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第1話 美少年とイケボ男子の欲望
僕は皐月夕兎 。高校3年生。
サラサラの栗色の髪。アーモンド型の大きな目に長い睫毛。吸い付きたくなるような血色の良いピンクの唇。どこからどう見ても美少年…と周りから言われる。
僕は学校ではいわゆるスクールカースト上位グループにいる。見た目だけは良いからね。
だけど中身はオタクでゲイという、カースト的に二重苦を背負ってる。
それを隠して生きる反動で、ネット上ではVTuberとして活動して発散してる。
しかも絶対同級生たちにバレないために、バ美肉おじさんを自称してるんだ。
バ美肉おじさんってのは、バーチャル美少女受肉おじさんのこと。
中身はおじさんなんだけど、バーチャル上では美少女の姿を得て(=受肉して)動画を配信するのだ。
僕はおじさんキャラのプロフィール画像を使って、おじさんのフリしてる。
コレなら俺って絶対知り合いにバレないでしょ。
そして配信では美少女の動く2Dキャラクターを使う。webカメラで顔の動きを連動させてて表情も動く。キャラのビジュアル的には僕と似ていて、髪の毛の長さくらいしか違わない。絵を描くのは得意だから、キャラクターは自分で描いた。
だけどその美少女とは似ても似つかない禿げたおじさんが僕の本当の姿だとリスナーは騙されてる。
面白いよね。
みんな、僕のことをおじさんだと思い込んで気安くコメントやチャットで話しかけてくる。もちろん美少女として話しかけてくる人もいる。
僕的にも、こういうオタクたちは気楽。
話の合わない同級生たちと無理して遊んでるよりはね。
僕は、ある程度仲良くなった人と次はボイスチャットでやり取りする。そこで気に入った声の男をさらに絞り込む。
低くて響く声。僕にはない、腰にズンとくるような…。
あ、ちなみに僕は通話時もボイスチェンジャー使っておじさんの声作ってるよ。元々は少し高めの声だからね。
声に狙いを定めたら、さらに親交を深めて、サシオフの約束を取り付ける。
禿げたおじさんに警戒する若者はあんまりいないけど、おじさんに会いたいと思う若者もそうそういない。
そこはなんとか引っ張り出す。
大体が僕のキャラクターのファンだから、非売品のグッズをあげるとでも言えば大抵食いついてくる。
ここからは僕が初めてサシオフに成功して、しかもそのまま処女喪失までしちゃった時の話をするね。
相手は大学院生で、23歳と言ってた。
声が低くてセクシーなのに、言うことは固くて真面目。植物の研究をしてるって言ってた気がするけどよく覚えてない。僕のキャラクターをとても気に入ってくれてて、その人も絵を描く人だったから話も合った。
キャラクターのTシャツとキャップを作ったけど誰も見せる相手がいなくて、と話したら是非見たいと向こうから前のめりで誘ってきた。
「じゃあ○月○日18時に○○駅で」
初めて知らない人と待ち合わせして、僕はすごくドキドキした。
しかも向こうはこっちの見た目をハゲたおじさんだと思ってやって来る。
僕は自作のTシャツの上に羽織ったパーカーのフードを目深に被って待ち合わせ場所に立っていた。
時間より15分早く着いて待っていると、約束の5分前にそれらしき人物が周辺をウロウロしているのに気が付いた。
「あの…すいません」
声を掛けたが聞こえていないみたいだ。
袖を引っ張ってもう一度呼びかける。
「すいません、オザワさん…ですか?」
「えッ!ア、はい。え?あの…?」
「あ、よかったぁ。違ったらどうしようかと思った。僕、兎月 アイです」
「え…でも…声…え?」
「ごめんなさい。身バレしたくなくてボイチェンで変えてました…」
「あ!そうなんですね。地声であれって言われたから俺、てっきり…」
「ごめんなさい。騙してすいません」
