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罠に掛かっていたのは……大きなお兄さんでした!
「ふぇぇぇ……。大きなお兄さんが……罠にかかってる……」
森の奥深く。
大木周囲に仕掛けていた大型獣用の捕獲網を見に行くと、そこには驚きの光景が広がっていた。
全体的に黒い何かが罠に掛かっているなぁ~と思いながら近づくと、罠に掛かっていたのは大きなお兄さんで……網の中でモゾモゾと動いていた。
あまりにビックリして数秒間声をかけることもできなかったが、それじゃあいけないと我に返りすぐに声をかける。
「えっと……だ、大丈夫ですかぁ~?」
大声で声をかけると捕まっていたお兄さんは僕の方へと視線を向け、少し間をおいてコクコクと頷く。
「今下ろしますからね……。少し待っていてください」
よいしょよいしょと仕掛けた網を下ろし、お兄さんが地面に着地すると急いで網を開く。
お兄さんは僕なんかよりも何倍も大きな身体をむくりと起こすと、ん~と背伸びをする。
「あの……すみません。この辺りは人も通らないので獣を捕まえる為に罠を張っていたんです……。怪我……ないですか?」
「………大丈夫だ」
僕が質問すると大きなお兄さんはじっと僕を見つめてくる。
圧が……すごい……。
大きなお兄さんは僕の倍はありそうな身長で、体格だってムキムキで凄い。なんだか高そうな防具をつけていて……腰には立派な剣。
キリッとした顔で目力が凄くて……弱っちい僕なんかは睨まれただけで倒されてしまいそうだ。
大きなお兄さんを観察していると、こめかみ辺りに血の様なものが……。
「あの……ここ痛くないですか? 血がついているような……」
自分のこめかみに触れながら場所を教えれば、お兄さんはそこに触れ……手にはベッタリと血がついていた。
「ひぎゃ! 血、血が沢山出てますよ! 頭! 頭怪我してます」
「………そう言われれば……少し頭が痛い」
「!? た、大変! すぐに傷を洗いましょう! 綺麗にして……それからそれから………。あ……も、もしかして僕の仕掛けた罠で怪我しちゃいました?」
「………分からない」
お兄さんは僕の質問に頭を傾げそう答えるが、状況からみて僕の仕掛けた罠に掛かった時に大木に頭でもぶつけてしまったようだ……。それであんな怪我を……
ど、ど、ど、どうしようーー!
僕はパニックになりながら肩にかけていたカバンからタオルや水を取り出す。背の高いお兄さんには屈んでもらい水で洗い流しタオルで頭を拭くが血は止まらず、頭からはじわじわと血が流れ出ている……。
「傷のところをタオルで押さえておいて下さい! 僕、止血効果のある薬草見つけてきます!」
お兄さんにそう言って僕は急いで森の中を駆けて行く。そして、止血作用のある薬草を見つけ手に取ると急いでお兄さんの元へ……。
お兄さんは大人しく座ったまま僕のことを待ってくれていた。
「薬草持ってきたので……頭に貼りますね」
「あぁ……」
お兄さんの許可が得られたので左のこめかみ辺りの髪をかき上げるとパックリと裂けており、そこから血が出ていた。出血の割には傷は思ったよりも浅く、薬草を貼り付け包帯で巻けば応急処置が終わる。
「頭の傷は痛みますか?」
「いや……今は大丈夫だ」
「よかった……。これは応急処置なのでちゃんとした治療を受けた方がいいと思うのですが……」
「いや……。これくらいの傷は大丈夫だ」
「でも……僕の仕掛けた罠のせいで頭に傷を負ってしまったんです。僕の知り合いのお医者さんに傷を見てもらうので住んでる場所を教えて下さい。家はここから近くですか?」
「家……」
お兄さんは僕の質問に申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「家は……分からない」
「ふぇ?」
「家どころか……ここがどこなのか分からない」
「ふぇぇっ!?」
「というか……俺は誰なんだ?」
「ふえぇぇぇ!? も、もしかして……記憶が無いんですか……?」
僕の問いかけに、お兄さんは大きく頷く。
ど、ど、ど、ど、どうしようぅぅぅ!
怪我をさせたあげく記憶まで……
責任取らなきゃ……取らなくっちゃっ!!
僕は思いっきり頭を下げお兄さんに謝罪をする。
「あの……本当にごめんなさい。僕があんな所に罠を仕掛けたばかりに怪我を負わせただけでなく記憶まで無くさせてしまうなんて……。僕の住んでいる場所がここから少し離れた場所なので、一緒に来ませんか?」
「………いいのか?」
「はい! 怪我が治って記憶が戻るまで……僕が責任持ってお兄さんの面倒を見させていただきます!」
こうして僕は森の奥で大きな大きなお兄さんを捕まえてしまい、怪我と記憶が戻るまでお世話をする事になった。
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