調するような画像に晴は心底悔やみ抜いた。  ――豚の耳と、鼻フックも一緒に送るべきだった!!!  わりとどうでもいい後悔である。   スマホの画面に収められた圭樹の痴態を前に、晴はじかに触れる事ができない画面の尻をそっと指で撫でる。  引き締まった肉合いから覗く、豚の尻尾を模した毒々しいピンク色のアナルプラグが堪らなく可愛かった。 「圭樹さんさぁー、エリートって呼ばれちゃう人なのに、豚の尻尾なんか着けて恥ずかしくないのー? お尻の穴にズッポリ入れてるんだよね? あれ、間違ってLサイズのアナルプラグだったんだけどよく入ったなぁ。毎晩バイブで尻穴をズボズボしてたんでしょ? 圭樹さんの変態。簡単にプラグが入っちゃうとか、もうさ、人として終わってるよね?」 『……ッ!』 「でもいいんじゃない? 変態エリートの圭樹さんらしくて。豚の尻尾が無様で間抜けでよく似合ってるよ?」 『……そ、んな……わ、わたし、は……』  豚の尻尾付きのアナルプラグを見つけた時は、圭樹に似合うと即座に購入ボタンを押した晴だ。贈られた画像には大満足だが、そこで褒めては躾にならない。  くるんと螺旋状に巻いたピンク色のアニマルテール部分をなぞりながら、口調はわざと小馬鹿を装うのは当たり前の態度だ。言葉で虐めれば、イヤホンから息を呑む音が響いて彼の心情を思うと楽しかった。  学生時代から優秀で挫折らしい挫折を知らなかった圭樹は、表向きは謹厳実直な紳士だった。他人にも自分にも厳しく、冷徹な表情は近寄りがたい雰囲気さえある。  だけど、晴は知っていた。自分だけが圭樹を知っている。  優秀であれと抑圧された圭樹の内面は自分が気付かないまま歪み、表の自分と真逆な態度で扱われると興奮を覚える本心を隠していたのだと。  言葉で嬲り、羞恥に堪えない格好をさせ、異様な空気に包ませる――圭樹は晴でも滅多に見ない被虐趣味のマゾネコだった。  晴は圭樹が好きだ。圭樹と会うまではさんざん遊んだし、不義理もしてきたけれど、今は圭樹以外に欲しい人はいない。  だから圭樹が喜ぶなら、どんなに恥ずかしいこともさせるし、どんな酷い真似だってできる。たっぷりと甚振る言葉や態度は圭樹を好いての行為だった。  ……むろん、自分本来の加虐趣味も大量にあるのだが。 「ねえ、豚の尻尾を振って見せてよ。動画撮れるでしょ? そーだなぁ、“はる”って、その恰好で尻文字で書いて見せて。ご主人様の名前をきちんと書けるよね?」  誰もが認める優秀なエリート。その男が豚の尻尾を着けた尻をぷりぷり振るなんて最高じゃないか。 『……ご、ごしゅじん、さま……そ、それは……』 「口答えは許さないからね? 僕の言葉には“はい! 喜んで”でしょ?」  電話口で引き攣った呼吸音が聞こえて、晴の下半身が熱くなる。きっとあのキツイ一重に涙を浮かべているだろう。  羞恥と屈辱と喜びで。 『はい……喜んで……』 「三分以内でやりなよ。動画、待ってるから」  この三分間は晴にとっても期待で胸と股間がはち切れそうになる。  あの圭樹が今頃、スマホをセットして尻を振る動画を撮っているのかと想像すると、下着を履いている場合じゃない気がした。  ローライズのボクサーパンツを脱いで、圭樹の声と画像だけで半勃起した自分の陰茎をそっと掴む。  晴のご自慢の逸物は、中性的な花のような容貌に反し、黒々とテカったなかなかの巨根だった。  二、三度軽く扱いているうちに、軽快な着信音が響いてドクリと陰茎が跳ねた。  スマホを見れば固定したスマホのカメラに向けて、言ってもないのに四つん這いになって尻を向けている圭樹の姿。