1 / 1

第1話

創生の筆    妄想×異世界  凜々しく精悍な騎士がパソコンの画面に描かれていた。  ペンタブレットを持ち、カズマは思いのままペンを騎士に向けて走らせる。  カズマは絵を描くことは好きだ。  それ以上に妄想も大好きだ。  現実ではあり得ないキャラも内容も倫理観も、なにもかも吹っ切って矩形の中では自由に描くことが出来る。  たぶん、自分は趣味が悪い。  女の子より男が好きだし、凜々しい男が陵辱されている姿を想像するだけで股間が疼いてしまうのだから。  しかも人格も尊厳も失わせるように陵辱し、自分の想像のまま都合よく陥落させ、人間や人間以外の生物で嬲らせる――現実でやれば犯罪だろうし、人が白眼視するのも免れない。  だがパソコンの画面の中なら、どんな妄想も自由自在なのだ。  自サイトや投稿サイトなどインターネットにアップせず、自分のパソコンのフォルダ内に収めるだけなら過激さは更に増していく。初戦はパソコンの中の自作の絵だ。  自分で楽しむだけだから問題は無いだろう。  ああ、本当に妄想は楽しい。  同性が好きだなんて家族にカミングアウト出来ないし、過激な陵辱趣向は友人に語れないけれど、妄想と絵ならなんでもできるのだ。  カズマは楽しみながらペンを進めた。  書き進める絵は変化し、凜々しかった騎士の鎧は酸で溶かしたように無残にぼろぼろになっていた。そこに潜り込むのは一抱えもありそうな、ぬらぬらとした紫色の環形生物たちだ。  それは蛭によく似ている。むろんそんな巨大で血の代わりに精液を吸う蛭などこの世に存在しないが。  カズマの妄想の中にある、吸精蛭というやつだ。  吸精蛭に胸も股間も吸われて喘ぐ騎士の顔に凜々しさは無く、快楽い堕ちた淫らな生き物になり果て、もっと涙と涎を足そうかとカズマはペンを握る。  ――どうしようかな、お尻の中にも蛭を入れちゃおっかな。  ペンを動かしながらカズマは更に妄想を肥大化させた。  何でも描ける魔法のようなペン。いつにまにかパソコンデスクに転がっていたけど、これを使うと何でも描ける気がした。  このペンはカズマの相棒で宝物なのだ。  「……う、ァッ……や、めろ……ッ」  騎士の脳は快楽に蕩けてぐずぐずになっていた。  人間も、亜人間も、魔物も、等しく求め欲する魔道具、“創世の筆”。  神がその筆でこの世界を描き、騎士が住む今生の世界を創ったという伝説の筆。  想像力が豊かな者が使えば、描いた通りの世界が生まれるその筆は、本来封印されていたはずの場所には無かった。  封印は解けた筆は遙か異界を渡り、こことは違う異世界で使われることとなるが、吸精蛭に吸われ、尻まで犯されつつある今現在の騎士は知るはずも無い。  ただ胸を、股間を、尻を吸う紫色の蛭に悶えるだけだった。 ※終※ おしゃべりタチと寡黙ネコ   のほほんMタチ×肉食系Sネコ  目は口ほどに物を言う。    そんな言葉が真和(まお)の頭に響き……そうだったのに、一斉掃射のマシンガントークばりにしゃべくり捲くる声がそんな短い格言すらも穴だらけにしていく。  さすがに普段は勤勉でない表情筋でさえ、苛立ちからか珍しく仕事をしてくれた。  煩い。  黙れ。  多分、十人中九人までは、元々目つきが宜しくない真和が目で語った言葉を理解できるだろう。  悲しいかな、十人中たった一人がそれを理解してくれない。  それが真和の恋人である虎太郎(こたろう)だ。  何故だ?  普通、恋人こそが空気を読んで心情に阿るところではないのか?  