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第1話

 若干十二歳にして正装を着こなす、ツヤツヤのブロンド髪が美しい少年と、大雑把な母親からカットされた不揃いの黒髪をなびかせる、勝ち気そうな瞳が印象的な同い年の少年。  二人は向かい合って泣いていた。  ……もとい、俺だけわんわん泣いていた。 『ユーリも一緒に帰ろうよ』 『無茶を言うなよ! お、俺だって……リアムと離れるのは嫌だよ! でもお前は……っ、お前は、綺麗な緑色の目をしてる! おまけに金持ちだ! 俺とは違う!』 『……ユーリ……』  半年間だけなんて聞いてなかった。  この国に移り住んできたんだとばかり思っていた。  小学校の卒業式を三日後に控えてたのに、異国の美しい少年は自家用ジェットで俺に「バーイ」しようとしてる。  一緒に来てと言うなら、俺は「ずっとここに居て」と言いたかった。  でもあっちの方で、小綺麗なナリをしたリアムのお父さんとお母さんが幸せそうに俺達を眺めてる。   "微笑ましい友情ですわね" って?  そんな生温いものなわけないじゃん。  俺とリアムは、教室で初めて目が合った瞬間ビビビッと感じてたんだ。  この世には男女の性別の他、さらにバース性という三つの性別もあって、俺達はまだその性別の判定が出来る年齢じゃなかったんだけど……俺もリアムも同時にビビビッだった。 『違うのは瞳の色だけだよ。ね?』  周囲の視線を一心に集めてしまうほど号泣していた俺に、リアムはそっと宥めるように、さり気なくハグをするフリでちゅっとキスをしてくれた。  いつもはほっぺたとかおでこだったのに、最後の日だけ唇にされた。 『うぅっ……! リアム……。 大人になったら、俺のこと迎えに来て。俺ん家はリアムのとこみたいに飛行機持ってないから、出来ればリアムが来て。絶対、絶対、迎えに来て』 『分かった。約束するよ』  どこの誰にでも起こり得る、かわいらしい別れの光景だ。  号泣する俺に引いてた周りの大人たちも、美しいリアムが俺のことを抱き締めただけで拍手が起きたんだぞ。  忘れられるか、こんなにも綺麗で大切な思い出。  しかし──この別れから数年後、燻っていた悪が本格的に動き始めた。  綺麗な青空も、元気に行き交う人々の波も、少しばかり濁った空気でさわさわと揺らめく草木達も、……一部の掌握したがりなアルファ様達のせいで世が退廃の一途となる。

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