緊張しているのか、えくぼができた尻の狭間から覗く豚の尻尾が愛らしい。  晴は胸と陰茎を高鳴らせながら、スマホに送られた動画を再生をクリックした。  小さな矩形の中で、ゆっくりと振られる圭樹の筋肉質な尻。  上から下に、左から右に、そしてまた上から下に動いてから円を描くように。その動きは平仮名の“は”だ。  アナルプラグはシリコン製だった。プラグ部分もそうだが、豚の尻尾部分も柔らかいシリコンなので、尻を振る動きに合わせて、尻尾までプルンプルンと蠢くさまがいやらしい。  豚の尻尾を揺らしながら、自分の名前である“は”“る”を尻で描く姿がたまらく愛しく、たまらなく犯したくなる。  ああ、本当になんでスマホ越しにしか会えないのだろう。  いやらしい尻を真っ赤になるまで叩いてやりたい。四つん這いの格好をせせら笑って背中を椅子代わりにしてやりたい。豚の尻尾を装着したまま、四つん這いで尻を振らせながら喉奥まで自分のものをねじ込んでしゃぶらせたい。  ――なんですぐに会えない距離なんだろう?  寂しさと狂おしさが怒りに変換する。これはもう、会えないからとただの八つ当たりだ。  晴はどんどん硬度が増す陰茎を握りながら口を開いた。 「圭樹さん聞こえる?」  たぶんワイヤレス型のイヤホンを着けているはずだから、晴の声は聞こえるはず。  けれどあの可愛くていやらしくて愛しくて淫乱な彼氏であり奴隷である圭樹は、たまに自分の快楽を追いすぎて、イヤホンが外れても気が付かない時があるのだ。  そんな躾の甲斐がある態度も好ましいが、今夜はちゃんと聞いて欲しい。 『……ン……ッ、あ、ぁ……き、きこえ、ます……』  「なに発情した豚みたいな声を出してんの? 返事が遅いよ」 『もうしわけ、あ、あぁ、りません……ッ』  すでに蕩けた声。圭樹は家畜のような尻尾を着け、悩ましく尻を振る自分の姿に興奮しているのだろう。なんてスケベで変態なエリート様だ。 「社会的立場があるエリートが、発情した家畜みたいにお尻振っちゃってさぁ……洗練された変態のエリートは違うよね。年下の学生にわざわざお尻フリフリ動画を見て貰うなんて、僕なら恥ずかしくて死んじゃうもん。自分がどんなに不様かわかるー? お尻振って年下相手に媚びてるんだよ?」  そんな自分に媚びる態度は本音は“いいぞ、もっとやれ“ではあるが、褒めるより貶す方が圭樹が喜ぶのだと晴は知っている。だから心を鬼、いや鬼畜にして虐めてあげるのだ。  鬼畜と家畜。なかなか良い関係だと自負する。 「僕がわざわざ圭樹さんがどんな奴か自覚させてあげているんだよ? なにかちゃんとした言葉はないの?」  言外に晴が気に入る答えを寄越せと告げながら、腹を打ちそうなほど剛直をみせて勃起した自分の陰茎を撫でて言う。  イヤホンから聞こえる、荒い呼吸交じりの声に躊躇いはなかった。 『……あ、ありがとう、ございます……ご主人、さまァ……ぁ……』  キた。  最後の甘えるような声にキた。  スマホを構えて自分の股間を自撮りする。  亀頭が大きく張り出し、血管が浮かぶ凶悪なまでに勃起した自分の陰茎。我慢汁が滲んでてらてらとテカるさまが、自分で見てもマゾネコなら尻に欲しくなる逸物だろう。 「ちゃんと言えたご褒美。見てね? その画像を見ながら、いま一番欲しいものを言ってごらん?」  しばらくの沈黙の後、イヤホンから聞こえる圭樹の呼吸がますます荒く乱れて、自分の逸物に興奮しているんだと嬉しくなる。 「ほら、言えよ。なにが欲しい?」  晴自身も興奮して言葉が荒くなるが仕方ない。耳に直接はぁはぁと恋人のいやらしい呼吸と喘ぎが聞こえるのだ。興奮するなと言う方が無理ではないか。  