非常に残念な事だが、虎太郎はそう言った心の機微に疎い男だ。  鈍感で、そして天然で騙されやすい。  だから炯眼ゆえ人に敬遠されていた真和なんかに引っ掛かってしまったのだ。  目つきのせいで評判が宜しくない真和にも虎太郎は物怖じしなかった。無遠慮なくらいに真和との距離感を縮めたコミュ症お化けは、あれよあれよと瞬く間に真和の懐と尻の穴に入り込んでしまったのである。  本当に虎太郎は学生時代から変わらない。  ――馬鹿か。 「あー!まーくん、俺に対して失礼なこと考えたでしょ! 違うから! 俺は馬鹿じゃないから! ただまーくんが好きなだけのナイスガイだから!」  空気は読めないのに、感情は読み取るのはどうしたことか。 「だいたいさー、まーくんは目つきで誤解されやすいんだから、もっと目元を柔らかくするストレッチしないと! 小じわ予防になるし良いこと尽くめだね! でもまーくん眼力強すぎ! いやね、僕はまーくんが優しくて頼もしくて強くてえっちなのは知ってるけど、それは世界中の人間の共通認識じゃないからね! ……あ、でもまーくんの良さを認識されちゃうと、全世界は喜ぶけど全世界の僕は泣いちゃうかも!」    煩い&喧しい。  真和はイライラしながら虎太郎だけが読み取れるレベルの、ごくごくわずかに不快そうに唇を歪めた。  だが虎太郎はその表情を読み取った癖に、一向にお喋りをやめようとしなかったのだ。  強い。でも、褒めてはいないが。  ああ、ああ、煩い。コイツときたら。  ベッドの中では黙りやがれ。  虎太郎より一回り大きな真和は、彼の首っ玉を掴んでベッドに押し付けてやる。ぱちぱちと目を瞬かせる虎太郎は、それでも「乱暴はためー! でも、そんなまーくんも……」と、喋りを止める気配がなかった。 「……でも、そんなまーくんもカッコいい……んん、ッ、んぅ……!?」  虎太郎の柔らかな唇から掃射される言葉など、自分の口腔内で無効化すれば問題ないのだと、真和は虎太郎の下唇を噛んでから舌を差し入れて声を潰す。    虎太郎は多弁で人好きする男だ。話慣れた虎太郎の声は柔らかくて心地よく、真和はそんな虎太郎の一方的なお喋りは本音では嫌いではない。  ずっと喋ってくれていいのだ。  ……ベッド以外なら。  だってこんなにも真和は目で語っている。目で訴えかけている。目で脅している。  虎太郎が欲しい、と。  膠で唇を貼り付けたように普段は喋らない真和が、虎太郎の体温が残る自分の唇をぺろりと舐めて重々しく口を開いた。 「黙れ、尻で抱いてやるから、お前は煩く喘いでいろ」  こんなにも虎太郎が欲しくて疼くのに、気づかない虎太郎にはお仕置きが必要だ。 「まーくんのナカでイきたい」  但し、そう喋るならば許してやろうと、真和は虎太郎の腹に跨っていた。 ※終※  羆とテディベア    クマ男子×美青年/体格差  子供の頃から熊が好きだった。  決定的に熊に心酔し始めたのは、国際結婚が破綻した両親の離婚が原因だろう。  寂しさで依存した先は、3歳の誕生日に貰ったテディベアだ。  両輪の離婚で元気をなくした裕理(ユーリ)は、ドイツ人の祖母から贈られたテディベアに救われていた。  首に赤いリボンを巻いて、名前をつけて、遊ぶときも眠るときもいつも一緒だったテディベア。  大きくて、ふかふかで、抱きしめているだけで安心感を与えてくれた至高の存在。  裕理はぞれからずっと熊が好きなのだ。  もっとも子供心の稚い執着なのだと、長じた今なら苦笑気味に分かる。  