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プロローグ

「なあ、聖利(ひじり)……」  見下ろしてくる鋭い瞳はギラギラと獰猛に光っていた。あきらかに普段と違うルームメイトの様相に、聖利は息を呑む。自分をベッドに組み敷いている男を、黒い瞳でじっと見つめ返した。 「來(らい)……」  名前を呼ぶと、海瀬(かいせ)來は顔を歪めて笑った。熱い吐息がかかるほどの距離だ。視線が絡むだけで、身体の奥がじわっと疼いた。自分はいったいどうしてしまったのだろう。 「その顔、煽ってんだろ? 俺を」  來が低くささやく。 「こんなことになる前からさ、おまえの態度は、ずっと俺を誘ってた」 「誘ってなんか……! 僕は……!」 「だって聖利、俺のこと好きだもんな」  否定しなければ。それなのに図星をつかれた聖利は、嘘でもその場しのぎでもこの気持ちを否定できなかった。間違いなく、來に惹かれている。中等部一年で出会ったときから。 「しようぜ。聖利もしたいんだろ」 「したくない、駄目だ!」 「後ろ、触ってみればわかる。俺を受け入れたくて、きっとぐずぐずにとろけてんぞ。ほら、脚開け」 「やめろ、來!」 「たっぷり、おまえが飽きるまでしてやるから」  唇が重なる。強引でとろけるようなキスに必死に抗った。  駄目だ。こんなこといけない。触れてくる大きな手も甘い唇も、どれほど慕わしくても今は駄目だ。  頭でわかっていても、身体は受け入れたくて内側から熱で融解していく。じわじわ疼き、抗う力が失われていく。 「來!」  聖利は残った力を振り絞って叫び、來のたくましい胸を精一杯押し返した。

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