イヤホンから、途切れ途切れに、しかし強く欲する声が聞こえたのはその直後。 『……ち、ちん、ぽ……ご主人様、の……お、おちんぽ……欲しいです……ッ」 「圭樹さんには羞恥心ってものがないの? ほんと変態発言には引いちゃうよね」  欲情に突き動かされ、ひねりも比喩も無く、ストレートな言葉になった圭樹の声に呼気が熱くなる。   あからさまなお強請りは、それだけ自分が欲しくて仕方ない証拠。  欲深で、素直で、いやらしくて、なんて可愛い生き物なんだろう。 「年下の、それも学生のチンポをお強請りしちゃうんだー? そのトロットロのスケベなお尻に、根元まで僕のチンポを嵌められて突かれてズボズボされたいのー? 僕のは圭樹さんの結腸にまで届くもんね?」  揶揄する口調で笑いながらも、晴は、圭樹の熱くうねる肉の穴を思い出して臍の下がきゅうっとなる。  圭樹の中は最高で、まるで誂えた刀身と鞘のようにびったりと嵌まって相性抜群なのだ。  要領がよく大概のことはそれなりに熟せる晴は、真剣に何かを欲したり求めたりした経験をしたことがなかった。けれど圭樹と出会ってから、晴は圭樹以外には興味が持てなくなってしまう。圭樹ほど心も肉体もぴったり来た相手は居なかったのだ。 「ほらぁ、どーなのかなー? 欲しいものはないのー?」  声だけは必死に余裕を持たせて、溢れ出した我慢汁を勃起した陰茎に塗り付けながら言葉を促す。 『……ほ、ほしい………ご主人、っ、様……の……おちんぽでズボズボっ、ズボズボされ、たい……ッッ!』  普段の冷静で知的な言葉遣いはどこへやら、本能が剥き出しになった分かり易い言葉に脳みそが沸騰しそうだ。  本能の叫びはいつだって男に刺さるものなのだ。  真面目で優秀で紳士的なエリート中のエリートである、各務圭樹。あの圭樹をこんなふうに出来るのは自分だけ。自分だけが理性という圭樹の厚い殻を壊せるのだと確信すると堪らない。  そんな優越感と高揚感にヌルヌルになった陰茎を扱き出す。自分を欲しがる素直な声に、こちらの声も余裕がなくなっていく。 「……圭樹さん……圭樹……ッ、もっと……もっと言って……もっと、もっとバカみたいにっ、僕を欲しがってっっ!」  手の平に浮かんだ血管を感じながら揉みくちゃに陰茎を扱く。  イきたい。  圭樹の声でイきたい。 『ごしゅじん、サマ……の、おちんぽ……ッッ……わ、わたしの、ご主人さま……、晴、さま専用の、穴に……ッ……おちん、ぽッ……恵ん、で……ほしいっ……』  その言葉に陰茎に絡む感覚を思い出した。  熱くてとろとろで、晴の精液を搾り取るように絡んでくる、一ノ瀬晴専用の穴をよく知っている。  毅然とした男の矜持を突きまくって、淫乱なメス穴にしてやったのだから。 「んんッ…射精()る! 射精()ちゃう! 圭樹の、声で、ぶちまけるからっ……!」  圭樹の、晴専用の意穴を思い出して尿道に熱い奔流が駆けあがてきた。背筋が粟立つ感触。ベッドの上で体が引き攣れて跳ねた。  遠慮のない射精。  若さのせいで勢いよく噴出した精液は、予め狙っていたスマホの画像に映った圭樹へと叩きつけられる。  彼氏であり、恋人であり、奴隷であり、玩具であり――それら全部をひっくるめて“欲しい”に帰結する存在。  圭樹が欲しがったように自分だって圭樹が欲しい。  でも圭樹より自分の方が欲しがってみせるのは癪だから、圭樹にはオアズケさせたまま。  頭の中で欲情が破裂しかかって呼吸を乱す圭樹の呼吸は、圭樹自身の開放を無言で求めていた。  でも、だめ。  もっと晴を欲しがるまで、まだ圭樹はイかせてやらない。  