あんなに大きくて安心できた存在でも、体が成長すればいつの間にか裕理の背丈はテディベアを追い越し、両手で抱えたテディベアが片手で抱えて持てるようになる。  いくら熊が好きだと言っても実物の熊は恐ろしく、気軽に触れられるものでは無い。  現実を悟った裕理は、子供じみた執着とテディベアはおもちゃ箱の奥へと封印し、いつしか裕理は大人になろうとしていた。    大好きだったテディベアはもう幼い思い出として馴染んで依存を辞めた、そんなある日の事だ。  ゲイ同士が集まるバーで裕理は目を剥いて共闘し、思わず立ち上がる。    熊を見つけた。  思い描いていた、理想の熊を。  身長195センチ、体重128キロ。学生時代はラガーマン。  筋肉の上に薄く付いた脂肪がもっちりとした印象を与えるが、実際に触れれば筋肉の硬さを感じるはずだ。  頑健そうな肉体に対し、柔らかで癖のある頭髪と濃い体毛。すべてが大きなパーツで作られた巨体の中、唯一小さくてつぶらな瞳がいかにもぬいぐるみっぽい。  ああ、ぎゅーっと抱き締めてみたい。ぎゅーっと潰すように抱き返して欲しい。  気がつけば裕理は、彼に声を掛けていた。  「ん、ァッ、あ……ひ、ひ……ッ」  ベッドにできた小山にも見えた。  体を丸めても厚みのある大きな背中と引き締まった豊かな臀部。小山の正体は巨漢の躍動する筋肉だ。  上下に巨体が揺れるたび、ベッドのスプリングは負荷に耐えかねて悲鳴をあげる。  裕理の頭一つも大きい男は(いさお)という名前だった。  勲はテディベアのように優しい男だった。  表情も穏やかで、無骨な手付きで裕理の金褐色の髪を撫でるときも、小さな目を細めて笑うときもとても優しかった――――セックスは。 「あ……あ、ああぁあぁっ、ン゛あーッッ」  ベッドの上に見えるのは体を丸める勲だけ。裕理の声は聞こえるが姿は見えない。  それもそのはずだ。  裕理は丸まった勲の体の下、もっちりした筋肉とシーツの間で潰されていたのだから。  裕理は全身に勲の体温と匂いと質量を感じていた。呼吸さえも勲の肌に潰され、快楽で勃起した股間も自分の腹と勲の下腹に挟まれてこすられる始末。  もはや二人の間に薄紙一枚も挟めるか疑わしい密着とプレスぶりだった。  巨体と膂力のすべてを使って裕理をベッドに押し潰して捉え、意地でも逃さないという意気込みを勲の全身から感じ取ることができる。普段は優しいつぶらな瞳も、いまは凶暴な捕食者のそれ。  今は見えないが裕理の肌の至るところには、餌を食らった証である勲の歯型がある。それはマーキングというより捕食の荒々しさだった。  だが裕理は幸せだった。  大きな大きな、テディベアに抱かれるのが幼いころからの夢だったのだから。  けれど裕理は知らないのだ。  勲はテディベアではない。彼の本質は熊ですらなく、(ヒグマ)そのものだ。  大きくて力強くて捕食者で――なにより、一度自分の物だと決めた“餌”には、異常なまでに執着する羆なのだ。 ※終※ 雑魚召喚士と愉快な仲間たち   異世界/異種姦  “勇者パーティーのお荷物”、“英雄達の寄生虫”、“雑魚狩り”、“無能召喚士”――――。  それは嘲笑と蔑み、そして嫉妬混じりに言われるレオへの世間から言われる評価だ。  剣と魔法の世界に生まれたこの国の人間には天与の職業がある。  子供なら誰もが憧れる勇者や、尊敬を集める賢者のようなレアな職業はもちろん、市井で役立つ鍛冶師や治療師など様々だ。  そんな中、レオが天から授かった職業は“召喚士”である。  召喚士は大器晩成型の後衛職だ。