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お兄さんのお世話開始!

デュークさんのお説教が長く、すっかり辺りは暗くなってしまう。小屋の方へと向かえば、窓から灯りが漏れている。 「お兄さん。遅くなってごめんなさい」 「ココ。おかえり」 「ただいまです……」 帰って来るなりお兄さんに謝るが、気にするなと微笑まれる。久しぶりに『おかえり』と言われ、デュークさんからのお説教で沈んだ心も少し浮上する。 「あの……お腹すいてませんか? 食事もらってきたので一緒に食べましょう。といっても……量は少ないんですけどね……」 「いや……俺は食べなくても大丈夫だぞ……」 「ダメです! 少しでも栄養とらないと傷も治らないですよ」 僕はマーサさんから貰ったパンを机に置き、貰ったスープを鍋にうつす。スープの量は一人前なので……保存用にとっておいた干し肉やキノコと水を加える。 竈に火をつけてスープを温めれば、ふわりといい香りが漂う。 「いい匂いだな……」 いつの間にかお兄さんは僕のすぐ後ろにいて、物珍しそうに見てくる。 「マーサさんの作ったスープは凄く美味しいんですよ! 水とか足しちゃったから味は薄くなっちゃったかもしれませんが……。少し味見してみますか?」 そう言ってお兄さんに小皿に注いだスープを渡すとコクリと飲み込みパァァッと顔を輝かせる。 「……美味い」 「でしょう! さぁ、スープも温まったし夕食にしましょう!」 家の中にある食器を総動員して小さな机にはスープとパンがのる。僕はベッドに腰かけ、お兄さんが椅子に座り手を合わせ食事をとる。 少し硬くなったパンもスープに浸せば柔らかくなる。 僕はいつものようにパクパクと食べていくが……お兄さんは何故だかゆっくりと噛み締めるようにパンとスープを食べていた。 「美味しいですね」 「あぁ……凄く美味いな……。ココ、ありがとう」 お兄さんの笑顔を見ると僕もなんだか嬉しくなって……つられて笑みを溢す。 一人きりの食事に慣れてしまっていたけれど、やっぱり誰かと一緒に食べるのは凄く楽しいなぁ……。 一人前を二人で分けたので楽しい食事の時間もあっという間に終わってしまう。 片付けを済ませれば後は眠るだけなのだが……問題は眠る場所だ。 もちろんお兄さんはベッドに寝てもらうのだが……僕が床で寝ると言うとダメだと言い、自分が床で眠ると言ってくる。 「お兄さんは怪我人なんですから絶対にベッドで寝て下さい!」 「……ダメだ。ココを床に寝かす訳にはいかない」 「むむむむぅぅ……」 こんな感じで互いに意見を譲らない……。 もう、この問題を解決するには方法は一つで…… 「じゃあ……お兄さんが嫌じゃなければなんですが……一緒にベッドで寝ますか?」 思い切ってお兄さんにそう提案すれば、少し間を置いてコクコクと頷く。 「狭いですけど、大丈夫ですか?」 「あぁ」 「僕、寝相が悪いのでお兄さんに迷惑かけてしまうかもしれませんよ……?」 「そんな事は全然構わない」 「本当に本当に……いいんですか?」 僕の質問にお兄さんは大きく頷き問題ないと言ってくれる。 僕は寝巻きに着替え、お兄さんは着けていた防具などを外していく。 「防具を外すの手伝いましょうか?」 「ん? あぁ……そうだな。少し手伝ってもらってもいいか?」 「はい!」 カチャカチャと防具を外していき、腰に着けていた剣を持ってみればズシリと重く思わず落としてしまいそうになる。 こんな重たい物を着けていたなんて……。 僕が両手で持っていた剣を、お兄さんは軽々と片手で受け取り部屋の隅に置く。 寝る準備ができ、お兄さんにはベッドから落ちないよう壁側にいってもらい、僕は迷惑をかけないようにとベッドの端っこへ……。 灯りを消して「おやすみなさい」とお兄さんに声をかければ「おやすみ」と返してくれる。 目を閉じれば今日一日の出来事が頭の中を駆け巡る。 今日は……本当に色々あったなぁ……。 お兄さんとの不思議な出会いを思い出しながら、僕は夢の中へと落ちていった……。 暖かく普段よりも寝心地の良いベッド……。 まだ……眠っていたいなぁ……と、枕をぎゅっと抱きしめるが今日も頼まれていた仕事が沢山ある事を思い出し、眠い目をなんとか開く。 しかし……目の前に広がる光景はいつもの古びた木の壁ではなく男らしい胸板……。 ………え? 枕だと思って抱きしめていたのは逞しい腕で……すっぽりと腕の中に収まった状態で目覚めた僕は現状を理解するのに時間を要してしまう。 あ、あ、あれ? あれ? あれれれれぇ? 「おはよう……ココ」 あたふたしている僕の頭上から心地よい低音の声が響く。 顔を声のする方に上げればお兄さんは朝から輝くような笑顔を振りまいてくる……。 「お、おはよう……ごじゃいます……」 お兄さんに挨拶を返し、しがみついていた腕をゆっくりと離す。 早速、寝相の悪さを発揮してしまい恥ずかしさのあまりモゴモゴと口を動かす。 ………やっちゃったよぉぉぉお(泣) 心の中で大反省しながら、お兄さんと過ごす最初の朝を迎えた。

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