自分の精液で汚れたスマホを眺めながら、イヤホンマイクに少し声を大きくして圭樹に語り掛ける。 「……は、はは……。ねぇ、圭樹さん……僕、イッちゃった。圭樹さんの声でイくの、すっげえ気持ちよかった」 『……ひ、ぅ……っ!』  イヤホンから聞こえる苦悶の声。当然だろう。自分だけイッて圭樹はそのまま放置した状態だ。イヤホン越しに晴が達し、その様子からさらに自分も高まって興奮しているはず。  そんなに興奮しているのに、晴の許可を得るまでイくの我慢するなんて本当に圭樹は可愛い。  可愛いから、もっともっと虐めてあげなくては。 「いーっぱい出た僕の濃厚なザーメンさぁ、あんまり豚の尻尾が似合うから、圭樹さんのお尻にぶっかけちゃった。ま、スマホの写真だけどね? ふふ、圭樹さんのお尻に僕のザーメンがどろって伝ってる」  出張前は圭樹のお尻に精液をぶっかけてやったものだ。もちろん顔や勃起した陰茎や至るところにも。  それを思い出しているのか、圭樹の声がさらに逼迫する。 『……あ、……はぁ……ぁ……ッ……は、はる、さま……わたし、も……』  イヤホンにイきたくてイきたくて仕方ない声が届く。その声を聴けば限界が近いのだと知れるが、近いだけでまだ限界ではない。――なら、もう少し焦らして遊ぼうか。 「ご主人様が余韻を楽しんでいるのに、もう自分の事? ……んー。どうしようかなぁ……そうだ! 僕の言う通り、おねだりのポーズができたらイくの許可してあげちゃう」  さてどんな卑猥な格好をさせようかなと小首を傾げる。 『し、します……、やり、ます、……からッ!』 「やるって言ったよね? よしよしイイコ。――んー、そーだなぁ……あ、今からビデオ電話にしよっか? ちゃんとエッチな体が映る場所にスマホがあるよね?」  最初からビデオ電話にしなかったのは焦らしプレイの一環だったが、今の圭樹の状態では一々写真や動画を撮って送る手間は難しいだろう。  ほどなく互いにビデオ電話に切り替える。  そういえば、晴の顔をみせてやるのは今日は初めてだ――勃起した陰茎は送っていたけど。  ニンマリと笑う顔は、小悪魔そのものの表情だ。  ほどなく互いの準備が整い多少のタイムラグはあっても、ほぼリアルタイムでお互いの顔を見ることができて嬉しくなる。 『……ッ! 晴、さま……ッ』  それは圭樹も同じようで、ピンクベージュのシャツを羽織っただけの晴の顔を見て、普段は冷静で端整な顔が蕩けきってしまうのがギャップ萌えを食らわせてくる。  下半身まで映せばもっとトロ顔が拝めるだろうが。 「なーに、その顔。発情しきってみっともない。その顔で今度職場に行ったら? 豚の尻尾をつけてさ。新しい仕事ができるんじゃない?」  わずかに職場での自分の立ち位置を思い出したのか、赤くなって俯き加減になる姿がまた愛おしい。 「じゃ、ちゃんとやってね? 全身が映るように下がってから、……うん、それくらい。まずはー、膝立ちになってよ。……あれ? 圭樹さん、お尻をプラグで穿られただけでフル勃起?」  晴の言葉に従っても、羞恥を煽る言葉は忘れない。 「ほら、ぐずぐずしないの。もっと大きく股を開いて。もっともっと。……ん、そのまま踵より後ろに手をついて……そうそう、もっと体が反るくらい。最高だよ、圭樹さん! 最高に恥ずかしい格好! 尻尾もチンポも丸見えだよ!」  スマホの画面に映っているのは、勃起したおかげで隠す部分がなくなり、大きく開いた股から豚の尻尾が覗く奥と、天を向く我慢汁塗れの陰茎。まるで股間を晴に差し出すようだ。 「面白いなぁ。よくそんな格好できるね? ――ねえねえ、そのまま腰を振って尻尾とチンポを揺らして見せて!」  