初期の頃はスライムやコボルトなど、比較的弱い魔物しか召喚できないし成長も他のジョブに比べて遅い方だろう。  序盤は自分を守ってくれる仲間は必須という、成長する前は不遇職とさえ言われるほどである。  もっともレベルが上がれば前衛に召喚した屈強なモンスターで固め、後衛に魔法が得意なモンスターを配して人間同士のパーティーを組まずに1人で戦うことも可能になるのだが。  だが成長の遅さと序盤の他人に寄生せねばならないところから、高位の召喚士になれるのはごく少数でしかない。相性次第では有益なモンスターが使役できず、レベルが中位になっても周りから役立たず扱いされることも少なくなかった。  現在のレオは高位召喚士ではなかったし、中位召喚士ですらなかった。  13才の時に天から召喚士のジョブを受けて7年あまり、未だに低位の召喚士のままだ。  普通は7年も召喚士として研鑽を積み重ねていれば、中位の階段が見えてくるもの。だが大器晩成にもほどがあるのか、レオは7年も経って未だに低位に近いあたりにいる。  喚べるモンスターと言えば、スライムやコボルト、少し強いモンスターでもオークやリザードマンくらいだ。初心者ならともかく、少し高位のモンスターが蔓延るダンジョンでは全く通用しないレベルだ。  なのにレオは勇者や聖騎士、賢者や拳聖など誰もが憧れる勇者パーティーに在籍していた。誰もが憧れ、尊敬するパーティーになぜ雑魚召喚士が居るのだと糾弾されるのもしばしば。  しかし周りが何を言おうとレオは勇者パーティーから追い出されることはない。  なぜなら――――。 「ん、ッ、あ、あ゛ーッッ♡ しゅき、犬ちん、ぽ……しゅきぃぃ♡」  凛々しい顔を快楽に蕩けさせ、四つん這いでコボルト相手に腰を振る勇者。 「わ、私は汚らわしいオークに屈したり……ひぃあぁぁっっ♡♡ やっぱりチンポに勝てないぃぃ♡♡」  エルフであり世界最高の魔法使いである賢者は、即堕ち二コマ状態で。 「ざ、雑魚、がぁッッ、威張ってすみませ……ひぃあぁっっイクうぅぅぅぅ♡」  頑強な肉体を持つ拳聖はリザードマンの二つの陰茎で悶え狂い。 「だめ、だめ……ゴブリンの……嫁になっちゃううぅぅっ♡」  清廉な聖騎士は薄汚いゴブリンたちに輪姦されて。  彼らはレオの操るモンスターに性的に虜となっていたのである。  なおこれは双方合意であり、彼らは淫らな秘密の快楽を得るためにレオを決してパーティーから追い出したりはしないのだ。 「うんうん、みんな頑張って! スケベな人間もエロいモンスターも大好きだよ!」  この被虐趣味だらけの勇者パーティーに、最弱スライムの虜となる魔王が加わるまであと少しだった。 ※終※ サブカルからのリアル調教/小ネタ      義弟×義兄  時代はソーシャルディスタンス。  いや、こんな時代などさっさと歴史の波に飲み込まれてしまえばいいのに、と、ベッドの上に転がってスマホと戯れながら(りん)は思った。  自分がどちらかといえば陰キャの部類だと思うし、本来なら何日も自宅に引き篭もってもなんの辛さもない。だがそれは、親同士の再婚で義兄弟となった雄哉(ゆうや)と知り合う前の話だ。  陽キャでアウトドア派は義兄である雄哉は。この時期はきっと辛いだろう。しかも運悪く、雄哉がたまたまに乗った公共バスで感染者が出たらしい。  濃厚接触者とまではいかないが、それでも念の為にと雄哉は隣の部屋でずっと籠もっている。  そう。  部屋に籠もっているのだ!  壁一枚向こうに雄哉が居るのに、突撃もできなければべったりすることもできないとは、どこの世界のどの部門の我慢大会だ。