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『前奏曲―プレリュード―』

 尻餅をついてポカンとしているショウの手首に、触手のようにしゅるんと伸びた吊革が巻きついた。 「うわっ! え、なに……、ひぃぃ!」  車両の天井に、座席に、ギョロギョロと無数の紅い目玉が浮かび上がる。 「うわああ――――ッ!!」  ショウが悲鳴をあげた。  初めてショウが己を認識した。  いつも一方的に見ているだけだった視線がついに絡み合った。 【もっと……触れたい】  無数の吊革が触手のように伸びてショウの身体に巻きついた。  ヌルヌルとした粘液を出しながら、ショウの身体を(まさぐ)り、乱れていたシャツを脱がせていく。 「うわぁ……! た、たすけてぇ……ッ」  ショウの薄茶色の瞳が恐怖に戦慄(わなな)く。涙で頬が濡れる。 【ああ、もっと。もっと()ぎたい】  胸が苦しい。ドクンドクンと己の鼓動が耳鳴りのように聞こえる。  吊革がショウの腰のベルトを器用に引き抜いて、グレーのスラックスを乱暴に下ろした。  なんという光景だろう。ショウの中心は既に張り詰めていた。  じんわりとネイビーのボクサーパンツが濃い染みを作っている。  ああ、悦んでくれているのだ。  そう思うとカッと身体が熱くなり、(デーチモ)は腹ばいのまま強く拳を握りしめた。  (デーチモ)の衝動を体現するかのように、車両のドアに大きな口が現れ、ギザギザの白い歯がギシギシと歯軋りした。 「ひい!? や、やだあァア――――っ!」  それを見たショウは、ペタンと腰を抜かしたように座り込み、とうとうボロボロと涙を溢れさせた。 【ああ、なんて可愛いんだろう】  ドアの口から伸びた長い舌が、ショウの身体を丹念に舐め始めた。  べろべろ、じゅるじゅると音を立てて味わう。 【ああ、食べてしまいたい】 「や、や、ひぃ――ッ」  泣きじゃくるショウを吊革の触手で拘束し、ショウのボクサーパンツの上から屹立を長い舌で舐め回す。 「あん、あん……ッ、ひゃあ……ッ」  甘い嬌声。一度はフニャリと項垂(うなだ)れていたショウ自身が芯を持つ。 【可愛い……。なんて可愛いんだ】 「あ――っ、やら、……ひぁアア!」  ショウが可愛い声で啼いている。  今、ショウを悦ばせているのは他ならぬ己なのだ。 【ああ、この日をどんなに夢見たことか……!】 (ショウ……)  吊革は先を吸盤に変化(へんげ)させ、ショウの桃色の乳頭に吸いついた。 「んあっ、……ふぁッ、あ――ッ」  そして、もうひとつの吊革の先を蠢く触手に変えて、ショウの濡れた蕾をヌチヌチとノックし始める。 「……アッ、やら、……だめぇ……ッ」  ショウが甘い声をあげて身を捩る。 「焦らさないでぇ……ッ、あん、ナカに欲し……ッ」 (なんて淫乱なんだろう。ああ、可愛い。可愛い。ショウ!)  いつしか(デーチモ)と暴走する色欲はひとつとなり、ショウを求めていた。  (デーチモ)はどうしても己自身でショウを抱きたくて堪らなくなった。 (ああ、博士。何故私の身体から生殖器を除いたのですか……!)  もっと触りたい。抱きたい。  ――――ショウのナカに挿入(はい)りたい!!

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