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第15話※

「くっ、やめろと言いながら、身体はそうではないようだぞ?」 引き剥がそうとした頭を逆に抱え込んでしまったことを揶揄われ、羞恥に体が熱くなる。 「ウッ、アァッ…しゃべっ、ない、で…」 「イキそうか」 火宮が言葉を紡ぐ度、微妙な振動と刺激が快感に直結する。 「やっ…ダメ、出ちゃ…う」 筋を舐められ、先端の割れ目に舌が押し付けられた。 「いっ、アァッ…もっ、イッちゃ…」 「いいぞ。出せ」 「っな、ダメッ…や、ぁぁっ!」 口を窄めて一際強く吸い上げられ、俺はたまらず精を吐き出した。 「うそ…」 口で全てを受け止めた火宮が、迷わずそれを飲み込んだのを見てしまった。 チラリと唇を舐めた赤い舌が、あまりに妖しくて艶っぽくてクラクラしてくる。 「ふはっ、ハァ、ハァ…」 射精の余韻で息が上がる俺を、火宮が目を細めて見つめている。 俺だけっ、こんなに乱れて…。 上半身の衣服は肌蹴て、腕にかろうじて引っかかっているだけ。 下半身のズボンと下着は、ジタバタもがいたせいですでに脱げ落ちていた。 反して火宮の方は、ネクタイこそ外しているが、まだピシリと決まったダークスーツのまま乱れはない。 「火宮、さ、んも…」 自分だけが浅ましく乱れているのが嫌で火宮に伸ばした手は、途中で捕らえられてしまった。 「脱がせたいのか?」 「え…」 「ならば可愛らしく強請ってみろ」 絶対的支配者の顔をして、サディスティックに笑う火宮の口元が見えた。 この人、どSだ…。 火宮の言動にいちいち惑い、最終的に思い通りに従う俺が、楽しくてたまらないといった様子で笑う。 意地悪だ、意地悪だとは思っていた。 愉悦を浮かべて妖しく光る瞳が、俺を捕らえて、挑発的に眇められる。 「どうした?俺にも肌を晒させたいんだろう?」 「ッ…お、願い…」 本当は、ただの所有物に対して、素肌を合わせたいとは思っていないのかもしれない。 「ンッ…お願い、火宮さん。脱いで?」 だけど、1つだけ我儘を言わせて下さい。 ただの性欲処理のセックスなんだとしても、勘違いだけさせて。 初めての、この1回だけでいいから、犯されているんじゃない、抱かれてるって思わせて。 「これ、邪魔なの」 スルリと火宮の手から逃れた手を、ダークスーツの胸元に這わせる。 何をどうすれば『可愛らしい』のかわからない。 ただ必死で、乾いてしまった唇をペロリと舐める。 「脱がせて、いーい?」 ひたすら必死に願った瞬間、火宮の表情が妖艶に綻んだ。 「ふっ、合格だ」 「ッ…?」 バサリとスーツの上着が放り捨てられる。 手早く外されたワイシャツのボタンの下から、火宮の素肌が露わになった。 大人の色気を放つ、逞しい身体。 無駄のない筋肉がついた、均整のとれた身体が美しい。 「ンッ、ン」 次第に露わにされた下半身の立派さに、唾を飲み込んだ喉が鳴った。

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