そんな我慢大会など秒で棄権したい心意気だった。 「あー……ナマ義兄さんに会いたい話したいセックスしたい虐めたいアヘらせたい」  欲望と欲求がどんどんエスカレートするが仕方ない。  若い性って、暴走ちゃうのだから。 「ちくしょー! 義兄さん義兄さん義兄さんとヤーリーターイーィィィィッ!」  玩具を前に暴れる子供みたいにジタバタしながら、青年の主張は顔に押し付けた枕の中に消えた――はずだった。  ポンと軽く鳴るラインの着信音。枕に埋めていた顔を上げれば、雄哉と二人だけのグループラインだ。  写真付きのそれを既読にすれば……。 「!!!!!!!!!!」  たまに思うのだ。  親同士の再婚で義兄弟になり、ゆえあって今はご主人さまと奴隷の関係でも、本当のご主人さまは倫じゃなく雄哉なのではないかと。  スマホにある一枚の写真。それは隣の部屋にいる雄哉が自撮りした写真だ。  首に倫がプレゼントした首輪を着け、床にしゃがむ引き締まった裸体を晒し、切なそうに眉を顰めた色気ある顔。  しゃがんだ雄哉の形の良い尻と床を繋ぐのは一本の据え置きディルドーだ。  ああ、うん。  つまり?  これは?  輪は雄哉より寄ってしまった眉間のシワを揉んだ。  つまりこれは、同じように若い性を大暴走させていた自慰中の雄哉が、隣から枕でくぐもった輪の魂の叫びを聞いてしまったということか。    それはいい。そこは問題ない。  けれど触れ合えないのにこんなお宝画像を送るとは、何という究極の生殺し。  欲しいのは生殺しじゃない、生雄哉で、生ハメだ!  ごろごろとベッドで悶ながら、輪は短く返信してやった。  そうだ、生は無理でもリモートなら、と。 『勝手に盛るな、雌豚。バツとして俺に謝りながら偽チンポでスクワットしろ』 返信はすぐだった。 『はい、御主人様』  壁の向こうで雄哉は自分に謝りながらディルドーにまたがって腰を振っているだろう。  その淫ら姿を見たいが、倫にはやらねばならない事があった。  まずはリモートアプリの検索とダウンロード。同じ物をダウンロードするように有屋に誘導して、それからじっくりと距離を置いたセックスに励まねばならない。  だって倫が「そうするように」誘導したのは雄哉だ。  雄哉の望みなのだ。  裕也が望むならなんでも叶えてやりたい。  肉体の御主人様は倫かもしれないが、倫は叶えてあげたいタイプだ。  叶えて欲しい御主人様なのは、きっと雄哉のほうなのだろう。 ※終※ サブカルからのリアル調教その② コスプレ調教ボツ部分 ※※そのうちこちらにも投稿します※※  雄哉が見えている光景、それは薄暗い影を落とす石壁だ。  地下牢を模した石壁は人工的に汚され、適度な古めかしさと背徳的な風合いが余計に雄哉の被虐心を煽り立ててくる。  雄哉は石壁と向かい合うように両手を上げて拘束されていた。  拘束の道具は板枷だ。丸い穴を開けた一枚の板を半分に分割し、穴部分に手首などを嵌めて元通りの一枚の板になるように止める。  シンプルな拘束具だが、腕と首を同時に拘束できるタイプなどは、その見た目も手伝って奴隷のような惨めさが増すだろう。  雄哉は手首と足首を板枷で拘束されていた。  手首の板枷は天井の鎖に吊り上げられ、両手を真っ直ぐに上げさせられている。足の方は肩幅より大きく開いた状態で板枷が嵌められ、左右には重石がしてあって動かすこともままならない。  まして閉じるなんてことは不可能だ。  中世を思わせる石牢と板枷に加え、格好がゲームキャラに似た衣装のせいで雄哉の姿は捕らえられた騎士に見えた。  