外資系企業に勤める圭樹は、同僚と一緒にジムに行って体をそれなりに鍛えている。なにしろ肥満はセルフコントロールができていないと出世に響くようなところだ。  日本人にしては長身であり、均整が取れた圭樹の肉体は晴が見ても端正で綺麗だった。  その綺麗なが体が、こんな惨めな姿を見せるなんて。 「ほら、その恰好で腰を横に振って。早く! のろまな圭樹さん、イきたくないの?」  床に膝をついて大きく広げ、のけ反るように上半身を仰向けに倒す格好は、まるで晴に股間を捧げているかのようだ。  限界まで広げた股間の奥からアナルプラグに付いた豚の尻尾が覗き、勃起した陰茎は我慢汁に濡れながら天を向く。それらが左右に揺れるさまは玩具のようで、晴は嘲笑する形でその姿を褒めてやる。 「豚の尻尾も無駄精子袋も、メスと交尾できないチンポもよぉーく見えるよ。圭樹さんの種付けできない無駄精子袋、パンパンじゃない。踏んだらぶしゅって無駄打ち精子が出ちゃいそう」  前に踏んでやった時の刺激を思い出したのか、圭樹の尻がビクンと持ち上がる。 『……ひ、ぅぅ……はぁァ……ぁッ…もぅ……もぉ……ッ!』  上がり切った睾丸が射精が近いのだと知れた。本当のそろそろ限界なのだろう。  でも、まだダメダメと晴は唇を舐める。 「ほら、次は上下に腰を振って。いやらしければ、いやらしいほど、僕の気持ちが動くかもね?」 『……は、い……ッ』  早くと急かして画面を見れば、何でも言う事を聞いてイきたい圭樹がゆっくりと腰を上下させ始める。鍛えているせいか無理な姿勢でも体は動き、それが不幸にも淫らな状況を加速させてしまう。  左右では亀頭が揺れるだけだった陰茎が、上下では回転するように蠢いて、おまけにアナルプラグの豚の尻尾まで物欲しげに動くのだ。 「あはは! なにこれ、えっろ! 圭樹さん、すっごく変態的。それって僕のチンポに物乞いなの?」 『ひ、ッ……ひ、ィ……ッ……は、はい……ッ』 「チンポ欲しさにそんな格好して、尻を振ってチンポ乞いとか本当にプライドないね。男としての矜持はないの? それでも人間なの? ほら、お前は人間なのか? チンポ好きの変態野郎!」  ワザとらしく罵りながら、晴の手は再び自分の竿を扱き始める。だってあんなに愛らしい姿を見て興奮するなとか言う方が無理だ。 「ほら、僕のチンポが好きなのかよ!」 『……す、好き……で、す……ぅ!』 「認めたよ、この淫乱野郎! オスのチンポ欲しがるとか、それでも男かよ!」 『……い、いい、え……あ、あぁッ……も、イく……』 「罵倒されてイくなよ、ド変態! それでも人間か!?」 『……ひ、ひ……ぐ……う、ぅぅ……い、い、いぃえぇ……ッ』  どこまでも追い込んで、追い詰めて、圭樹が晴しか縋れなくなるように。  再び固くなった自分のものを擦りながら晴は最後のとどめを刺す。  お互いに分かっている。  どんな言葉が欲しいのか、なにが言いたいのか、どういう結果を望んでいるのか。 「……ん、んッ……じ、じゃあ……お前は、なに? 僕のチンポ、で……オスでも、人間でもなくなって……何になった!?」  ほら圭樹、早く言って? 早くイッて?  僕に堕ちる圭樹を丸ごと愛するから。 『……わ、……わた、し……はぁ……ッ、ぶ、ぶた……で、す……ッ! はる、ざ、ま゛の……ッ、お、おぢんぼッメス……ッ豚、で、すッッッ』  本当に、誰より愛してる。 「――イけ! メス豚……ッ! 僕のチンポ……想像して……イけよ! 情けないチンポ乞いしてさぁっ! イけ! チンポ狂いのッメス豚ッッ圭樹ィッッッ!!」  “イけ”、“メス豚”。  