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第48話「好き」*樹

 買い物をしてから、皆で、ログハウスに戻った。  まだ16時前で微妙な時間だったので、疲れた人は各部屋で休む、17時を過ぎたらぼちぼち準備してバーベキューをしようという事になった。 「樹、その袋ちょうだい」 「うん」  買ってきた食材を蓮と一緒に冷蔵庫にしまったりしている間に、とりあえず皆、部屋に戻ったみたいで、静かになっていた。 「皆、部屋で寝んのかな?」 「どーだろ。 蓮は眠い? 寝る?」 「オレ別に眠くはねえけど……」 「はい。これで荷物終わり」 「ん、ありがと。――――……樹は眠い?」 「ううん。 眠くないよ。なんかゲームしながら皆を待ってる?」  疲れてないなら、一階でカードゲーム大会しよう、とかも言ってたもんね。  振り返りながら、そう言うと。  蓮が隣に立って、じ、と見下ろしてきた。 「……蓮?」 「……眠くはないけど、部屋行こ?」 「眠くはないけど?――――……あ」 「ん?」  くす、と笑う、蓮。 「……栄養……?」  オレがそう言うと、蓮はプ、と笑って。  それから、ん、と頷いた。 「樹が、嫌じゃなければ」 「……やじゃないよ」  ――――……オレが、蓮のこと……嫌な訳、ないし。 「じゃ、行こ?」  蓮に背中をそっと押されて、歩き出した。  階段を上がって、部屋の前。 「待ってて」 「うん?」  蓮が、隣の男3人の部屋をこんこんとノックと共に、開けた。 「ちょっとオレら、昼寝するから。起こすなよ?」  蓮がそんな風に言って、向こうからも、はーいと、眠そうな声。  その部屋のドアを閉めてから、蓮が、「あいつら、もう寝そうだった」と、クスクス笑った。  オレと蓮の部屋のドアを開けて、中に入ると。  蓮が、かち、と鍵を掛けた。 「――――……樹……」  そっと肩に手が置かれて。  少し屈んだ蓮に、ゆっくり、キスされる。 「――――……れん……」  柔らかい、触れるだけの、キス。  一緒に暮らし出してから、何度も、交わしてきた、キス。  ……――――……なんか……オレ……。 「……蓮……」 「――――……ん?」  名を呼んで。  蓮の腕に手を置いて。少しだけ、蓮を離す。  見上げるオレを、蓮が、じっと見つめる。 「……ずっとさ」 「……うん?」 「蓮と、こういうキスしてたけど……その時はさ、ずっと、何でするんだろ、て……考えながら、だったから……」 「……ん」 「不思議っていう気分の方が強かったんだよ」 「……うん。それで?」 「――――……でも、今はさ……蓮のことが、好きって……」 「――――……」  言葉になってない、思うままの言葉を、ゆっくり話しているのを。  蓮は、じっと、聞いてくれていて。 「……好きって思うからするんだって、思うとさ……」 「――――……」 「……なんか、改めてすっごく、ドキドキ、する」  言い終わったら。  蓮は、ふ、とものすごく優しく笑って。 「――――……可愛い、樹……」  そっと引き寄せられて。  腕の中に閉じ込められるみたいに、抱き締められてしまった。 「……オレに、ドキドキ、するんだ……?」  耳元で囁かれる優しい声に、余計ドキドキしてしまう。  辛うじて、うん、と頷く。 「――――……オレも。 樹に、めちゃくちゃドキドキしてるから」  ぎゅう、と抱き締められてたら。  蓮の心臓の音が、伝わってきて。 「……ほんとだ」 「ん?」 「……蓮、すごいドキドキしてる」 「……あ、そこに居ると、聞こえる?」 「うん。……聞こえるっていうか…… 伝わってくる感じ」  触れてる部分を通して、鼓動が早いのが伝わってくる。 「……なんか、ちょっと恥ずいな……ドキドキが直接伝わるって」  クスクス笑いながら、蓮がオレを少し、胸から離した。 「なんか今までも、蓮といっぱいキスしてたのに――――……」 「――――……」 「こんな、ドキドキしてさ……」  じっと、蓮を見つめる。 「――――……オレ、ほんとに、蓮が、好きなんだと思う……」  もうそれしか言う事が見つからなくて。  まっすぐ見つめてそう言ったら。  また、蓮に、むぎゅっと抱き締められた。 「――――……オレも。 好きだよ、樹」  そう囁かれる。  頬に触れられて、上向かされて。  優しいキスが、唇に重なってきた。

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