もっとも騎士の履く白いズボンは、尻の割れ目に沿うように裂かれていないだろうが。  形の良い尻が割れ目を中心にはみ出し、尻以外はが着衣状態なこともあって卑猥なことこの上ない。 「ん、……ッ、ふ……ッ」 「男が好きそうな淫乱な尻だな」  乗りに乗った倫の笑い含みの声が鼓膜にじわりと染み込む。声優だけあって、その演技力に雄哉は引き込まれてしまう。  はみ出た生の尻を指先が擽る程度の力で引っ掻き、そのごく淡い刺激にさえ体は反応して、板枷と繋がった鎖を鳴らして体を震わせるしかなかった。 「こんな騎士らしくない尻には懲罰が必要だよな?」  爪で掻かれるだけなのに、鳥肌が立つくらい反応する体を嗤われた雄哉は、自分が騎士であったかのように錯覚して恥辱に耐える。だがそれも剥き出しの肌に熱い雫が落ちるまでだった。 「ひ、ぁ、ッ……あぁあぁぁぁッッッ!」  不自由な体を捩らせた雄哉の頭上で、鎖が諦めろと言わんばかりに軋んだ音を鳴らす。どう足掻いても逃げられないのだと、その金属音は現実を教えてくるのだ。 「ほぅら、淫乱尻を装飾してやる。なかなか似合うじゃないか」  雄哉のはみ出した生の尻に落ちたのは、燭台に点されていた低温蝋燭だ。プレイ用の蝋燭は火膨れするような火傷は起こさないが、尻に感じる熱さも蝋が垂れて冷え固まる感触も本物で、熱さに喜ぶのは尻だけではなく股間や脳も同様に蕩けてしまいそうだ。  はみ出た尻に白い蝋燭が落ちて、大量の精液をぶっ掛けられたように次々と固まっていく。 「まさかこの程度で済んだと思わないよなぁ? チンポ待ちの淫乱尻は、もっともっとお仕置きが必要だろ?」  蝋燭で責められて震える雄哉の肩越しから、幾重にも分かれた紐状のものを見せられて、乱れた呼吸はケダモノじみた呻きに変化した。  毒々しい赤色の革紐を束ねような、それ。  バラ鞭だ。 「……ん、ぁ……ッ、あ゛ぁ……」  頬を撫でて見せつけたバラ鞭で、ゆっくりと首筋から背中を撫で下ろし、蝋燭が固まった尻を丸く掃くように撫でる。期待と恐怖をじっくりと教えるバラ鞭は、雄哉の気持ちを被虐一辺倒に切り替えるくらいに悩ましかった。  何本ものバラ鞭の感触に体が喜ぶ――。  それで、その革を何本も束ねたそれで、俺を、俺の、疼く尻を――。 「ン゛ぁ゛ア゛ァァァッッッ!!」 「期待でケツが揺れているんだよ、マゾ豚が!」  不意に尻に感じる肉を打つ音。  バラ鞭の衝撃で剥がれた白い蝋がぱらぱらと砕け落ち、擬似火傷で過敏になった尻が打擲で痙攣して大きく揺れた。   「ほら、鳴け! 淫乱尻を叩かれて喜ぶド変態が! マゾ声で泣き叫べ!」  雄哉の悲鳴に肉を打つ音が混じる。逃げようにも体は動かせず、ただ尻を揺らすようにするしかない。それが媚態に見えてしまうことすら気づけなかった。 「ハッ! なんだそのケツ振りは! 鞭が嬉しいか、マゾ豚め! ほらもっと喜べ、喜んでケツで踊り続けろ!」  上から下から、右から左から、バラ鞭は雄哉の尻を叩いて卑猥な踊りを続けさせる。バラ鞭は音こそ大きいが、肌が裂ける強さはない。だがその音と尻を打たれる痛みと熱さに理性は追われ、同時に体に眠る被虐心が淫らに開花して行った。 「ひ、ぎッッ、も、ゆ゛、ゆ゛るぢ……な、なん、か……ぐ、る……グるぅッッッ!!」  尻の割れ目を狙って上から下にバラ鞭が叩きつけられた時だった。  不自由な体で限界まで仰け反った雄哉が、舌を突き出して絶叫した。  瞬間。  雄哉の体が痙攣する。    