6 / 66
第6話
王子の『婚活宣言』から四日後、情報はウォルズ王国全土の知るところとなり、既婚者の女性ですら美容に気を遣い、おほほウフフと上品に振る舞うようになっていた。
繰り返すが、彼女たちの大半は割とゴツめのルックスである。
王子自身に関しては、
『王宮を出立した』
という情報だけ公開されている。
つまり、ヴィネが言ったように、伴侶を探して国中を飛び回っているのだろう。
これに対して男性のクリーチャーがどうなったかというと——
……なんかおしとやかになった。
覇気というものだろうか、そういったものが徐々に失われつつあった。
気の強いクリーチャー、特にモンスターレベルの女性クリーチャーと常にやり合いながら生きてきた男性らにとって、女性が皆おほほウフフとなってしまうと、どうも調子が狂うらしい。
さて、王都ラリーハリーの近くの森を、セイジュは歩いていた。作物を狙う野生のクリーチャーが罠にひっかかってないか、チェックするためだ。
しかしそこで、セイジュは珍しいものを発見する。
「あれ?」
獅子や熊用の大きなトラップに、真っ白な鳩が足だけ噛まれた状態で横たわっていたのだ。純白の羽根に、若干赤い血液が見える。
ここでウォルズ王国トリビアをひとつ。
普通、白い鳩と言えば『平和の象徴』だ。
だが、ここは平和だが、統治しているのは一応悪魔の一族。よって、白い鳩は平和どころか『忌むべき存在』として認識されている。
他の国で言うカラスのような存在だ(64へぇ)。
誰かが嫌がらせでこんな罠に引っかけたのだろうか、と思いながらも、セイジュは白い鳩を罠から外し、自宅に運ぶことにした。
深い森の獣道を歩みながら、
「おまえも大変だよな」
「知性がないだけまだマシか」
「ただ生きてるだけで人を不快にさせる。そんなつもりないのにね」
「『忌むべき鳥』にシンパシーを感じる時点で俺も相当だな」
と自虐的に語りかけながら。
ともだちにシェアしよう!