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お兄さんが特技を披露してくれました!

「ただいま~リアムさん」 「おかえり、ココ」 お兄さんことリアムさんがやってきて三日が経つ。 リアムさんの頭の傷は順調に治り包帯を付けなくてもいい状態まで改善している。 ただ……記憶の方はさっぱりで、今だに自分が誰なのかすら分からない……。 僕は仕事から帰ってくると食事の準備を始め、リアムさんも食器を準備してくれたりと手伝いをしてくれる。 傷も治ったリアムさんは、ずっと小屋で僕の帰りを待っているだけの生活に退屈をしているようだ……。 「なぁココ……何か俺にも出来ることはないか……? 料理以外で……」 「そうですねぇ……」 一度リアムさんが僕のためにと料理を作ってくれたのだが……ちょっぴり残念な味だった。食べられない程ではなかったのだが、マーサさんや僕の作る料理には及ばないと凄くショックを受けていた。 リアムさんに出来る事はないかと考えながら竈に火をつけようと準備するが……火口を切らしている事に気付く。 「あ……火口は昨日で使いきっちゃってたっけ……」 火口をもらいにお屋敷へ戻らないと……。 そう思っていると、リアムさんが「どうした?」と声をかけてくる。 「すみません……。竈に火を付けようと思ったんですが火口を切らしてるの忘れてて……。今からお屋敷にもらいに行ってきますね」 「………竈に火をつければいいのか?」 リアムさんは竈の前へとやってくると腰を屈め人差し指を薪の方へと近づけると……ボッと炎が上がる。 「これでいいか?」 リアムさんは普通の顔して僕に尋ねてくるが……僕は目の前で起こった出来事に驚いて固まってしまう。 リアムさんは簡単に魔法を使って火を起こしたが……魔法はそんな簡単に使えるものではない。 無詠唱で魔法が使えるなんて上級の魔導師でも難しいのに……ましてや貴重な魔法を竈に火を付けるために使うなんて…… 「リアムさん……。魔法が使えるんですか……?」 「あぁ……これか? ずっと暇だったから何か俺にも出来る事はないかと色々と考えていたんだ。火起こしは時間がかかるし大変そうだったから俺にも手伝えないかなぁ~と、考えていたら指先から火がでたんだ! 不思議だろ?」 リアムさんはアハハと屈託のない笑顔を向けてくるが……魔法はそんな簡単に使えないんですよ!! ツッコミたいけど驚きすぎて何も言えない僕に、リアムさんはさらに追い討ちをかけてくる。 「他にもこんな事ができるようになったんだぞ!」 リアムさんはそう言って手の平から水を出したり、風を起こし「涼しいだろ?」なんて言いながら楽しそうに魔法を披露してくれる。 「リアムさん! ストーーップ!! 魔法が……魔法が……勿体ないですぅぅ!!」 僕の大声に少し驚きリアムさんは風を起こしていた手を止め、シュンとした表情を見せる。 「すまない……。自分に出来ることが見つかり嬉しさのあまり調子に乗ってしまったな……。迷惑をかけてすまない……」 「あ、えっと……違うんですリアムさん。怒っている訳ではないので謝らないで下さい……。ただ、魔法はそんな簡単に使えるものではないんです。魔法を使うと魔力が減って体が疲れてしまうんです。だからリアムさんが心配で……」 「そうなのか……。俺の心配をしてくれていたんだな……。ココ、ありがとう。だが、心配はいらないぞ。朝からずっと魔法を使っていたが疲れなどはまったく感じない。どうやら俺は魔力が多いようだな。さぁ、遊んでいたら夕食の時間が遅くなってしまったな。俺も手伝うよ」 リアムさんは何もなかったかのように僕の隣で夕食の準備を手伝ってくれる。 僕はと言うと、リアムさんが見せてくれた魔法に衝撃を受けつつ、もしかして僕はとんでもない人に怪我を負わせ記憶まで奪ってしまったのではないかと心の中で冷や汗をかいた………。 そして、次の日から火起こしはリアムさんの担当になった。

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