開いたままの雄哉の股間が濡れ、ズボンの内側に沿ってそのシミを大きく拡げながら、白い生地に収まりきらない黄色い液体がぼたぼたと板枷の上に落ちていった。 「はぁ? コイツ、尻を叩かれて漏らしやがった」 ※※ボツ部分なのでこれて終了です※※。   ふぇらネタ  ジェリーは男根が好きだ。  触れるのも触れさせるのも、舐めるのも舐めさせるのも。  一本でも十本でも、あればあるほど欲しくて堪らないのだ。  とあるSM倶楽部で昼夜を問わず休日返上でシフトに入っているのはそのためだ。 「あは♡ ハジメマシテ? だーいじょうぶぅ、ボクに任せて♡」  男根は主食というほど、ジェリーは一日中でも男根と戯れていたい生粋の淫乱なので、この仕事はまさに転職だろう。  気持ちよければタチでもネコでも構わず、むしろ属性はタチでもネコでもリバでもなく、ただ「チンポ」でも構わないほどの色情狂。  それがジェリーだった。 「……あの、その……俺、初めてで……」  今日、ジュリーが相手をする客は、見るからに垢抜けない若い男だった。  だが磨けば光るとジェリーは確信してる。  容姿はもちろん、セックスも。  こういう時のジェリーの嗅覚は恐ろしいほどに冴えているが、どうにも無駄な能力でしかないが。 「ふふー♡ 童貞おチンポなんだ? おいしそ♡」  青年の前に跪き、使っていないせいで色素が薄い陰茎を親指と人差し指で作った輪の中に入れる。ずりずりと輪にした指を上下に動かし、うっとりと紅色の先端を見ては呼吸を乱す。 「濃厚なザーメンの匂いでくらくらしちゃう♡ ん、ん♡」  ちゅっちゅっと音を立てて先走りが滲み始めた亀頭にバードキスを繰り返し、指の輪がだんだんきつくなるまで、軽い接吻と頬摺りだけで、それ以上の刺激は与えなかった。  頭上にある青年の呼吸は乱れ、まるで啜り泣いているようにも聞こえる。  眠たげな瞳で秋波を送り、ぽってりした肉厚の唇を窄めて亀頭を突く姿は童貞を殺すほどに卑猥だ。ジェリーの男根に媚びる顔や姿だけでも青年の股間は熱くなるばかりだった。  気がつけば青年は腰をゆらしてジェリーの輪にした指や柔らかい唇に向かって腰を動かしている。 「あぁん、ガッついちゃってぇ♡ かわいい♡」  ぷちゅっと唇を押し潰すように亀頭をを押し付けられ、そばかすの浮いた頬を上気させながらジェリーが亀頭からにじむ先走りを啜りとる。  アヒル口のまま、先端だけを咥えて尿道口を舌で穿れば、輪っかにした指が外れるほど青年の男根はたくましく勃起していた。 「やん、おっきぃ♡ だぁいじょうぶぅ♡ いっぱいいっぱいチュッチュッして、たっぷりしゃぶって、ぷりっぷりの童貞ザーメン、ミルクタンクの中身ぜーんぶ、ぶっこ抜いてあげる♡」  これみよがしに大きく開いたジェリーの口はどこまでも赤くぬめり、まるで快楽の肉壺のようだった。 ※終※ 自己愛     オナニーネタ  Q.あなたの最高のオナニーネタはなんですか?  A.最高のズリネタなんて決まっている。それは――――。  は、は、は、と、短く切れる呼吸の音が室内の空気を湿らせていく。  熱く濡れた呼気が沈むのは、一人分の匂いしかしないシーツの上。一人だけなのに捩れたシーツの皺は淫らに乱れている。  それだけではない。  セミダブルベッドの上には、ローションやディルドー、オナホールにアナルバイブなどの卑猥なアドルトグッズが無造作に転がっているのだ。 「……ふ、ッ……んん、ッ……やっぱ、サイコー……ッ」  艶めかしい皺を刻むシーツの上に置かれたタブレットの画面には、加虐性に満ちた男同士のセックスシーンが流れている。  