僕がしゅんとしたフリをするとオザワさんは慌てて否定してきた。
「いやいや!わかります、ネットは怖い。うん。もしかして年齢も公表してるよりかなり若いです?」
「はい…本当は18歳…」
「あー…もしかして高校生?」
僕は念のため周りを見て知り合いがいないか確認してから返事した。
若者があまり使わない駅を指定したから大丈夫だよね。
「はい」
「うわー、騙された。うわ~…マジか…つーかめちゃくちゃかわいい…えー…うそだろ」
「あの、僕と居るの無理ですか?Tシャツとキャップ持ってきたんだけど…」
僕はわざと上目遣いで見つめる。
顔が赤くなってる、可愛い…
生の声も好みだし、髪型や服装は冴えないけど顔も整ってて思ったよりイケメン。筋肉付いてるし身長も高い。総合的に合格点。なんのって?そりゃ、処女をあげるのにってこと。
「いや…まさか。俺でよければ是非見せてほしいな…」
「よかった!じゃあ行きましょうか」
僕は予めレンタルルームに目星を付けていた。ラブホに行くのは気が引けるけど、レンタルルームならオタクが集まるのにも何ら不自然じゃない。
飲み物や食べ物を買って部屋に入る。
最初は雑談をして警戒心を解いてもらうように仕向けた。
キャラクターのTシャツもキャップも僕の容姿もめちゃくちゃ褒めてくれて、良い気分だった。もちろんキャラのグッズはオザワさんにあげた。
律儀な彼はしきりに恐縮していたけど、これから僕の好奇心に付き合ってくれるならこんなの安いくらい。
僕はまだ飲めないけど、オザワさんはビールを飲んで少し酔っていた。
そろそろいいかな?と思って仕掛けることにした。
「ねぇねぇ、オザワさん。あのね、僕で…あの、つまり兎月アイで…抜いたことある?」
「ええっ!?な、何急に!?」
「ねー、教えて?」
兎月アイの真似をして小首を傾げる。
オザワさんは手で口元を覆った。
「うわ、ホンモノそっくり…!」
「ねぇ、僕で抜いたことあるんでしょ?僕のこと見てると…えっちな気分になっちゃうことってある?」
さりげなくオザワさんの膝に手を置く。
「やば…」
僕が作ったTシャツは襟が大きめで、しかもあえてオーバーサイズのものを着てきていた。なので、今僕の鎖骨が見えてるはず。なんなら乳首も見えてるかも。
「ある?ない?僕じゃ…勃たない?」
ベッドで僕の隣に腰掛けてるオザワさんににじり寄って見上げる。
「あ、ある…あります。ごめん!ごめんなさい!!何言ってんだ俺、ごめん気持ち悪いよね、帰ります…!」
オザワさんは立ち上がって帰ろうとした。
僕は急いで腕を掴んで引き止める。
「待って!…待ってよ。僕もしたことあるんだ」
「え?…何を?」
「1人えっち。オザワさんの声聞きながら…しちゃったの」
「えっ」
オザワさんは絶句してこちらを凝視していた。みるみる顔が赤くなる。
「僕変なんだ…オザワさんの声聞いたらおちんちん勃っちゃうの」
そして掴んだオザワさんの手を自分の股間に持っていき触らせた。
期待で既に勃ち上がりかけていた。
「あっうそ…」
「本当。ごめんなさい…僕…えっちでごめんね。でも、こんなことオザワさんにしか言えなくて」
僕は両手で顔を覆う。
「あ…で、でも!ほらお互い様だし。ね?そりゃ、えっちな気分になるのは普通だよ。若いんだもん…」
オザワさんは優しく肩を撫でてくれた。
あーもう、もどかしいな。押し倒していいんだよ?
「オザワさん…僕、オザワさんと今えっちなことしたい。だめ?」
胸に縋り付く。
「へっ!?俺と!?で、でも…君みたいな綺麗な子となんて…ええ?」
「して、オザワさん♡」
オザワさんはブルブル震えながら俺の身体を抱きしめた。
やった、これで念願の処女喪失だ。
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