それがスイッチだったかのように、圭樹の体が大きく跳ねた。 『ご、しゅじん、さま……ちんぽ……、お、おぢん、ぽっ……い、イく……イく、イくイくイくイくイ゛グゥゥゥゥゥゥッッッ』  なんて淫らで、浅ましくて、知性のない声。圭樹に脳内では、晴の怒張で抉られる自分が見えているのかもしれない。そんな想像で理性をかなぐり捨てたのだ。  けれどその理性のない声に殴られ、晴は堪えきれずに二度目の射精をしてしまう。  自分の手というよりも、晴は圭樹のイき声でイッたという方が正しいだろう。  自分というオスを求めて壊れた声を出すなんて、なんて可愛い可愛い、晴だけのメス豚。 「……も、圭樹さん……えろい……」  呼吸を乱しながら、やっと果てたであろう圭樹の様子を見ようとスマホの画面を覗く。  それは圭樹をよく知る晴ですらめったに見ない光景があった。  イけと晴が罵りながら命じた瞬間、圭樹は獣のような声を上げて全身を硬直させた。可能な限り身体を突き上げて胴を震わせ、一瞬の静寂の後、腰を中心に痙攣してから崩れ落ちたのだ。 『……ひ、……ぃ……ひ……ィ……ごしゅ、じん……さま……』  陸に上がった魚のように腰を痙攣させながら、トロトロと濃い精液を溢れ出させて圭樹は声を上げる。 「なに?」  大丈夫? と尋ねたいのを我慢して短く返すのは、向けられた顔があまりにも凄艶だったから。  いつもはきちんと整えた黒髪が乱れ、目の淵を赤くして泣き濡れた顔はトロ顔を超えた色気がある。 『イ、キ……ました……あり、がとう……ご、ざ、いま……』  それだけ言ってくたりと床に崩れる。全身を痙攣させる姿は、未だ収まらない快楽の余韻に浸っているのか。 「イッたって……圭樹さん、射精してないじゃん――あ、そうか」  よく見れば圭樹の陰茎からはとろとろと勢いのない射精が長く続いている。  それは、つまり……。 「ヤバ……ッ」  慌てて晴は口を手で押さえた。そうしないと盛大ににやけた顔がビデオ電話で見えてしまうかもしれない。  離れてからからというもの、電話やメールだけの繋がりだった。  顔は見れるけど、触れたくても触れられない距離を埋める手立ては、晴が指示して圭樹が自分の手なり道具なりを使って自慰をして果てるしかなかった。  けれど今夜はアナルプラグ以外、圭樹の体に触れたものはない。  それなのに圭樹は“イッた”と告げたのだ。  それはつまり――。 「圭樹さん、僕の声と想像の僕で脳イキしてメスイキまでしちゃったんだ……」  自分の声と姿の想像だけで、あんなに乱れてあんなに盛大にイッただなんて、なんて圭樹は晴に相応しい奴隷でメス豚で恋人なんだろう。   「あー! もー圭樹さんっ、好き好き大好き!!」  嬉しさのあまりに思わず叫ぶ。  すると弱弱しい、しかしはっきりとした言葉で返事があった。 『……私は……それ以上……です』  それっきり圭樹からの返答はない。疲れて意識が朦朧としているのだろう。  晴は目を瞑ってその言葉を何回もリピートし、カッと目を見開いた。 「よし、会いに行こう」  長距離? 構うもんか。  大学? ハイ、自主休校。  だって晴は飼い主でご主人様で恋人だ。遠く離れた圭樹に会う理由なんてそれでいい。  飼い主を残して寝ちゃうようなぐうたらなメス豚を、きっちり一晩中躾なおす義務が飼い主にはある。  そして十分に躾なおしたら……あとはたっぷり恋人同士いちゃつくんだと晴は優しく笑ってもう一度『大好き』と告げた。                      終

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