天井から餌を絡め取る蜘蛛の巣のように赤い麻縄で後ろ手を縛られ、顔は床を見る格好で膝を大きく開いて曲げ、土下座みたいな姿で吊り下げられた青年の姿。  床に這っているだけなら土下座だろう。だが床から一メートルほど上に天井から吊され揺れる姿は、あまりにも心許ない。  若い体に食い込む縄がみちりと引き締まった肉をはみ出させ、床に向けて曝け出された股間から、何故か鈴の音を鳴らしながら陰茎が風鈴のように揺れている。それは尿道ブジーの先に付いた鈴の音だ。  天井から吊られた状態の肉体は不安定で、苦悶で捩りながら揺れる。そのたびに宙に浮かぶ体と連動し、深く埋められた尿管ブジーに繋がった鈴は揺れていた。 『ん゛ぉッ、お゛ッ、ぉッ……!』 『繁殖期のオットセイみたいな声を出しているんじゃねえよ!』  よく見れば緊縛された青年はボールギャグで口を封じられ、それゆえに潰れた声しか出せないでいる。潰れた声を嘲笑う男は浮き上がった青年の尻を、四角い団扇のようなゴム製のパドルで打擲し続けていた。  真っ赤になった尻のうねりや潰れた声が演技ではなく本物の苦痛を、そしてその苦痛を快楽に変えている事がよくわかる。演技ではこんな声は出せないだろう。  なのに、だ。    苦悶と快楽を与える男も、快楽と苦悶に興じる青年も、その表情だけは奇妙だった、  表情だけがひどく作られて玩具じみてマネキンを見ているようだ。苦悶の声に比べ、表情はそれに見合うだけも表情を浮かべてはいなかった。  だがそれも仕方がない。  タブレットの中にいる人物の顔は本物ではない。  顔入れ替えアプリで、顔の位置だけを変えているのだ。  そして緊縛されて呻く青年の顔はセミダブルのベッドで自慰に耽る青年の顔が貼り付けてあり、苛烈に責めてくる男の顔には違う人物の顔が貼り付けてあった。  おそらくは、自慰に耽る青年の想い人なのかもしれない。  タブレットの中の男の責めはさらに激しくなり、スパンキングで真っ赤に腫れた青年の尻を冷やしてやると笑いながら小便をかけているところだった。  たまらず自慰に耽る青年も自分の尻にローションをかけて疑似体験を追従する。 「あ、あぁ……す、ご……ッッ」  タブレットの映像を見ながら激しい絶頂を迎える。最高の快楽を与えてくるのはいつでもこの映像の男だ。  凄まじい快楽を堪能し、いわゆる賢者タイムを迎えた青年は、熱が残る体の汚れを拭いもせずタブレットに手を伸ばした。  タブレットを操作し、顔入れ替えアプリを終了する。 「……はぁ……さいこぉ……やっぱり、俺しか、勝たん……」  顔入れ替えアプリが終了して映像の顔も元に戻る。  自分の顔を貼り付けていたネコ役の青年は自分より線の細い顔に、そして想い人どころか適当に画像を拾っておいたタチ役の顔を解除すれば、そこにあった顔は“自慰をしていた青年自身”の顔――。    だって仕方がない。  どんなに探しても理想の責め役は居なかったし、自分の好みにあう相手が現れなかった。  だから彼は自分が好む一番の責めを、自分自身が行うことに決めることにした。  本来は被虐側だが、自分の好きな責めを見られるなら、自分が加虐側に回ることも吝かではなかったのだ。  本気で気持ちよくなりたないなら、自分が出演したアダルトビデオのネコ役に自分の顔を乗せればいい。  それが最高だ。  Q.あなたの最高のオナニーネタはなんですか?  A.最高のズリネタなんて決まっている。それは自分好みの責めをしてくれる、俺自身。 ※終※  

ともだちにシェアしよう!